リモートワークは監視してもいい?デメリットや方法、活用できるツールを解説

働き方が多様化している昨今、リモートワークの導入を検討している企業も多いでしょう。

しかし会社の目が届かないリモートワークで、従業員がちゃんと仕事をしているかなどの確認も必要と考えている担当者も少なくないはずです。そもそも監視することが可能なのか、どの程度なら許容されるのかなど、根本的な疑問もあるでしょう。

そこで、今回はリモートワークでの監視は可能なのか、そのデメリットや方法、ツールについて解説します。

リモートワーク(テレワーク)の監視は許される?

まず法的な観点から見ると、リモートワーク中であっても労働基準法などの労働関係法令はオフィス勤務と同様に適用されます。厚生労働省が示す「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」では、以下のような記載があります。

労働時間を記録する原則的な方法として、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録によること等が挙げられています。
また、やむを得ず自己申告制によって労働時間の把握を行う場合においても、同ガイドラインを踏まえた措置を講じる必要があります。引用元:テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン

このことから、テレワークにおいてもツールの活用や自己申告などを通じて労働時間を把握すること自体は、企業として必要な対応といえるでしょう。

一方で、「監視」と聞いて多くの人が想像するのは、カメラを常時オンにして勤務の様子を見守るような方法かもしれません。

しかし、こうした方法は家庭内の生活音や会話、部屋の様子などが映り込む可能性があり、従業員のプライバシーを侵害するおそれがあると指摘されています。監視の目的や方法が業務上必要な範囲を超えてしまう場合、法的な問題だけでなく、心理的な負担や生産性の低下にもつながりかねません。

そのため、始業時に業務内容を共有し、終業時に進捗を報告してもらうなど、「監視」ではなく「業務の見える化」や「成果の確認」を目的とした運用が望ましいでしょう。

また、倫理的な観点からも、過度な監視は従業員との信頼関係を損なうリスクがあります。たとえ業務上の正当な理由があったとしても、「常に見られている」と感じる環境では、モチベーションが下がったり、企業への不信感が生まれたりする可能性があります。

リモートワークを円滑に進めるためには、従業員を信用し、自律的な働き方を支える仕組みを整えることが大切です。

このように、リモートワークにおける監視は、法的にも倫理的にも慎重な判断が求められます。従業員の信頼を損なわずに業務状況を把握するための具体的な方法やツールについて後述するので、ぜひ参考にしてください。

リモートワーク(テレワーク)を監視するメリット

メリット

ここでは、リモートワークを監視することでどのようなメリットがあるのかを解説します。

業務状況・稼働状況の把握による生産性の向上

リモートワークでは、会社の目が届かない自由な環境で作業ができる分、オフィス勤務時に比べオンとオフの切り替えが難しくなりがちです。

適度に監視の目を取り入れることで、オフィスに似た緊張感のある環境を作ることができます。うまくバランスを保つことで、生産性の向上や新しいアイディアにつなげられるでしょう。

