事務代行には資格が必要?個人事業主・フリーランス・副業の起業で注意したい点

昨今では事務をアウトソーシングする企業が増えており、これに伴い事務代行の求人が増加しています。在宅勤務が可能の求人も多いため、一度現場を離れた人でも復帰しやすく、主婦やフリーランスの方に人気の職種です。

ただ、応募に際して「事務代行には資格っているのかな?」と思う方も多いと思います。

一部の業務には資格が求められており、うっかり代行すると違法になるため注意が必要です。また、資格保有が必須では無くとも、資格を持っていた方がいい仕事もあります。

そこで本記事では、事務代行で資格が必要な分野や、取得しておきたい資格を詳しく解説します。

事務代行には資格が必要?

先ほど触れたとおり、事務代行の一部業務には資格が必要です。

例えば、税務には税理士、労働・社会保険の業務には社会保険労務士の資格が求められます。資格を持っていない人がこれらの業務を行うと、違法になってしまうので気を付けましょう。

上記以外の業務については、必須の資格はありません。とはいえ、あると望ましい資格もありますので、それらについては後半の項目で解説します。

事務代行で資格が必須の分野

ここからは、事務代行で資格が求められる分野を紹介します。知らないうちに違法行為をしてしまうことがないよう、しっかり確認しておきましょう。

税務

税理士法第52条により、次にあげる3つの業務を無資格の人が行うことはできません。

  1. 税務代理:依頼主の代わりに、確定申告書や年末調整書類等の税務書類を税務署へ提出すること。
  2. 税務書類の作成:確定申告書や決算書の作成、不服申立て等を、依頼主の代わりに行うこと。
  3. 税務相談:租税についての相談を受けること。

税理士資格を持たない人が上記3つの業務を代行すると、2年以下の懲役または100万円以下の罰金が課されます。

2014年には無資格で確定申告書などを作成した疑いで、逮捕された事件が起きました(参照:税理士法違反容疑で男を逮捕-神奈川新聞-

報酬の有無は関係なく、軽い気持ちで無資格者が税務上のアドバイスをするのもNGです。

仲のいいクライアントからちょっと頼まれて確定申告書類を手伝った
友人から相談を受け税金の計算や必要な手続きの相談にのった

事務代行ではよくありそうなこれらの行為も、税理士法違反になるので注意しましょう。

*参照:国税庁

労働保険・社会保険の業務

労働保険や社会保険に関する業務も、社会保険労務士法第2条に定められているとおり、社会保険労務士(社労士)しか行えません。

具体的には以下の2つの業務が該当します。

  1. 1号業務:労働保険や社会保険に関する法令に基づく申請書の作成及び手続きの代行、給付手続き、助成金の申請
  2. 2号業務:労働社会保険諸法令に従う帳簿書類の作成、名簿や賃金台帳の作成など

これらの業務を無資格者が行うと、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が課されます。

(業務の制限)
第二十七条 社会保険労務士又は社会保険労務士法人でない者は、他人の求めに応じ報酬を得て、第二条第一項第一号から第二号までに掲げる事務を業として行つてはならない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合及び政令で定める業務に付随して行う場合は、この限りでない。
引用:「社会保険労務士法第27条

また、社労士の仕事には3号業務と呼ばれるものがあります。主に、労務管理や社会保険などに関する相談・コンサルティングという内容です。

これは社労士の独占業務ではないため、中小企業診断士が行う場合もあります。とはいえ、社労士しか行えない独占業務1・2号業務への理解は必須です。

事務代行が取得しておきたい資格【分野別】

ここからは、必須ではないものの取得しておきたい資格を分野別に解説します。

事務や経理といった事務代行の需要は年々増えていますし、フリーランスも増加傾向にあります。資格を持っていると、スキルの証明や信頼アップにつながるでしょう。

経理の資格

経理業務のうち、帳簿への記帳や伝票処理、経費精算、請求書発行などは税理士などの資格がなくても行えます。つまり、税務以外は代行できるということです。

とはいえ、経理関連の資格は持っていた方が信頼されますし、経理への理解度が高まり質のいい仕事を提供できるでしょう。

以下に取得しておきたい経理の資格を紹介します。

日商簿記検定

簿記とは、企業の経済活動を帳簿に記帳する、一連の作業を指します。

そして簿記検定は、簿記に関する知識や技能を認定する資格です。いくつか種類がありますが、中でもメジャーなのが「日商簿記検定」です。

取得することで経理に関する知識を証明できるため、仕事のチャンスも多くなるでしょう。

【試験要項】

試験区分 1〜3級、初級
試験回数 1級:年2回2〜3級:年3回
受験料 1級:7,850円(税込)2級:4,720円(税込)3級:2,850円(税込)
受験資格 学歴・年齢・性別・国籍による制限なし。
2級や1級からの受験、
1・2級、2・3級の併願受験も可能。

日商簿記には3~1級のランクがあります。

  • 3級:仕訳・帳簿の記帳、財務諸表など商業簿記の基本知識
  • 2級:商業簿記に加え工業簿記も出題。商業簿記も難易度が上がる
  • 1級:合格すると税理士試験の受験資格を得られる。商業簿記、工業簿記に加え会計学、原価計算の4科目

一般的に、企業から求められるのは2級以上です。ぜひ、これを目標に勉強してみてください。

日商簿記の詳細はこちら

給与計算検定

「給与計算検定」は、内閣府認可の一般財団法人職業技能振興会と一般社団法人実務能力開発支援協会が実施する、給与計算業務の知識と実務能力を問う試験です。その名のとおり、給与計算に関する知識が問われます。

