契約書保管の基本を解説│保管の期間・方法・注意点など

「契約書はいつまで保管すべき?」
「保管期限が過ぎた契約書を破棄するのが怖い」

このように契約書の保管についてお悩みの企業も多いでしょう。契約書は企業の事業活動において重要な役割を果たす書類です。

しかし、事業年度が長くなるにつれ、保管する契約書の量が増えます。スペースの問題や管理が煩雑になるなど、課題を抱える企業も少なくありません。

契約書は、会社法や法人法施行規則などで保管が義務付けられているため、適切に保管する必要があります。
そこで本記事では、契約書保管の基本である、保管の期間・方法・注意点などを解説します。

税務における契約書の保管期間

法人税法で定められている契約書の保管期間について解説します。

原則は7年

税務書類に係る請求書・領収書・見積書などの書類の保管期間は、法人税法によって「7年間」と定められています。

決算書類や税務申告書類なども7年間保存しなければなりません。

税務調査が入った場合、最長7年までさかのぼって調査されます。そのため、必要な書類が残っていなければ、申告内容の確認ができず不利益になります。税務調査は全ての企業に起こり得る事態ですから、契約書等の書類は適切に管理しましょう。

《保管義務のある書類》

帳簿 総勘定元帳・仕訳帳・現金出納帳・売掛金元帳・買掛金元帳・固定資産台帳・売上帳・仕入帳など
書類 棚卸表・貸借対照表・損益計算書・注文書・契約書・領収書など

例外的に9・10年のケースも

契約書の保管期間には、下記のように例外があります。

青色申告書を提出した事業年度で欠損金額(青色繰越欠損金)が生じた事業年度または青色申告書を提出しなかった事業年度で災害損失欠損金額が生じた事業年度においては、10年間(平成30年4月1日前に開始した事業年度は9年間)となります。
*引用:国税庁/No.5930 帳簿書類等の保存期間

これまで、事業年度で欠損金額が生じた場合の繰越は7年間でしたが、法が改正されて9年間、繰り越せることになりました。そのため、契約書の保管期間も9年間と定められています。

また、平成27年度・28年度の税制改正により、平成30年4月1日以降に生じた欠損金は10年間繰り越せることになりました。これにより、契約書の保管期間も10年間とされています。

会社法では契約終了後10年の保管が義務付けられている

会社の運営や設立・精算などのルールを定める法律「会社法」では、契約期間の満期を迎えた書類や取引が終了した書類の保管期間を10年と義務付けています。

万が一取引先とトラブルがあった際に、契約書がなければ契約内容が適正であったことを証明できません。最悪の場合、損害賠償請求や違約金を請求される事態も考えられます。

自社と取引先のトラブル回避のため、10年間保管する必要があります。

効力が継続している契約書は永久保存

契約が継続している場合は、もちろん契約書を捨ててはいけません。
法律で保存が義務付けられているわけではありませんが、文書の性質上、永久保存する必要があると考えられています。

契約書の主な保管方法

契約書の保管方法は下記のとおりです。

紙媒体をファイリングして保管

もっともポピュラーなのが、紙媒体をファイリングして保管する方法です。

契約の種類ごとや取引先ごとにファイリングします。原本をそのまま保管すればよいので、設備やシステムを導入する必要がありません。契約書の数が少なければ、保安スペースも取りませんし、手間もかからないため低コストです。

一方で、契約期間が長く契約書の数も多い場合は、管理が煩雑になりがちです。保管スペースの確保が必要ですから、賃料などの費用負担も大きくなるでしょう。

また書類を探す手間がかかり、さらに紛失のリスクも高めです。持ち出し・破損・消失などに注意する必要があります。

ほかにも、紙の経年劣化により判読できなくなったり、本社と共有するのが面倒だったりとデメリットも多めです。

電子データで保管

契約書は、スキャンして電子データとして保管する方法がおすすめです。

これまで契約書を電子データとして保管するには、税務署長への事前承認が必要でした。しかし、2021年電子帳簿保存法の改正により、2022年1月の施行以降は申請が不要となっています。

