残業手当の未払いや過度の残業などが深刻な社会問題となっている昨今、労働基準法や厚生労働省のガイドラインに沿った勤怠管理が、企業に求められるようになっています。
とはいえ、従業員の労働時間・残業時間・出退勤時間などを細かく管理できているか不安な担当者も多いのではないでしょうか。また、最近ではテレワークを導入する企業も増え、従業員がオフィスに出勤しない場合の、適切な勤怠管理について悩んでいる方も少なくないでしょう。
そこでおすすめなのが、勤怠管理システムの導入です。本記事では勤怠管理システムについて、概要や導入のメリット・デメリット、おすすめ製品などを紹介していきます。
目次
そもそも勤怠管理システムとは?
勤怠管理とは、企業が従業員の就業状況を把握・管理することをいいます。勤怠管理では、出退勤時間の打刻・記録や残業・各種休日休暇の申請、有給取得状況、シフト作成、労働時間の集計などを正しく記録・管理します。
勤怠管理は法令で定められた企業の義務であり、企業は従業員の労働状況を正確に管理する必要があります。厚生労働省が公表しているガイドラインによると、原則として使用者が、自ら現認することにより確認し、適正に記録すること、タイムカード・ICカード・パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること、と定められています。
(参考:厚生労働省 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン)
従来実施されてきた勤怠管理の方法は、タイムカードの打刻や出勤簿の記入、エクセルlへの手入力などでした。しかし、従業員の勤怠管理を紙媒体やエクセルで行うと不正やミスが発生するおそれがあり、法改正や多様な働き方への対応が難しいという問題があります。
法改正に応じた適切な方法でより厳密な勤怠管理を管理するためには、従業員ごとの労働条件に即した管理が必須であり、勤怠管理システム導入の必要性が高まっています。勤怠管理システムは、PCやタブレット、スマホなどを利用し、従業員の勤怠に関する業務全般を記録・管理できるシステムのことです。
テレワークの普及により、インターネット環境があれば使えるクラウド型が主流になってきました。一方で、業種や安全面から自社サーバーを利用したオンプレミス型を選ぶ企業も少なくありません。
勤怠管理システムの基本的な機能
以下に、勤怠管理システムの基本的な機能を紹介します。
- 打刻機能
- 申請、承認
- シフトやスケジュール管理機能
- 残業時間や有給取得状況の把握
- 勤怠情報の自動集計
- 他システムとの連携機能 など
勤怠管理システム導入のメリット
勤怠管理システムを導入するメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。この章では、勤怠管理システムを導入する具体的なメリットを4つ紹介します。
正確な打刻管理ができる
勤怠管理システムでは、従業員の勤怠情報を客観的かつ正確に管理できます。打刻方法はスマホやPC、ICカード、生体認証など。企業の状況に合わせてさまざまなツールによる打刻が可能です。
誤入力があってもアラート機能により早期発見が可能で、すぐに修正できるので入力ミスや不正の防止にも効果的です。
集計や分析の手間を減らせる
勤怠管理システムを導入すれば、勤怠情報の一元管理によりデータを自動で収集し、集計や分析が簡単にできます。このため、タイムカードやエクセル、手作業で行っていた集計や分析業務が不要になり、作業の手間を大幅に削減できます。
他のシステムと連携しやすい
勤怠管理システムは、給与計算システムなどとデータの連携が可能なものが多くあります。勤怠情報を取り込むだけで給与計算が自動で行われるため、業務全体の効率化が見込まれます。
法律の改正にも対応できる
クラウド型の勤怠管理システムは法律の改正にも対応でき、その都度自動アップデートされるものがほとんどです。企業側での更新作業は必要ありません。ただし、オンプレミス型の場合は自社で法律に対応する必要があるため、注意が必要です。
勤怠管理システム導入のデメリット・注意点
勤怠管理システム導入には多くのメリットがある一方で、次のようなデメリットがあります。メリットだけでなくデメリットや注意点もしっかり把握しておきましょう。
