コロナ禍以降、非対面の働き方が一般化しました。その一方「在宅勤務(テレワーク)では集中できない」という方も一定数いらっしゃいます。
会社へ通勤して働くスタイルなら「家は休む場所、会社は働く場所」と頭を切り替えられますが、在宅勤務の場合、家から出ないので切り替えがしにくいからです。どのような対策をとれば、在宅勤務でも集中して仕事ができるのでしょうか。
本記事では、在宅勤務で集中できない原因と家でも集中して働くためにできることについて解説します。またテレワークを導入した企業が検討すべきことにも触れていますので、ぜひ参考にしてください。
在宅勤務で集中できない人はかなり多い!
Biz Hitsが実施したアンケートによると、在宅勤務で困っていることがあると答えた人は961人中810人という結果になりました。
在宅勤務は通勤時間がなくなるメリットは大きいですが、これだけの人が悩みを抱えています。
在宅勤務をしている会社員が抱えている具体的な悩みは以下の通りです。
上位10位を見てみると、「家族がいて集中できない」「集中力が続かない」「オン・オフの切り替えが難しい」「近隣の音が気になる」というように、集中力の低下に関する項目が多いことがわかります。
在宅勤務で集中できない原因6つ
在宅勤務では集中力が落ちてしまう人が多いことがわかりましたが、具体的にどのような原因があるのでしょうか。それでは、よくある在宅勤務で集中できない原因を見ていきましょう。
1.ほかにすべきことが多く、強制力が働きにくい
1つ目の原因として、自宅では仕事のほかにしなければならないことが多いため、仕事に集中できないことが挙げられます。
職場では同僚や上司がいるため、仕事以外のことをしてはいけないというプレッシャーがあるものです。しかし、自宅では会社の仕事もすべきことの一つとなり、緊急性がない限り後回しになってしまうこともあります。
実際にBiz Hitsが実施したアンケート「リモートワークで困っていることランキング!男女961人アンケート調査」によると、「リモートワーク中にさぼったことがある」と回答した人は63.3%という結果になりました。
サボったことはなくても、仕事の優先順位が低く、出社時よりもペースを落として仕事をしている人もいるでしょう。
2.スマートフォンが見える範囲にある
2つ目の原因として、スマートフォンが見える範囲にあることも集中を妨げる要因です。
仕事中、手の届く範囲のスマートフォンがあると、少しだけのつもりで使用しても気づいたらかなり時間が経過していたという経験がある人も多いのではないでしょうか。
特に作業の妨げとなりやすいのがLINEをはじめとするSNSの通知です。スマホでSNSの通知をONにしていると、InstagramやXではリプライなど反応がある度、LINEでは連絡が来る度に通知が出てしまいます。
手の届く場所にスマホを置いていると、スマホの画面が通知で光るたびに気になってしまうでしょう。特にトークが盛り上がっていると、「すぐに返信しなければ」という気持ちになり、作業が進まなくなってしまいます。
3.在宅勤務のための環境が整っていない
集中できない3つ目の原因は、在宅勤務に適した環境が整っていないことです。
そもそも家の生活環境は、仕事用に設計されていません。例えばテーブルや椅子、ソファは、家で快適に過ごすために設置されることが多いのではないでしょうか。
そのため、使用しているデスクやテーブル、椅子の高さが合っていなかったり、地べたに座って作業をしていたりすることもよくあります。このように疲れやすい体勢で長時間作業をしているせいで、集中力が途切れてしまう人もいます。
4.同居人や近隣の生活音が気になる
集中できない4つ目の原因は、同居者や近隣の生活音です。
職場では基本的に会話を会議室で行うので、静かな環境で仕事に専念できます。防音がしっかりしているオフィスだと、外から聞こえる雑音も気にする必要がないでしょう。
一方自宅では、同居人の話し声・足音、外から聞こえる話し声・車の音、マンションの場合は上の階の足音など、集中の妨げとなる音がたくさん存在します。
ちょっとしたものではありますが、一度気になると、そちらに気を取られてしまいがちです。
5.子育てのために仕事を後回しにしてしまう
