MBO(目標管理制度)とは?意味や導入手順、運用のコツなどをわかりやすく解説

組織内におけるマネジメント手法のひとつに「MBO」があります。経営学者ピーター・ドラッカーによって考案され、日本では「目標管理制度」とも呼ばれます。

従業員の自主性を喚起できる、客観的な指標をもって従業員を評価できるといったメリットがあるものの、制度を正しく運用できないとかえって生産性が下がったり、的外れな評価が行われたりしかねません。

そんなMBOについて、本記事では意味や導入手順、運用のコツなどを解説します。

MBOとは?

MBOは「Management By Objectives」の略で「目標管理制度」「目標による管理」とも呼ばれます。

具体的には、個人またはグループごとに目標を設定させ、その進捗を従業員自らが管理するというもの。これにより、業務管理の強化や自主性の喚起を狙うのが目的です。また、目標の達成度は評価の基準にもなります。

パーソル総合研究所の調査によると、MBOを実施している企業は全体の34.6%。国内において、メジャーなマネジメント手法といえるでしょう。なお、規模の大きい会社ほど実施率は高くなっています。

MBOとOKRの違い

MBOと似た手法に「OKR(Objectives and Key Results、目標と主要な結果)」というのがあります。

目標管理という点では同じですが、OKRにおける目標は個人ではなく組織全体のものです。つまりOKRの目的は、取り組みの方向性を統一して生産性を上げることです。

また、MBOの評価頻度が半年から1年に1度なのに対し、OKRの評価頻度は1週間〜1ヶ月に1度が一般的です。さらに、MBOの目標は100%達成を理想とするのに対し、OKRでは70%前後の達成でOKとされます。

目的や適用範囲、評価頻度が違うわけですね。会社によっては両方を導入しているケースもあります。

MBOの他の意味

MBOはM&A手法としての意味合いも持っています。Management Buyoutの略で、会社の経営陣が自社の株式や事業を買収し独立することを指します。

MBO導入のメリット

MBO導入のメリットは、主に次の3つです。

①従業員の自主性を喚起できる

従業員自らが目標を設定し、達成のために取り組むことになるMBOには、従業員の自主性を喚起する効果が期待できます。

②従業員のモチベーションを高められる

MBOでは「やらされている」という感覚になりにくく、目標をクリアした際には達成感を味わうことができます。周囲から高く評価されるのもあり、従業員のモチベーションを高めやすいという効果も得られるわけです。

③客観的で透明性のある評価ができる

目標と達成期限が明確なため、MBOによって客観的かつ透明性のある評価が可能になります。従業員にとっては納得感があり、次の目標へのモチベーションを高めていけるでしょう。

MBO導入のデメリット

メリットばかりでなく、MBOには以下のようなデメリットもあります。

単なるノルマ管理制度になる可能性がある

目標を立てさせ、その達成度を評価基準にするという性質上、MBOがノルマ管理制度になってしまう可能性があります。

MBOは本来、従業員や組織の生産性を上げるためのマネジメント手法です。この目的を見失い、ノルマ管理という違った目的のために運用してしまうと、従業員はぬるま湯のような目標しか掲げなくなったり、達成のために協調性のない取り組みに走ったりしかねません。

導入の目的や運用方法、ルールなどを社内に浸透させ、MBOの意義を全体で共有するようにしましょう。

目標設定時と評価時に状況が変化しやすい

MBOは半年から1年のサイクルになるため、目標設定時と評価時で状況が変化しやすいというデメリットがあります。これにより「半年前には適切だった目標が、今や現実にそぐわない目標になってしまった」といった事態が考えられるのです。

したがって、MBOだけを運用するのではなく、OKRやKPIといった他の要素も取り入れてマネジメントを行うようにしましょう。また、方針が頻繁に変更される企業では、MBOの導入そのものを避けるのも手です。

公平性のある運用が難しい

同じ等級のAさんとBさんがいたとして、Aさんは難易度の高い目標、Bさんは難易度の低い目標を設定したとします。もしAさんが未達で査定ダウン、Bさんが達成で査定アップとなると、公平な運用がなされているとは言い難いでしょう。

前述のような目標設定を認めていること、どんな目標が適切かという基準を部署や等級ごとに設けていないこと等は組織として問題です。実際、このようなケースは少なくないため、運用に際しては制度設計を徹底的に詰めておかなければなりません。

MBO運用の手順と方法

ここからは、MBO運用の手順と方法を解説します。

①導入の目的や意義、ルールを組織内で共有する

まずは、MBO導入の目的や意義、ルールを従業員に周知しましょう。これを十分にせず急に導入すると、社内が混乱し生産性は下がってしまいます。

②目標を設定する

次に、目標を設定します。

いきなり個人の目標……というのは無理があるので、最初に組織目標、チーム目標を明確にしましょう。そして、その中における個人としての役割を再確認し、目標を考えてもらいます。

どういう目標が適しているのかについては後述します。

③目標達成の手段と道のりを計画する

目標を設定したら、それを達成するための手段と道のりを計画します。

時間、労力、知識、予算といった既存のリソースの中でとれる最良の策は何か、上司とも相談しながら考えてもらいましょう。

④計画を実行する

計画ができあがったら、実行です。計画に狂いが生じた場合、その原因を洗い出して適時対処していきます。

⑤進捗確認と評価を行う

毎週・毎月といったペースで進捗確認を行います。達成度合いやプロセスを上司と本人で確認し、必要に応じてフィードバックしましょう。

最終評価は半年~1年単位で行うのが一般的です。その際には次期の目標についての話し合いも必要です。

失敗しないMBOのための目標設定

MBOにおいて最も重要な要素は目標設定です。これが適切でないと取り組みすべてが上手くいかず、運用目的も達成できません。

では、どんなポイントを意識するとよいのか。以下に3つ解説します。

数字を用いて具体化する

ただの「効率化する」「質を上げる」といった内容では、達成基準が曖昧なため、どんぶり勘定的な評価しかできません。客観的な測定ができるよう、目標には数字を入れることが大切です。

<例>

  • 5月中に納期を3日へ短縮する
  • 問い合わせ数を月あたり10件増やす

頑張れば届くレベルに設定する

目標のレベルは、頑張れば届くぐらいにしましょう。高すぎても低すぎてもモチベーションは上がりませんし、スキルアップにもつながりません。

MBOがノルマ管理制度になってしまい、従業員は達成のために「できて当たり前レベル」の目標ばかり立てる……というのはよくある失敗パターンです。個人のスキルアップ、ひいては組織全体の生産性アップというMBO本来の目的にもかなった難易度の設定を心がけてください。

上司が目標を押し付けることは避ける

自主性の喚起はMBOの重要な要素のひとつです。上司が目標を押し付けてしまうと、自主性を喚起することはできません。

目標設定についてフィードバックすることはあれど、最終的にはあくまで従業員個人に決めさせましょう。

まとめ

今回はMBOについて、意味や導入手順、運用のコツなどを解説しました。

適切に運用できれば組織全体のパフォーマンスが向上する手法ですが、ノルマ管理制度と化してしまったりするリスクもあります。導入の際には目的や意義、ルールなどをしっかりと社内で共有することが大切です。