導入コストがかかる
勤怠管理システムは、導入の費用や実際に運用していくまでの時間、工数がかかります。自社の就業規則や従業員ごとの雇用形態、勤務形態など、自社の状況をミスがないように設定しなければなりません。
さらに、社員が勤怠管理システムの利用に慣れるために、利用方法の周知や問い合わせ対応などを用意する必要があります。
自社の働き方に合わないと業務がかえって煩雑になる
独自の就業規則や勤務形態がある場合、利用する勤怠管理システムによっては対応できず、業務がかえって煩雑になる可能性があります。費用だけを比べるのではなく、実際の使い勝手や自社の独自ルールに対応できるかなど、確認したうえでツールを選定しなければなりません。
勤怠管理システムとエクセル、タイムカードの比較
勤怠管理システムとエクセル、タイムカードについてより詳細に比較すると、どのような違いがあるのでしょうか。この章では、エクセル、タイムカードによる勤怠管理のメリットとデメリットをそれぞれ紹介します。
エクセルによる勤怠管理のメリットとデメリット
エクセルによる勤怠管理は、社内のパソコンにほぼ導入されていること、使い慣れている人が多いことから、導入や操作のハードルが低いことが特徴です。本人、または本人以外が入力することで勤怠管理を行います。
エクセルによる勤怠管理のメリットは、導入・運用の費用を抑えられることです。会社のパソコンにMicrosoft Officeがインストールされている場合、無料で利用できます。
また、エクセルはカスタマイズしやすく、自社の就業規則や勤務形態に合わせて柔軟に対応できることが魅力です。Web上にエクセルでの勤怠管理のテンプレートが数多く掲載されているので、自社の就業規則や勤務形態に合ったものが簡単に作成できます。
一方でデメリットは、従業員一人ひとりの出勤・退勤時刻などを手入力する必要があるため、作業に手間がかかることです。エクセルでの勤怠管理は、入力ミスや計算式のミスなどのヒューマンエラーが起こりやすいため、確認に時間がかかります。
また、エクセルは法律の改正に対応しきれないため、法律の改正のたびに自力でエクセルの勤怠管理表を修正し、法改正を反映させる必要があります。さらに、自己申告による管理であるエクセルは、客観的な記録と認められず、前述した厚生労働省のガイドラインにおける勤怠管理記録の要件を満たせない可能性があるので注意しましょう。
タイムカードによる勤怠管理のメリットとデメリット
タイムカードは、機械にカードを差し込むと現在の時間が打刻される仕組みです。出社時・退社時にそれぞれの時刻を機械で打刻します。
タイムカードのメリットは、誰でも簡単に使えることです。従業員は出社時・退社時に自分のカードを探して打刻するだけで、複雑な操作や設定がありません。
また、タイムカードにかかる費用は、機械とタイムカード、インク、毎月の電気代のみと比較的安価です。機械は一度購入すればいいので、手軽に導入できます。
一方、デメリットはデータの集計に手間がかかることです。集計時にミスが起こりやすいため、間違いがないかどうかの確認作業が必要になります。
また、誰でも打刻できますので、不正を防止する仕組みも必要です。
従業員が少ない企業であれば、導入コストが少なく利用方法も簡単なため、メリットのほうが大きく感じるでしょう。
勤怠管理システムが向いている会社
勤怠管理システムを導入することで、正確な打刻管理ができる、勤怠管理担当者の業務負担を大幅に軽減する、労働基準法などの法律を適切に遵守できるなどのメリットがあります。
費用面での負担があるものの、従業員が多い企業はもちろん、少数精鋭で経営する中小企業もメリットのほうが大きく感じられるでしょう。
ただし、自社の業種や規模によって、どの勤怠管理システムが最適なのかは異なるため、自社の状況に合わせた勤怠管理システムの選定が必要です。例えば、コスト重視であればクラウド型がおすすめですが、従業員数が多い会社であればクラウド型よりもオンプレミス型のほうがコストを抑えられる場合があります。
また、セキュリティ管理がしっかりしているのはオンプレミス型、法改正に柔軟に対応するのであればクラウド型です。
勤怠管理システムの主要5つを比較!