集中できない5つ目の原因は、家族のケアに追われて、仕事を後回しにしてしまうことです。
連合調べによると、在宅勤務中に子供の世話もしなければならず、大変さを感じている人が多くいます。
日本労働組合総連合会が高校生以下の子供と同居している人319名を対象に行ったアンケートによると、子供がいながらの在宅勤務が大変と答えたのは、70.2%でした。
中でも小学生以下の子供がいる方は、236人いるうち約8割が大変と回答しています。
また、子供がいるときの在宅勤務を難しく感じる理由は上記の通りです。中でも多かったのが、子供の身の回りの世話です。昼食の準備や子供の勉強をみるなど、子供のペースを優先しなければならない仕事が増えています。
そのため優先順位を決めて取り組むことが重要です。在宅勤務中の子育ての課題と解決策については、詳しく解説した以下の記事もご一読ください。
【関連記事】
在宅勤務は家に子供がいるとできない?面倒を見ながら両立するコツを解説
6.在宅勤務の様子を他人に見られない
在宅勤務で集中できない6つ目の原因として、勤務中の様子を他人に見られることがないこともあります。
例えば、事務など自分のペースで対応しやすい作業の場合、時間に融通がきく分、職場の人に業務中の様子を見られません。第3者の視線を感じないため、社会人としてきちんとしなければならないというプレッシャーもなく、その日の気分で集中できずに勤務しやすくなります。
ここまで、在宅勤務で集中できない主な原因をみてきましたが、経験があるという方もいるのではないでしょうか?しかしご安心ください。対策を立てることで改善が期待できます。
続いて、集中力を高める方法をご紹介します。
在宅勤務で集中力を高める方法6つ
集中しにくい在宅勤務で、少しでも仕事に集中できるようにするには、どのようことができるのでしょうか。集中力を高める方法について解説していきます。
1.業務時間を決めてオン・オフを切り替える
まずは、働く時間を決めることです。一度集中力が切れてしまうと、また集中した状態に戻るまでに時間がかかってしまいます。それにダラダラ夜遅くまで仕事をしている方が体力も使うでしょう。
そうならないようにするには、○時〜○時は仕事の時間、○時以降はプライベートの時間と、仕事とプライベートの時間を厳密に分けるとよいでしょう。
基本的に、出社時と同じ生活リズムで在宅勤務をするのがおすすめです。在宅勤務だと、朝起きる時間が遅くなってしまいがち。しかし、生活リズムが一度崩れると、元の生活に戻るのは大変です。
朝起きて太陽の日を浴びるとビタミンDが生成され、脳の情報処理機能がより活発になるといわれています。作業効率を落とさないためにも朝型の生活を意識しましょう。
2.スマートフォンを手元から遠ざける
在宅勤務の大きな敵がスマホです。そこでスマホは仕事用のデスクの外の手の届かない場所に置きましょう。できれば椅子の後ろ側の視界に一切入らない場所に置くのがおすすめです。
3.作業を行う場所を固定して専用のデスクやチェアを用意する
続いて、疲労も集中力を途切れさせる大きな原因です。そのため、在宅勤務用に思い切って作業しやすいデスクとチェアを購入するとよいでしょう。特にチェアは多少値が張っても疲れにくいものを選ぶのがおすすめです。
値段が高いと購入を躊躇してしまいますが、働く環境のために仕事が進まず、結果的に作業時間が増えてしまうよりはよいでしょう。長期的な目で見ると、高額なものでも買う価値はあるので検討してみてください。
4.作業用BGMやポモドーロテクニックを取り入れる
仕事中に周りの音が気になって集中できない場合は、作業用BGMをイヤホンなどで聞きながら、周りの音を遮断するのも一つの策です。このとき「ポモドーロテクニック」を取り入れることもおすすめします。
ポモドーロテクニックは、1つのタスクを決められた時間内で取り組むという、時間管理法のことです。具体的には、25分おきに5分休憩をはさむなど、パターンを決めて作業をします。
BGMは、クラシックやジャズなど落ち着いていて歌詞のない音楽がおすすめです。歌詞のある音楽だと、気づいたら歌詞に気を取られて仕事で凡ミスをしてしまう可能性があります。
万が一歌詞のある曲を聴くとしても、メロディーを追ってしまわないように、自分が聴いたことのない曲を選びましょう。
