最近耳にするようになった「パラリーガル」という仕事。テレビドラマなどの影響で、日本でも知られるようになりました。ただ、興味はあるものの、実際の仕事内容や、自分でも目指せる職業なのか分からない方も多いでしょう。
パラリーガルの「para(パラ)」は「補助的な」を意味し、「legal(リーガル)」は「法律」を意味します。つまり、弁護士のアシスタントや補佐役のことです。法律の専門知識を要することから重宝されやすく、生涯にわたって続けられる仕事です。
そんなパラリーガルについて、本記事では仕事内容や必要な資格、向いている人などを解説します。
パラリーガルとは何?
パラリーガルとは、弁護士のサポート役として事務作業などを行う、法律事務所のスタッフのことです。
秘書業務や一般事務業務のほか、裁判所や依頼者との調整などをすることもあります。業務の性質上、法律面での専門知識が必要です。
したがって、比較的ハードルの高い職業といえ、周囲から重宝されますし、さらにワークライフバランスをとりやすい点からも近年注目されています。
日本では認知度低め
パラリーガルはアメリカ発祥の職種です。日本で認知されるようになったのはここ10年ほどの話で、まだまだ浸透はしていません。
日本に比べるとアメリカは、些細なことでも訴訟を起こす訴訟大国といわれています。そのため同国には法律事務所が数多く存在していて、パラリーガルの需要も大きいわけです。大学や専門学校にてパラリーガルを養成する環境も整っています。
日本ではテレビドラマなどの影響を受けて認知度が増してきました。パラリーガルは多忙な弁護士にとってなくてはならない存在で、景気に左右されることなく需要があります。
パラリーガルと弁護士の違い
パラリーガルと弁護士は、分かりやすくいうと医者と看護師のような関係です。弁護士は弁護士でないとできない業務に専念し、パラリーガルが関連業務をサポートします。
弁護士監督のもとで契約書や訴状を作成したり、依頼者との打ち合わせをしたりはできますが、法律相談や報酬額の決定などはパラリーガルにはカバーできません。
パラリーガルの仕事内容
パラリーガルの主な仕事内容は以下の3つです。
・秘書業務
・一般事務
・法律事務
それぞれ詳しく見ていきましょう。
秘書業務
そもそも秘書とは、上司の補佐としてバックオフィス業務をサポートする仕事を指します。
<主な仕事内容>
・スケジュール管理
・アポイント調整
・来客対応
・メール、電話対応
・書類作成
・ファイリング
・リサーチ
・データ入力
華やかなイメージを持たれがちですが、実際には地味なデスクワークがメインです。
一般事務業務
一般事務とは、広く一般的な事務仕事全般を指します。一般事務の仕事内容は多岐にわたり、事務所によって異なる場合もあります。
<主な仕事内容>
・データ入力
・書類作成
・ファイリング
・コピー
・電話、メール対応
・スケジュール調整
・郵便物の仕分け
・備品管理
・来客対応
・買い出し
秘書業務と被る部分も多いですね。イメージとしては、秘書が個人に付くのに対し、一般事務は事務所全体のサポートをするという感じです。
また、パラリーガル特有の雑務として、次のような仕事もあります。
・裁判所等への外回り
弁護士の代わりに裁判所や弁護士会へ出向き、書類を提出するのは、パラリーガルにとって日常的な仕事です。
・戸籍謄本や登記簿謄本の取得
市区町村役場や法務局へ必要な書類を取りに行く日もあります。企業の一般事務との大きな違いのひとつです。
法律事務
法律関係の事務は、パラリーガルならではの仕事です。当然ながら法律の知識が求められます。
<主な仕事内容>
・裁判所へ提出する書類の作成
訴状や各種申し立ての書類、証拠書類といった、裁判所へ提出する書類の草案を作成します。
・情報収集
文献やデータベースから、案件に関する法律や判例、論文などの情報を収集します。
・裁判所への同行
弁論や弁論準備、破産審尋や免責審尋のサポートのために、弁護士と同行で裁判所へ出向きます。
・法律相談のヒアリング
依頼者の相談内容をヒアリングし、概要をまとめて弁護士へ報告します。
・債務処理案件での相手業者との交渉サポート
借金整理の案件では、債権者である相手業者との電話交渉や、和解契約書の草案を作成したりします。
*法律事務は、弁護士監督のもとで遂行することが条件です。
パラリーガルが担当してはいけない業務もある
以下のような仕事は、パラリーガルが担当してはいけません。
・法律相談
・受託や報酬の決定
・法廷での代理人
・弁護士の監督がない状態での法律事務
パラリーガルはあくまで補佐であり、直接の判断は弁護士の独占業務となるのです。違反すると非弁行為として罪に問われる可能性があるので注意しましょう。
パラリーガルになるには資格が必要?