セキュリティ対策と情報漏洩の防止

リモートワークは会社の目が届きにくいため、外部からの攻撃や情報漏洩のリスク、発生した場合の対処について、考えておく必要があります。

監視ツールの中には、遠隔でもアクセスログの取得などでセキュリティ対策ができるものもあるため、こうしたツールの導入がおすすめです。

労働時間の可視化と長時間労働の抑止

リモートワークの環境では、管理者の目が届かない分、長時間労働が起きやすくなります。

監視によって労働時間が可視化されると、長時間労働を早期に見つけられたり、記録をもとに本人へ業務のアドバイスをしたりも可能です。

人事評価の公正性向上

公正な人事評価をする上では、どのような仕事をしているのか、どれだけの成果を挙げているのか把握することが欠かせません。

監視によって作業記録ができるようになると、PCの動きと操作の内容を分析でき、いつどのような作業をしたか、どのような成果があったかを知ることができます。

管理者が作業実態を把握するのに役立てられるため、妥当な人事評価が可能です。

従業員のコンディション把握と信頼関係の構築

リモートワークの状況を監視することは、業務状況や成果の有無だけでなく、従業員のコンディションを把握することにもつながります。

たとえば、いつもの作業に比べスピードが落ちていれば、何かあったのではと気づくことができます。

こういった問題に早期に気づいて声掛けができると、従業員との信頼関係構築に役立てられるでしょう。

リモートワーク(テレワーク)監視のデメリット・リスク

デメリット

リモートワークの監視にはメリットがある一方で、デメリットやリスクもあります。

 社員のストレスや息苦しさの原因に

仕事をしている姿を確認できないリモートワークでは、つい仕事をしているか気になってしまいますが、従業員に対して過度な監視をすると息苦しさやストレスにもつながります。

適切な範囲で監視することは効果がありますが、行き過ぎると逆効果になるので注意しましょう。

 過剰な監視によるモチベーション低下

従業員にとって監視されている状況はあまり気分が良いものではないと感じる人が多いでしょう。

リモートワークでは、労働時間などの定量的な観点で評価するより、成果や進捗で評価する方が管理コストを抑えられ、従業員のモチベーションも保つことができます。

プライバシー侵害やハラスメントのリスク

リモートワークで過度な監視がされることは、プライバシー侵害やハラスメントのリスクを生みます。

人とのかかわりが少なくなるリモートワークでは、従業員はより孤独を感じやすい環境にあります。こうしたストレスが重なると、メンタル不調や離職、休職につながる恐れがあるので注意しましょう。

リモートワーク(テレワーク)監視導入時に押さえておきたい注意点

warning

ここでは、リモートワークの監視を行う際に考えられるデメリットやリスクを減らすため、必ず押さえておきたい注意点を解説します。

 従業員に監視の目的と必要性を明確に伝える

リモートワークでは、管理者側は「従業員がサボっているのではないか」という疑念が、従業員側は「サボっていると思われているのでは」という不安を生じやすいです。

監視の目的は「従業員の勤務環境が適正か確認し、従業員を守ること」にあります。なぜ監視を行うのかを明確にし、双方の認識を合わせておくと、信頼関係の構築にもつながるでしょう。

双方向のメリットを共有し合意形成を図る

孤立しやすいリモートワークの環境下では、適度な監視は従業員の孤立感を和らげる効果もあります。

管理者側にあっては、長時間労働の防止や従業員のメンタル不調、情報漏洩の危険性軽減にもつながります。

監視ツールを取り入れる際は、管理者側と従業員側の両方にあるメリットを認識しておくと、合意を得られやすいでしょう。

過度な監視を避ける

前述した通り、従業員からの信用を守りつつ適切な監視をするには、プライバシー侵害やハラスメントにつながらないよう注意しなければなりません。

監視する立場にある管理職や情報システム担当には、研修などを通して行き過ぎた監視の危険性を伝えるようにしましょう。

 ツールに依存しすぎない運用を心がける

ツールで表せるのは従業員の行動の正確な記録ですが、なぜその行動を起こしたのかという意図や理由までは知ることができず、あくまでデータに過ぎません。

サボりなどの疑いがある場合は、従業員本人へのヒアリングなどを実施し、複数の視点から判断することが必要です。監視ツールのデータはデータとして客観的に捉え、それを踏まえた判断は慎重にしましょう。

