経理業務の業務改善ガイド|負担を減らす効率化のポイントと進め方

経理業務は日々発生するルーチンワークが多く、入力作業や請求書処理などに時間を取られがちです。少人数体制や「ひとり経理」では、毎月の締め処理や決算時の負担が大きく、改善の必要性を感じている担当者も多いでしょう。

本記事では、経理業務の効率化や業務改善の手順、よくある改善策、さらに外部サポートの活用方法までをわかりやすく解説します。まずは、自社の経理業務を見直すための第一歩としてご活用ください。

経理業務の業務改善とは?

虫眼鏡

経理業務の業務改善とは、日々の仕訳入力や請求書処理、月次・年次決算といった定型作業を効率化し、負担を減らす取り組みを指します。

従来の経理業務は、紙ベースや手作業が多く、入力ミスや確認作業に時間がかかる傾向があります。これを見直し、デジタル化や業務フローの整理を行うことで、担当者が本来のコア業務(経営分析・資金管理など)に時間を割けるようになるのです。

また、業務改善は単なる効率化だけでなく、「人的ミスの削減」「コスト削減」「情報共有の円滑化」といった経営全体のメリットにもつながります。

経理業務の改善手順|基本のステップ5つ

経理業務を効率化するには、現状把握から施策の定着までを段階的に進めることが大切です。ここでは、基本となる5つのステップをご紹介します。

ステップ1:現状の業務を可視化・洗い出す

経理業務の改善は、現状を正確に把握することから始まります。

まずは、日々の作業を細かく洗い出し、業務フローを図式化しましょう。仕訳入力や請求書の発行・確認、振込処理、月次決算、年次決算など、経理担当者が日常的に行っている業務をすべて書き出すことで、全体像が明確になります。

次に、各作業にかかる時間や担当者、発生頻度を記録します。これにより、どの業務に無駄が多いのか、あるいは属人化が進んでいるのかが見えてきます。特に、データ転記や二重入力といった手作業が多い部分は、業務改善の優先対象となることが多いです。

また、可視化の過程で、業務のボトルネックや不必要な承認フローが発見されることもあります。これらは、効率化を妨げる大きな要因となるため、課題の把握に欠かせません。

業務フロー図やチェックリストを作成することで、関係者全員が共通認識を持ちやすくなり、後続の改善ステップにもつなげやすくなります。

ステップ2:課題を分類・優先順位をつける

業務を洗い出したら、次は課題を明確にし、改善すべき順序を決めます。すべての業務を一度に改善しようとすると負荷が大きく、計画倒れになりがちです。

そこで、時間や手間がかかっている業務、ミスが多発する作業、コストがかかる業務などを抽出し、影響度と改善効果の大きさで分類します。

課題の分類には、例えば「重要度」と「緊急度」を軸にしたマトリクスを使うとわかりやすくなります。重要度が高く、かつすぐに着手できる業務から改善を進めることで、短期間で成果を実感しやすくなり、社内の協力も得やすくなるでしょう。

また、改善効果を測るために、定量的な指標を設定することも有効です。例えば「仕訳入力にかかる時間を30%削減する」「請求書処理の遅延件数をゼロにする」といった目標を立てると、次のステップで改善策を検討しやすくなります。

ステップ3:改善策を検討し、実行計画を立てる

課題が整理できたら、それを解決するための具体的な改善策を考えます。

改善策は、手作業を削減するための業務フローの見直しや、ツールの導入、業務分担の再編成など多岐にわたります。複数の案を比較し、効果やコスト、導入にかかる手間を考慮しながら最適な方法を選択しましょう。

また、改善策は一度にすべて導入するよりも、優先度の高いものから順に取り組むほうが現実的です。例えば、請求書処理を電子化した後に、仕訳入力の自動化に進むといった段階的なアプローチが有効です。

実行計画を立てる際には、実施時期や担当者、必要なリソースを明確にすることが重要です。さらに、改善効果を測定するための指標(処理時間の短縮率、ミス削減率など)を設定し、進捗を定期的に確認することで、改善活動の定着につながります。

ステップ4:ツールや仕組みを導入する

実行計画が固まったら、改善策を実現するためのツールや仕組みを導入します。経理業務の効率化において、クラウド会計ソフトやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)は特に効果的です。

これらを活用することで、仕訳やデータ入力、請求書発行などの定型作業を自動化でき、人的ミスの削減や業務時間の短縮が期待できます。

導入時には、現場の担当者が新しいツールを使いこなせるよう、マニュアルの整備や研修を行うことが重要です。ツールは導入すればすぐに効果が出るものではなく、運用ルールの徹底やサポート体制の整備が成功のカギとなります。