パラリーガルとして働くために必要な資格は特にありませんが、法律の知識や事務処理の能力は確実に求められます。
したがって、知識やスキルの証明となる資格を持っておくと、パラリーガルを目指す上で有利になります。おすすめの資格は以下の3つです。
・パラリーガル認定資格
・法律事務職員能力認定試験
・日商簿記
それぞれ解説しますね。
パラリーガル認定資格
「パラリーガル認定資格」は、日本リーガルアシスタント協会が実施している、国内で唯一のパラリーガルの資格です。
法律事務所での実務経験がない人でも受験できるのがポイントで、学習を通じてパラリーガルに必要な知識を習得できるようプログラムが組まれています。初級→中級→上級の3レベルに分かれており、段階的にパラリーガルへの理解を深められるのもメリットです。
パラリーガルを目指すのであれば、まずはこの資格取得を目標にするとよいでしょう。
法律事務職員能力認定試験
「法律事務職員能力認定試験」は、日本弁護士連合会が実施している認定試験です。
法律事務に関する知識が問われる点ではパラリーガル認定資格と同じですが、こちらは対象が現役の法律事務職員に限られており、未経験者は受験できません。すでに法律事務所で働いている方にとってはスキルアップの指標となります。
日商簿記
経理系の資格で定番の「日商簿記」は、パラリーガルにも有用です。中小の法律事務所では、パラリーガルが経理を兼任するケースが少なくないからです。
2級レベルの知識があれば実務で十分通用しますが、まずは基礎を学べる3級の取得を目標にしましょう。
パラリーガルの平均年収
パラリーガルの年収は、法律事務所や自身のスキルによって大きく異なります。
Indeedによると、日本におけるパラリーガルの平均月給は24万7,186円。ボーナス等も考慮すると、年収350万円前後になるでしょう。
大手や都内の法律事務所では高報酬の傾向があります。が、相応のスキルが求められる上、採用の競争率も高くなりやすいといえます。
パラリーガルの魅力
ここからは、パラリーガルという仕事の魅力を解説します。
生涯の仕事にできる
パラリーガルとしての知見は、経験を経るほど蓄積されていきます。
また、法律は改正されるものなので日頃からの勉強は不可欠ですが、パラリーガルの仕事自体は不変です。だからこそ高齢になっても活躍できるため、この点は大きな魅力でしょう。
たとえ一度離職しても、新たな法律事務所で復職することも十分に可能です。
顧客から感謝される
パラリーガルは弁護士と同じく、顧客の人生を左右しかねない存在です。的確なサポートによってトラブルが解決したときには、顧客から感謝される機会が多々あります。
顧客の中には、弁護士と話すのは緊張するからとパラリーガルを頼りにしている人もいるかもしれません。困っている人に寄り添い手助けができる、やりがいのある仕事なのです。
ワークライフバランスを実現しやすい
パラリーガルの働き方は、残業少なめで土日祝日が休みというスタイルが多いです。よってプライベートの時間も確保でき、ワークライフバランスを実現しやすくなっています。
独身のうちは正社員としてフルタイムで働き、育児期間はパートや派遣社員になり、育児が落ち着いたら正社員に復帰するなど、ライフステージに合わせた働き方も可能です。
パラリーガルに求められる知識やスキル
ここからは、パラリーガルに求められる知識やスキルを紹介します。
法律の知識
法律の知識はパラリーガルに必須です。民法・刑法・民事訴訟法・刑事訴訟法の4つの基礎は確実に固めておきましょう。
この性質から、法学部出身者は有利になりやすいといえます。ただし法律事務所によっては、業務を通じて勉強すればよいという考えで、法学部出身でなくとも、あるいは未経験者でも採用するケースがあります。
一般的な事務スキル
事務職であるパラリーガルには、もちろん事務スキルも必須です。PCスキル、コミュニケーションスキル、調整力なども身につけておきましょう。
管理能力
法律関係の書類は、多くの場合で提出期限が決まっています。遅れなど許されないため、期限に間に合うよう業務を遂行する管理能力も求められます。
パラリーガルに向いている人
パラリーガルは、向き不向きが分かれやすい職業です。向いているのは、例えば次のような人です。
・継続して法律の勉強ができる人
・コミュニケーションを取るのが好きな人
・サポート役に回るのが好きな人
・人の助けになる仕事をしたい人
・高い事務処理能力を持っている人
・細かい心配りができる人
多く当てはまるほど、パラリーガルへの適性が高いといえます。
まとめ
今回はパラリーガルについて、仕事内容や年収、必要な資格、向いている人などを解説しました。
パラリーガルは生涯にわたって働ける魅力的な仕事です。需要が途切れにくく、不景気にも強いので、まさに「手に職」といってよいでしょう。
目に見える成果は出にくいですが、弁護士のサポート役に興味のある方は、ぜひ目指してみてください。