 管理リソースと社員の負担も考慮する

リモートワークの監視は、その分管理者の時間も割くことになります。

監視ツールにコストをかけすぎたり、監視に集中し過ぎたりして自分の仕事がおろそかになることがないように注意しましょう。

リモートワーク(テレワーク)における監視方法の具体例

ここでは、リモートワークにおける監視方法の具体例を紹介していきます。

 業務用ツールによるリモート監視が主流

リモートワークでは、業務用ツールによる監視が主に採用されています。

たとえば、勤怠管理システムや在席管理ツールなどは、業務開始時に設定することで顔が見えなくても出勤しているかが一目で分かります。

また、アプリの操作ログや画面キャプチャ、Webサイトへのアクセスログを取得することで、遠隔でPCの使用状況を確認することも可能です。

定例ミーティングや1on1での状況確認も有効

定例ミーティングや従業員とミーティングする1on1では、従業員の状況を会話で伺うことができ、テキストでは伝えにくいことを話せる効果があります。

孤独感を感じやすいリモートワークにおいては、こうしたコミュニケーションは従業員との信頼関係を構築するのに役立つでしょう。

リモートワーク(テレワーク)で行う業務を外注する

単純な事務作業の場合、外注した方が業務効率アップにつながる可能性があります。

外注することで従業員の業務管理そのものを自社で行なう必要がなくなるため、リソースの確保にもつながります。

バックオフィス業務のおすすめをまとめた記事もありますので、こちらもぜひ参考にしてください。


【関連記事】

オンラインアシスタントとは?利用するメリット・デメリットから導入事例まで徹底解説

テレワーク監視に使える主なツールと機能一覧

ここでは、リモートワーク監視に使える主なツールと、その機能についてご紹介します。

 アプリケーション操作ログの取得

業務で使用するアプリケーションの操作ログを確認することで、従業員の稼働状態を監視することができます。

アプリによっては従業員の作業内容を確認できるものもあり、進捗管理の面でも役立てることができるでしょう。

 画面キャプチャ・スクリーンショット機能

従業員が作業しているPCの画面を、指定した時間ごとに記録する機能です。

アプリケーションが起動されていても、業務に関連しないことをしている可能性もあります。さらに、作業画面を取得することで、作業が行き詰っていないかの確認にも役立てられるでしょう。

 勤怠管理と在席・離席状況の可視化

勤怠管理システムは、出退勤時間を記録することでリモートワークでも適切な労務管理が可能です。PCの操作ログと連動させることで、閲覧時間や操作時間との整合性を取ることもできます。

在籍管理ツールは従業員の在、不在を可視化できるツールです。勤怠管理システムの機能の一部になっているものもあり、出社状況だけでなく長すぎる離席や休憩の取り過ぎにも気づけます。

 業務レポートの自動生成・分析

作業状況を記録し、業務レポートを自動生成する機能です。

生成された業務レポートを分析し、進捗状況を確認できるので業務に行き詰まりがないか把握することにも役立ちます。

 情報漏洩・不正操作のアラート通知

不審なWebサイトへアクセスや業務に必要のないソフトウェアの使用を感知することで、アラートを通知する機能です。

機密情報の漏洩を防止したり、業務と関係のないアプリケーションの立ち上げを抑止したりすることができます。

 使用ソフト・アクセス履歴・操作ログの記録

業務に使用したソフトやWebサイトなどへのアクセス履歴、操作ログを記録する機能です。業務時間内に従業員がどのようなソフトを使っているか、どこにアクセスしたか、どのように操作したかが確認できます。

業務に無関係なソフトやアクセスがないか、作業状況の確認に役立てられます。

 キーログ取得(導入には慎重な判断が必要)

