仕事でミスやトラブルを起こした場合、会社から始末書の提出を求められることがあります。ミスやトラブルを起こした際の、信頼回復の第一歩になる始末書。目的やルールを理解し、会社も本人も納得できるものを提出しなければなりません。
しかし「書き方が分からない」「書くコツを知りたい」といった悩みを持つ方も多いはず。
そこで本記事では、始末書を書く意味やシーンの例、ルールなどを説明します。例文も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
始末書とは?書く意味は何?
始末書とは、仕事でトラブルやミスを起こした時、会社に対して反省や謝罪の念を伝え、再発させないよう誓約する文書を指します。会社側の目的は、トラブルやミスの経緯を把握し、本人に反省を促すことです。
始末書を提出した後、本人は再発防止に努めつつ、信頼回復に向けて日々の業務に取り組むことになります。
また、始末書の作成は懲戒処分のひとつで、法的な拘束力を持つ文書でもあります。つまり、労働者が懲戒処分に相当する行為をしたと明確にする目的も持つわけです。ただし、始末書自体が懲戒処分ですから、これの提出後に、そのトラブルをめぐって追加の処分を下すことはできません。
始末書と顛末書の違い
始末書と似た文書に「顛末書(てんまつしょ)」があります。これらの大きな違いは、何に重点を置いているかです。
前述の通り、始末書は「ミスやトラブルを起こした本人に反省を促すこと」に重点が置かれています。一方、顛末書は「ミスやトラブルの経緯や事実関係を明らかにすること」に重点が置かれています。顛末書だと事実経過を確認するに留まるのです。
そして、会社側は顛末書の提出を命令できるのに対し、始末書では憲法上これができません。始末書を要求しても従業員に拒否される可能性があり、そうなった場合には、顛末書に切り替えるのが一般的です。
始末書を書くシーンの例
始末書というのは、やはり相応の非がないと求められないものです。では、例えばどんなシーンが考えられるのか、例を3つ紹介します。
- 金銭に関わるトラブル
- 規定違反などをした場合
- 会社の名誉や社会的イメージを傷つけた場合
金銭に関わるトラブル
1つめは金銭に関わるトラブルです。
<当てはまる例>
・会社の金銭を紛失した
・貸与されている物品や備品を破損、紛失した
・帳簿や在庫データ、納品データが実態と一致しない
規定違反などをした場合
2つめは規定違反などをした場合です。
<当てはまる例>
・就業規則や服務規程などの社内規則に違反した
・一般常識をかけ離れた行為や法令違反を行った
会社の名誉や社会的イメージを傷つけた場合
3つめは会社の名誉や社会的イメージを傷つけた場合です。
<当てはまる例>
・商品の不具合や配送の手違いなどにより、顧客や取引先に損失を負わせた
・無許可で会社の名前を使用した
・周辺の住民へ迷惑をかけた
始末書の書き方│盛り込むべき情報
上記のようなことをしてしまい始末書を書くことになったら、具体的に何をどう書けばいいのでしょうか。ここからは、始末書に盛り込むべき情報を説明していきます。
①過失の内容
最初に書くのは、過失(トラブルやミス)の内容です。いつ、どこで、どういう経緯で起こったのかを具体的に記します。
「この度、会社からの貸与品である△△を〇〇年〇月〇日、◯時に終業した後の帰宅中に紛失してしまいました」のように、年月日や時間も正確に伝えるのがポイントです。
これにより、読む人は時系列を追って内容を把握しやすくなります。
②過失の原因
次に、過失の原因を書きます。
「この事態は私の注意力の欠如が原因です」などですね。これによって、再発防止に向けての対策を立てやすくなります。
③自分の責任を認め、謝罪
過失の原因、およびその責任が自分にあると認め、謝罪する一文も重要です。
「深く反省しております。大変申し訳ございませんでした」など、丁寧かつストレートな言い回しで伝えましょう。ここを遠回しな表現にすると、言い訳がましく思われかねません。
④同じ過失を二度と起こさないと誓う一文
最後に、同じ過失を二度と起こさないと誓いましょう。
「今後、このようなミスを二度と起こすことがないよう、細心の注意を払うことを誓います」などです。もちろん、実現可能な方法をもって対策することが肝心です。
始末書の例文
ここからは、シーン別に始末書の例文を紹介します。
①会社の備品を紛失した
この度は、会社から貸与されている携帯電話を紛失してしまったことをお詫び申し上げます。