また、既存システムとの連携性も確認しましょう。データの二重管理を避けるため、会計ソフトと請求書管理ツール、経費精算システムなどを連動させると、さらに効率化が進みます。

ステップ5:定着・振り返り・継続的な改善を行う

ツールや新しい仕組みを導入した後は、運用が現場に定着するようフォローすることが重要です。導入直後は、担当者が新しい作業手順に慣れていないことが多く、定期的なサポートや疑問解消の場を設けるとスムーズに定着します。

一定期間が経過したら、導入効果を振り返り、目標達成度を確認します。例えば「処理時間がどれだけ短縮されたか」「ミスの件数がどの程度減ったか」といった定量的な結果を測定することで、改善策の有効性が明確になります。

また、経理業務は企業の成長や環境変化に伴い、新たな課題が発生します。定期的な業務レビューを行い、必要に応じてフローを見直すことで、継続的な効率化と改善を実現できます。

よくある経理改善の具体策

ポイント

経理業務を効率化するためには、日常業務に潜むムダや手作業を減らし、システム化・自動化を進めることが効果的です。ここでは、多くの企業で取り入れられている代表的な改善策をご紹介します。

仕訳・入力作業の自動化

経理業務の中でも、仕訳やデータ入力は最も時間と労力がかかる部分です。特に、銀行明細やクレジットカード明細、請求書の内容を手作業で転記している場合、入力ミスや二重処理が起こりやすくなります。こうした作業を自動化することで、担当者の負担を大幅に軽減できるでしょう。

クラウド会計ソフトを活用すれば、銀行口座やカードと自動連携し、取引データをそのまま仕訳として反映できます。さらに、定型パターンを登録しておけば、仕訳内容が自動で仕分けされ、確認と修正だけで処理が完了します。

この仕組みを導入すると、単純な入力作業の時間が減り、決算や経営分析といった付加価値の高い業務に集中できるようになります。初期設定には少し手間がかかりますが、長期的な効率化効果は非常に大きいと言えるでしょう。

請求書・領収書処理のペーパーレス化

紙の請求書や領収書は、印刷や郵送、ファイリングといった作業が多く、手間とコストがかかります。また、紙の書類は紛失リスクや検索の手間も避けられず、経理担当者の負担となることが少なくありません。

これを解決する方法として有効なのが、電子請求書サービスやクラウドストレージを利用したペーパーレス化です。データとして保存することで、書類の整理や検索が瞬時に行えるようになり、保管場所も不要になります。さらに、関係者とオンラインで共有できるため、承認や確認作業もスピーディーに進められます。

ペーパーレス化を進める際には、電子帳簿保存法など法的な要件に沿ったシステムを導入することが重要です。正しく運用すれば、業務効率とコンプライアンスの両立が可能になります。

クラウド会計・RPA・AIの活用

クラウド会計ソフトを導入すると、複数の担当者がリアルタイムで同じデータにアクセスでき、リモートワーク環境でもスムーズに業務を進められます。銀行口座やクレジットカードと連携することで、自動仕訳や取引データの反映が可能となり、日々の入力作業を大幅に削減可能です。

さらに、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を使えば、定型的なデータ転記やチェック作業を自動化できます。これにより、担当者は単純作業から解放され、決算や財務分析といった付加価値の高い業務に注力できるようになります。

近年は、AIを活用した経理支援ツールも増えており、仕訳の推定や異常値の検出など、人間では気づきにくいミスや不正の兆候を早期に発見することが可能です。これらの技術を組み合わせることで、精度とスピードの両方を高めた経理体制を構築できます。


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成功させるためのポイント3つ

経理業務の改善を計画的に進めても、現場の理解や準備が不十分だと定着しにくく、思うような成果が出ないこともあるでしょう。

効率化の効果を最大限に引き出すためには、改善を進めるうえで押さえておくべきポイントがあります。ここでは、特に重要な3つのポイントを解説します。

目的を明確にしておく

業務改善を成功させるためには、なぜ改善を行うのかという目的を明確にすることが不可欠です。例えば「作業時間の短縮」「月次決算の早期化」「入力ミスの削減」といった具体的なゴールを設定しておくことで、改善の方向性がブレず、関係者の理解や協力を得やすくなります。

目的を明文化して共有することで、改善策を検討する際の判断基準にもなります。どのツールを導入するべきか、どの業務から見直すべきかといった選択に迷ったときも、設定した目的に立ち返ることで最適な判断が可能です。