人事・総務・経理業務のスキル・キャリアアップになるので、事務代行を考えているのであれば取得しておくとプラスになるでしょう。

【試験要項】

試験区分 1〜2級
試験回数 年2回2級:3月、11月実施1級:11月のみ実施
受験料 1級:10,000円(税込)2級:8,000円(税込)
受験資格 特になし1級からの受験も可

級による受験区分は以下のとおりです。

    • 2級:給与計算の基礎を理解し、給与明細を作成できるレベル。年末調整や賞与の計算も正しく計算できる。
    • 1級:労働法令や税務を正しく理解。年末調整、社会保険、税務等に関するすべての業務に精通したレベル。給与計算業務のスペシャリスト。

求められるレベルは案件によりますが、給与計算を主とした案件を取るなら1級取得を目指しましょう。経理系の資格の中では比較的簡単ですから、実務経験がなくても十分に合格を狙えます。

給与計算検定の詳細はこちら

BATIC

「BATIC(国際会計検定)」は、商工会議所が実施する英語での会計処理能力を検定する試験です。「日商簿記」の英語版と考えるとわかりやすいでしょう。取得すれば、英語での会計処理や英文簿記など、国際的な会計基準の理解度を証明できます。

結果はTOEICのような1,000点満点のスコア制です。スコア別に4つのランクがあり、それに応じて受験者の能力を定める国際基準が採用されています。

BATICに必要な英語能力はTOEIC750点レベル、英検準1級程度です。とは言っても、英検2級や準2級レベルで受験している方もいます。

【試験要項】

試験科目 Subject 1(英文簿記)
:全受験者必須Subject 2(国際会計理論)
:習得レベルに応じて任意
配点 Subject 1:400点Subject 2:600点合計1000点
スコア ・コントローラーレベル(880〜1000点)
・アカウンティングマネジャーレベル(700〜879点)
・アカウンタントレベル(320〜699)
・ブックキーパーレベル(200〜319)
試験回数 年2回
受験料 5,500円(税込)
受験資格 特になし2を受けるには1で320点以上のスコアを取得していることが条件

スコアのレベルを日商簿記で表すと、もっとも高い「コントローラーレベル」で1級程度、「アカウンティングマネジャーレベル」で2級程度、続く「アカウンタントレベル」「ブックキーパーレベル」で3級程度の知識です。

最近では日本でもIFRS(国際会計基準)を導入する企業が増え、国際会計スキルを持つ人のニーズが高まっています。

今後も需要が拡大していく分野ですから、取得しておくと高い英文簿記スキルの証明となり、外資系企業や海外進出を目指す企業の案件を受注できるようになるでしょう。

BATIC(国際会計検定)の詳細はこちら

秘書の資格

「秘書検定」とは、実施秘書に求められる知識や技能を検定する試験です。事務代行では秘書案件が多いため、取得しておくと有利になるでしょう。

電話や来客対応のマナー、正しい敬語での対応ビジネス文書の作成など、社会人に必要とされる基本的な常識が身についていることの証明になります。

秘書を目指す人だけではなく、その他の分野でもクライアントからの信頼度や印象が高まる資格です。

【試験要項】

試験級 1級準1級2級3級
試験回数 年3回 (準1級、1級は2回)
受験料 1級: 6,500円(税込)準1級: 5,300円(税込)
2級:4,100円(税込)3級: 2,800円(税込)
受験資格 特になし

企業に求められるレベルは、社会人として基本的な知識を身につけられる2級以上から。準1級からは試験に面接も加わるため、難易度が高くなり合格率も低くなります。

【秘書検定の詳細はこちらから】

一般事務の資格

一般事務の業務ではほぼ資格は必要ありませんが、事務代行の実績や経験がない場合はスキルや知識の証明になる資格を持っておくといいでしょう。例えば以下の2つがあげられます。

日商PC検定

「日商PC検定」は、ワード・エクセル・パワーポイントに関する知識や能力を認定する試験です。日商簿記と同じく商工会議所が実施しています。

ビジネスシーンにおける文書作成を想定しており、実技も問われるのが特徴です。

【日商PC検定の試験要項】

資格級 1級:総括責任者・経営者レベル
2級:部門責任者・管理者・役職レベル
3級:一般レベルBasic:実技
受験料 1級:10,000円(税込)
2級:7,000円(税込)
3級:5,000円(税込)Basic:4,000円(税込)
受験資格 特になし

出題範囲にワードでの挨拶文・文書作成、表やグラフの挿入やエクセルデータ活用が含まれ、学習を通じて実務的なスキルも身につきます。

ワードやエクセルの操作に自信がない方におすすめの資格です。企業から評価を得るには2級以上を目指しましょう。

日商PC検定の詳細はこちら

文書情報管理士

「文書情報管理士」とは、公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)が実施する、文書管理や個人情報保護などの知識や技術を認める資格です。文書のエキスパートとも呼ばれています。

レベルは2級・1級・上級の3つに分かれ、一番難易度が高いのが上級です。2級は誰でも受験できますが、1級は1年以上、上級は1級取得後2年以上の実務経験が必要になります。

【文書情報管理士】

資格級 上級
1級
2級
受験料 一般:11,000円
学生受験料:7,150円
受験回数 年2回
受験資格 2級は特になし1級は1年以上、上級は2年以上の実務経験が必要

取得すれば文書情報マネジメントの専門家として活躍できるため、デジタル化が進んでいる現代では重宝する資格の1つです。2級は取得しやすいので、挑戦してみてはいかがでしょうか。

文書情報管理士の詳細はこちら

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まとめ

本記事では、事務代行に資格は必要か?について、資格が必須の分野とおすすめの事務系資格を解説しました。

事務の業務内容は幅広く、クライアントとの関係性が密になればなるほど、さまざまな仕事を受けがちです。記事中でも解説したように、有資格者しか行えない業務もありますので注意が必要です。

本記事が参考になれば幸いです。