〇〇年〇月〇日の◯~◯時の間、訪問先であるA社を出て、△△駅付近から自社に戻るまでの移動中に紛失したと思われます。A社を出てすぐに、一度携帯電話を使用しており、紛失に気付いたのが◯時ごろに帰社した時です。
発覚後すぐに上司に報告し、利用した鉄道会社であるB社に連絡しました。拾得があった場合には連絡をいただくようお願いしております。携帯電話会社へも連絡し、回線の一時停止を依頼済みです。また、警察へも届けておりますが、未だ見つかっていない状況です。
当該の携帯電話には、取引先の電話番号やメールアドレスが登録されております。個人情報の漏洩に繋がるようなことは、深刻な事態だと猛省しております。
私の不注意により、多大なるご迷惑をお掛けし大変申し訳ございません。今後このようなことが二度と起こらぬよう、携帯電話の管理には細心の注意を払うことを誓います。
②制作物の提出が遅れてしまった
この度は、A社からご依頼の制作物の納期が遅れてしまい、大変申し訳ございません。
〇〇年〇月〇日に受注した△△のチラシ制作は、3営業日以内の提出ということでA社より依頼を受けましたが、私自身のスケジュール管理ミスにより、1日遅れての納品となりました。
業務が立て込んではいたものの、社内でヘルプを要請するといった対処も可能でした。しかし、自分の抱えている案件すべてに自分自身で対応しようと抱え込んでしまいました。また、A社との取引に慣れが生じてしまい「1日くらい」といった甘えもありました。
A社へは謝罪の言葉を申し伝え、お詫び状をお送りしました。幸い、A社からは「今後このようなことがないように気を付けてください」と注意されたのみで、今後も取引継続の見込みです。
今後は、納期が遅れることは取引先にご迷惑をかけること、会社の損失やイメージダウンにもつながることを強く認識し、自分が手いっぱいの時には他の人と作業を共有できるよう、日ごろから体制を整えて参ります。二度と不可抗力以外の原因で納期を遅らせないことを誓います。
この度は、誠に申し訳ございませんでした。
③交通事故を起こした
〇〇年〇月〇日〇時ごろ、国道△号線の△△交差点で追突事故を起こしてしまいました。
私の前方不注意が原因です。幸い、相手の方に怪我はありませんでしたが、社用車の前方と相手方の車の後方が破損し、修理が必要となりました。
事故処理につきましては、当社加入の〇〇自動車保険会社が対応し、相手方もご納得のうえで示談が成立しております。
相手方と会社に多大なご迷惑と損害を与えましたこと、深く反省しております。誠に申し訳ございませんでした。このような不始末が二度とないよう、今後は安全運転を心がけ、周囲の確認を怠らないことを誓います。
始末書を書く際のポイント
次に、始末書で押さえておきたいポイントを3つ解説します。
1:事実を具体的に書く
1つめは、事実を具体的に書くこと。そうしないと、読み手は何がどうなったのか把握できません。
ウソがNGなのはもちろん、曖昧な表現や誤解を生む表現も避けましょう。言い訳がましく思われ、悪印象を与えてしまいかねません。
2:遠回しな言い回しをしない
2つめは、遠回しな言い回しをしないこと。
長ったらしい文章を読みたい人はいません。それが始末書であればなおさらです。素直に反省していることを示すために、ストレートかつ簡潔に書きましょう。
3:素直に自分の責任を認めて謝罪する
3つめは、素直に自分の責任を認めて謝罪すること。
過失の全責任があるわけではないにしても、どこか自分に足りない部分があったはずです。その点については正面から受け止め、誠実さを伝えましょう。
始末書を提出するタイミング
始末書提出に明確なタイミングはありませんが、作るとなったらすぐ取り掛かりましょう。ミスやトラブルを起こしたうえに始末書の提出まで遅れると、印象がすこぶる悪くなってしまいます。
事の起きた経緯や再発防止の取り組みを整理できた時点で、なるべく早く作成することをおすすめします。
始末書の提出後は信用回復に努めよう
始末書で謝意を示した後は、全力で信頼回復に努めましょう。一生懸命に業務へ取り組む姿は、会社にも伝わるはずです。気を落としている暇はありません。過失によるマイナスを取り返す気持ちで業務にあたってください。
まとめ
今回は始末書について、書く意味や書き方などを解説しました。
始末書の提出は、社内外からの信頼を回復する第一歩になります。書き方のルールやポイントを押さえて、誠意が伝わる書面を心がけましょう。