社内の理解と協力体制を整える

業務改善を進めるには、経理担当者だけでなく社内全体の理解と協力が不可欠です。請求書の提出ルールや承認フローなど、経理以外の部署が関わる業務も多いため、現場の意見を取り入れながら進めることが成功の鍵となります。

新しいツールを導入する際は、現場での混乱を防ぐために、事前に説明会やトライアル期間を設けると効果的です。業務フローが変わることで負担が軽減されることや、どのようなメリットがあるのかをわかりやすく伝えることで、社内全体の協力体制を築きやすくなります。

また、改善活動を一部のメンバーだけで完結させず、担当者が相談や質問をしやすい環境を作ることも重要です。全員が同じ目標を共有することで、改善の定着がスムーズに進みます。

ツール導入だけに頼らず業務設計から見直す

業務改善と聞くと、まず新しいツールの導入を考えがちですが、ツールだけに頼るのは得策ではありません。効率化がうまく進まない原因は、そもそもの業務フローにあることが多いため、現行の業務プロセスを見直すことが重要です。

例えば、承認フローが複雑で処理が滞っている場合、ツールを導入してもボトルネックは解消されません。まずは不要な承認工程を削減する、担当者の役割分担を明確にするなど、フローそのものを改善することが先決です。

ツールはあくまで改善の一助であり、業務設計が整って初めてその効果を発揮します。業務を見直したうえで適切なツールを選定することで、無駄のない効率化を実現できます。

人手不足やリソースの限界に|外部サポートの活用も選択肢

経理業務は定型作業が多く、担当者の負担が集中しやすい部門です。特に中小企業や少人数体制では、人手不足や突発的な業務増加に対応しきれないこともあります。こうした状況では、外部サポートを上手に活用することで、業務効率を大きく改善できる場合があります。

経理業務の外注という選択肢もある

経理業務の一部を外部に委託することで、社内の負担を大幅に減らせます。記帳代行や請求書作成、振込代行など、定型的な作業を外注すれば、担当者は社内でしかできないコア業務に専念できます。

外注の最大のメリットは、専門家の知見を活用できる点です。最新の法改正や会計基準に即した処理を任せられるため、ミスの削減や業務品質の向上が期待できます。また、必要な時期だけ依頼できるため、繁忙期や人員不足の際にも柔軟に対応できるのが特徴です。

社内対応との使い分けポイント

外注を活用する際には、どの業務を社内で行い、どの業務を外部に任せるかを明確にすることが大切です。例えば、日々の仕訳や請求書処理など定型化された業務は外注しやすく、逆に経営判断に直結する財務分析や資金繰り計画は社内で対応するほうが適しています。

使い分けの基準としては、作業の難易度、機密性、業務量の変動などを考慮するとよいでしょう。すべてを外部に任せるのではなく、社内に知識を残しつつ外注を組み合わせることで、コストと品質のバランスを最適化できます。

オンラインアシスタントサービスという手もある

経理業務の一部を外部に委託する方法として、オンラインアシスタントサービスの活用が広がっています。必要な業務だけをリモートで依頼できるため、採用や教育のコストをかけずに即戦力を確保できるのが大きな魅力です。

例えば、請求書作成や経費精算、記帳代行など、定型的な業務をオンラインアシスタントに任せれば、担当者は社内でしかできない重要な業務に集中できます。繁忙期だけ依頼するといった柔軟な利用も可能です。

オンラインアシスタントサービス「フジ子さん」もその一つで、経理業務を含む幅広いバックオフィス業務をサポートしています。経験豊富なスタッフがオンラインで対応するため、業務品質を確保しながら負担を軽減できます。

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まとめ|まずは業務の棚卸しと改善の第一歩を

経理業務の改善は、現状の把握から始まり、課題の特定、改善策の実行、そして定着と継続的な見直しが欠かせません。仕訳作業の自動化やペーパーレス化、クラウドツールの活用など、手間を減らす手段は数多く存在しますが、重要なのは自社の課題にあわせて最適な方法を選ぶことです。

また、社内リソースだけでは限界がある場合、外部のサポートを上手に取り入れることで、業務効率はさらに向上します。オンラインアシスタントサービス「フジ子さん」のような外注先を活用すれば、専門性の高い経理業務を任せつつ、社内の負担を軽減できます。

まずは業務の棚卸しを行い、どこに課題があるのかを洗い出すことから始めましょう。それが、経理業務改善の第一歩となります。