電子データで保管するメリットは、保管スペースを確保する必要がなく検索しやすいことです。紙媒体のように劣化する恐れもありません。

クラウドサーバーなどに保存しておけば、どこからでもアクセスできますので、契約書の共有も容易です。また、バックアップを取っておけば、紛失リスクも回避できるでしょう。

電子契約では、印紙税がかからないため紙の契約書よりもコストダウンできることもメリットです。

一方で、契約書管理システムの導入コストがかかる点がデメリットです。また、セキュリティ対策をしっかり行わなければ、情報が漏洩する恐れもあります。

契約書がWeb上で誰でも閲覧できる状態になるなど、最悪の事態を招くこともあるため注意しましょう。

どちらにせよ保管ルールは社内全体で統一しよう

契約書を紙媒体で保管するにしても、電子データでも、保管ルールを社内全体で共有し、統一しましょう。

保管場所やファイリングの方法・種類・廃棄ルールなど、企業やチーム全体で共有しなければ適切な管理ができません。保管ルールを明確化せず、情報共有もなければ、契約書の取り扱いに関する業務が属人化してしまいます。

これでは担当者以外、どこに何があるかわからなくなり業務に支障をきたすでしょう。

契約書の保管はルール化して、文書管理業務を標準化することが重要です。

契約書を電子データで保存する際の注意点

保管スペースの確保が必要なく、検索が容易な電子データの保管は、さまざまなメリットがある一方で注意すべき点もあります。

ここからは、電子データで保存する際の注意点を解説します。

1:スキャナ保存の要件

紙の契約書をスキャンして保存する場合、電子帳簿保存法4条3項、電子帳簿保存法施行規則2条5項・6項に基づき、スキャナ保存の要件を満たす必要があります。

スキャナ保存の要件を満たせば、法人税法・電子帳簿保存法上の保存義務を果たしたことになります。

《スキャナ保存の要件》

  • 速やかにスキャンする
  • 解像度は200dpi相当以上を満たすこと
  • カラー画像による読み取りは赤・緑・青それぞれ256階調(約1677万色)以上であること
  • タイムスタンプの付与
  • 解像度および階調情報を保存する
  • A4サイズなど大きさ情報を保存する
  • 訂正または削除の事実および内容の確認を行う
  • 見読可能装置(14インチ以上のカラーディスプレイ、4ポイント文字の認識等)の備え付けを行う
  • 検索機能を確保すること

*参考:国税庁/電子帳簿保存法一問一答

2:電子データの紙媒体保存は不可

2022年1月に電子帳簿保存法の改正が施行され、2022年以降は電子データで受け取った契約書を紙媒体に出力して保存することが原則不可となります。電子データで受け取った契約書は、電子データのまま保存しなければなりません。

3:真実性と可視性

契約書のPDFをメール添付して送付する場合や、Web請求書発行システムなどの利用で受け取った書類は、保存要件を満たした状態で保管することが義務付けられています。

《電子取引の保存要件》

画像:国税庁/電子帳簿保存法が改正されました

契約書の保管は電子契約サービスが便利!

契約書の保管では、保管期間や保存方法の要件などが細かく定められているため、導入を躊躇している企業も少なくないでしょう。

そんなときは、電子契約サービスが便利です。

電子契約サービスとは、インターネット上で契約の締結ができるサービスです。クラウド上で、電子契約書を使って契約できますから、郵送や対面の手間を省き保管スペースの問題も回避できます。

国内の主要な電子契約サービスは下記のとおり。

たくさんの電子契約サービスがありますので、自社の使い勝手や取引先との相性などをじっくり検証して選びましょう。

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まとめ

本記事では、契約書の保管方法について解説しました。

契約書は、法人税法と会社法に基づいて正しく保管する必要があります。しかし、紙媒体で契約書を保管するとなれば、保管スペースの確保やファイリングなど無駄な手間とコストがかかります。

効率よく契約書を保管するなら、電子データの保存がおすすめです。本記事でご紹介した、電子契約サービスなどを活用し、より効率よく正確に保存しましょう。