5.作業に納期や締め切りなど設け、計画的に取り組む
加えて、作業に納期や締め切りを決めて取り組むことも役立ちます。
人の目もなく時間の融通がきく在宅勤務だと「締め切りに間に合えば大丈夫」と思って、締め切りギリギリになって急いで作業をする人も少なくありません。
そこで在宅勤務では作業をより細分化し、「今日やる仕事はここまで、この作業はこの日まで」とスケジュールを立てて仕事をするのをおすすめします。
こうすれば計画的に仕事が進んで締め切りまで余裕を持って仕事ができますし、在宅勤務だとわかりにくい1日の仕事の終えるタイミングもわかりやすくなります。
6.業務状況の報連相を徹底する
1~5までの方法を試しながら、在宅勤務でも確実に集中して作業するには、日々の業務報告を徹底することも大切です。上司や同じ業務に携わるメンバーに対し、業務日報を提出するようにその日の作業内容を共有してみてください。
その日に進めた作業内容を客観的にみることが可能なうえ、周りに情報共有することで、業務の量と質について内省しやすくなるからです。
特に、緊急性が高い業務の場合、進捗を報告することでほかのメンバーが状況を把握し、状況によって助け舟を出すなど、業務を効率的に進めやすくなります。業務に集中するだけでなく、作業中に相談して取り組めるという、相乗効果も期待できます。
在宅勤務中の社会人がやる気を維持する方法3つ
前章では在宅勤務中の社会人が集中するための方法を6つみてきましたが、主にすぐに取り組めることをご紹介しました。
一方で、1つ1つの業務に集中するためには、「その仕事に取り組む際に、やる気を維持できるか」という視点を持つことも大切です。つまらないと感じている仕事の場合、集中するまでのエンジンがかかりにくいからです。
そこで、在宅勤務中の社会人がやる気を持ち続ける方法をご紹介します。
1.コミュニケーションをとる機会を増やす
1つ目は、在宅勤務中でも積極的にコミュニケーションをとるようにしましょう。テレワーク制度がある企業では、社員によって出社日がバラバラになることが多いものです。職場では会話ができますが、在宅勤務になると孤独を感じる人もいます。
その結果、会社組織から気持ちが離れ、仕事に対するやる気が下がりやすくなります。そのような状態になる前に、業務連絡を欠かさず、社内の連絡方法を使用してコミュニケーションをとることが大切です。
また、フリーランスや副業で特定のプロジェクトに携わる場合も、チャットやメール、電話などでほかのメンバーとこまめに連絡をとりましょう。
2.キャリアプランを考える
2つ目は、テレワーク制度で出社回数が減っても、将来のキャリアプランを考えながら業務に取り組むことです。
在宅で取り組む作業のひとつが、将来のキャリアに直結することはあまりありません。ですが、将来どのような仕事をしたいのかビジョンを持つことで、その作業に意味を見い出し、やる気を維持することが期待できます。
例えば、将来は社会保険労務士として独立したい人で、会社の総務部にいる場合、社員の勤務時間の確認は地味な仕事に感じられるかもしれません。しかし、労働環境の管理をすることで、知見が深まり、将来専門家として活動する際に活かせることでしょう。
3.定期的に体を動かす
3つ目は定期的に体を動かし、心身の健康を維持することです。
在宅勤務が続くと外に出ることがなくなり、運動不足になる人が出てきます。デスクの前に座ったまま、長時間動かない状態でいると体が固まって血行も悪くなり、成人病などを招くこともあります。
その場合、やる気があっても仕事のオン・オフの切り替えがきかなくなり、心の不調に陥る可能性もあります。そのようなときにポモドーロテクニック中の休憩時間に5分間、簡単なストレッチングやウォーキングをするなど、定期的に体を動かしましょう。
まとめ
会社と違って家には集中の妨げとなる要素がたくさんあります。
そのため、どのようなことが原因で仕事に集中しにくくなっているのかを考え、それに合わせた対策を行って働きやすい環境を作ることが大切です。
対策によってはお金がかかりますが、多めの出費でも長期的な目で見れば安くなります。自宅でも集中できるような環境づくりを行い、在宅勤務期間も仕事の成績を落とすことなく乗り切りましょう。