アプリケーションの使用状況やアクセスログの取得だけでなく、実際のキーボードの入力内容を記録する機能です。業務に関連する入力をしているかなどの確認ができます。

一方、入力したテキストのすべてをチェックするのは過度な監視にあたる可能性があります。導入する場合は慎重に検討しましょう。

主なテレワーク管理ツール

ここでは、主に使用されているリモートワーク管理ツールをご紹介します。導入の際に参考にしてみてください。

みえるクラウド®ログ

みえるクラウド®ログ

出典:みえるクラウド®ログ

みえるクラウド®ログは、PC操作ログや作業画面の取得、分析ができる業務管理システムです。

作業時間や作業内容・内訳、作業量といったデータを取得できます。10分に1度画面画像を自動記録できるので、進捗確認や作業状況確認に適しています。

残業時間が多い社員のリストアップやアラート通知機能も搭載可能です。

また、顧客や案件ごとのログデータ取得も可能なので、タスクの最適化や組織全体の生産性アップにもつながります。

みえるクラウド®ログ

Qasee

Qasee

出典:Qasee

Qasee(カシー)は業務への時間のかかり方やどのような進捗かを把握できる、工数管理自動化システムです。

キーボード操作やスクロール、タップ量などから、生産量や負荷状況を算出し、算出したデータをもとに分析してレポート出力します。

また、自動で勤怠を打刻する機能を搭載しており、従業員の手間や打刻忘れを防止できます。ストレス度合いやモチベーションなどの分析も可能なので、従業員にとって働きやすい環境を構築するヒントにもなります。

Qasee

MITERAS(ミテラス)仕事可視化

MITERAS(ミテラス)仕事可視化

出典:MITERAS(ミテラス)仕事可視化

MITERAS(ミテラス)仕事可視化は、PCログデータを活用して従業員のパフォーマンスアップに貢献する業務可視化ツールです。

PCの利用時間と自己申告された勤怠時間を突き合わせることで、勤務実態を把握できます。

1分ごとにPCログを取得するので、PCの利用状況から業務内容の見える化が可能です。適度に作業状況を監視し、働きすぎ防止にも役立てられます。

また、Outlookカレンダーとの連携機能で、予定と実際の仕事状況を見比べることも可能です。

MITERAS(ミテラス)仕事可視化

remopia(リモピア)

remopia(リモピア)

出典:remopia(リモピア)

remopia(リモピア)は業務時間のログを取得したり、作業画面のキャプチャ機能を搭載したリモートワーク支援ツールです。

リアルタイムで実働時間を記録することで、PCの作業ログデータを可視化します。働き過ぎや長時間離席の検知・アラート通知もついているため、従業員の状況を詳細に把握できます。

利用アプリやウィンドウタイトル、PC画面キャプチャの取得も可能で、進捗管理やサボり防止に役立ちます。

remopia(リモピア)

SKYSEA Client View

SKYSEA Client View

出典:SKYSEA Client View

SKYSEA Client Viewは、PCへのソフトウェアインストール状況やライセンスなど、IT資産利用状況の見える化が叶う、IT資産管理ツールです。

Webやアプリケーション経由での操作ログが取得でき、不適切な操作を制限することができます。

他社製品との連携により機能を強化できるため、より効果的に活用可能です。

SKYSEA Client View

AssetView

AssetView

出典:AssetView

AssetViewは、外部からのウイルス侵入や内部からの機密情報持ち出しに対策ができる、IT資産管理ツール・情報資産管理ソフトです。

マルウェア対策やセキュリティアップデートを管理できる機能を備えている他、業務中のPCの操作ログの確認ができます。

また、社員の業務予実を可視化し、組織全体の業務時間や残業時間、週別のチャート、会議・来訪など業務カテゴリ別のチャートが確認可能です。業務効率アップにも貢献できます。

AssetView

LANSCOPE エンドポイントマネージャー

LANSCOPE エンドポイントマネージャー

出典:LANSCOPE エンドポイントマネージャー

LANSCOPE エンドポイントマネージャーは、業務用のPC・スマートフォンを一元管理できる、IT資産管理ツールです。

オンプレミス版とクラウド版が用意されており、組織の状況に応じて柔軟に導入できます。

詳細なログ管理機能を搭載しているため、監視だけでなく従業員のマネジメントも可能です。

違反操作があった場合にはユーザーに警告が表示され、リアルタイムに管理者に通知されるので、不正操作の抑止ができます。

LANSCOPE エンドポイントマネージャー

まとめ

リモートワークはオフィスでの作業と違い、直接従業員の姿を見ることができません。

どうしてもサボっているのではという疑心が出てしまい、つい監視を厳しくしてしまいたくなりますが、過度な監視は禁物です。

リモートワークで監視する目的を双方で合意し、互いに納得できる形で多様な働き方を実現しましょう。