この章では、おすすめの勤怠管理システムの主要5社を紹介します。それぞれのサービスごとに特徴があるので、自社に最適な業者を見つけましょう。
ジョブカン勤怠管理
画像:ジョブカン勤怠管理
「ジョブカン勤怠管理」は、業種や規模を問わず幅広い企業におすすめのクラウド型勤怠管理システムです。シリーズ累計導入数12万社以上、2021年の「ITトレンド上半期ランキング 勤怠管理執行管理システム部門」で第1位を獲得した実績があります。
ジョブカン勤怠管理は、勤怠管理業務に必要な機能を備えており、シンプルな操作性であるため、初めてでもすぐに使いこなせます。200以上もある多彩な機能の中から「必要な機能だけ」を自由に組み合わせて利用できるので、自社に合うようにカスタマイズが可能です。
顔認証打刻やICカード打刻、指静脈打刻、モバイルGPS打刻など、さまざまな打刻方法が揃っており、複数の外国語表示機能も搭載しています。経費精算・ワークフロー・給与計算など他のジョブカンシリーズと自動連携が可能です。
初期費用・サポート費用は無料。さらに、30日間の無料期間ですべての機能が試せるので、実際に使い心地を体験してみると良いでしょう。
マネーフォワードクラウド勤怠
画像:マネーフォワードクラウド勤怠
「マネーフォワードクラウド勤怠」は、あらゆる企業規模・勤務形態に対応できるクラウド型勤怠管理システムです。基本的な勤怠管理・シフト管理・有給休暇管理機能など、勤怠管理の必要な機能を網羅し、シフト制・裁量労働制・フレックスタイム制などのさまざまな勤務形態に対応できます。
マネーフォワード クラウド勤怠は、シンプルで分かりやすく、初めて勤怠管理システムを導入する場合でも簡単に使えます。さらに、複数人での管理が行えるので、支店や営業所など複数の拠点がある場合も便利です。
マネーフォワード クラウド勤怠では、メール、チャットなどによって幅広いサポートが提供されており、サポート満足度95%を誇ります。サポートサイトには、初期設定や導入手続き、操作方法などが分かりやすく説明されたマニュアルが用意されています。
料金プランは、個人事業主向け・50名以下の法人向け・51名以上の法人向けの3つに分かれており、事業規模に合わせてプランを選べます。マネーフォワード クラウド給与や人事管理などとデータ連携が可能なので、すでにマネーフォワードクラウドのシリーズを利用している場合は、特におすすめです。
freee人事労務
画像:freee人事労務
「freee人事労務」は、勤怠管理だけでなく労務管理や給与計算など、人事労務に関するさまざまな業務を一元的に管理できる、クラウド型人事労務ソフトです。勤怠管理システムとしての機能はかなりシンプルで、人事労務に関する機能が豊富に搭載されています。
打刻方法は、PC共有端末打刻、ICカード打刻機、ICカードリーダー、指紋・静脈認証などで、幅広いニーズに対応しています。また、位置情報を取得できるため、直行直帰やテレワークにも最適です。
料金プランは、企業規模や使える機能範囲に応じて4つあり、自社に最適なシステムを選べます。ただし、裁量労働・フレックス制への対応や勤怠の申請と承認など料金プランによってできることが異なるので注意しましょう。
また、より充実した勤怠機能が必要な場合は「freee勤怠管理Plus」というサービスになり、追加で費用がかかります。freee人事労務は、勤怠管理だけでなく労務管理や給与計算など、人事労務に関するさまざまな業務を全体的に効率化したい場合におすすめです。
jinjer勤怠管理
画像:jinjer勤怠
「jinjer勤怠管理」は、バックオフィス業務の効率化を支援するクラウドサービス「ジンジャーシリーズ」の勤怠管理システムです。操作が簡単で使いやすく、ITリテラシーが高くない場合でも利用できます。
あらゆる勤務形態に対応でき、正社員や契約社員などの管理はもちろん、アルバイト、パートスタッフ、インターンなどのシフト作成までできます。打刻方法はPCやスマホ、タブレット、ICカードなどがあり、多様な働き方に合わせることが可能です。
英語やインドネシア語、タイ語、ベトナム語など多言語表示機能も搭載しており、従業員と管理者の間で起こるコミュニケーションエラーを防ぎます。また、導入初期から導入後の運用に至るまでサポートが用意されているので、初めての導入でも安心です。
利用料金は、月額300円~/人です。人事労務・経理・契約業務の各サービスを組み合わせることもできるので、労務や給与など他のジンジャーシリーズと組み合わせて一元管理すると、より便利に利用できます。
kinnosuke
画像:kinnosuke
「kinnosuke(キンノスケ)」は、勤怠管理システムを提供して10数年以上の実績を持つHOYA株式会社が提供しているクラウド型勤怠管理システムです。勤怠管理に関するすべての業務を自動で行い、残業、休日出勤、休暇、打刻修正などの各種申請はすべて電子化されています。
さまざまな企業への導入実績から、複雑な就業規則や運用など、企業ごとに異なる出勤簿の計算や集計に幅広く対応しています。シンプルで分かりやすいデザインでボタンなどの配置に一貫性があるので、誰でもすぐに操作できます。
打刻方法はPC・スマートフォン・共有PCからのログイン打刻やICカード、指紋認証、レンタル型タイムレコーダー、暗証番号による打刻など、職場の環境に合わせた打刻方法を選べます。導入の際は経験豊富な専任の導入支援チームが課題をヒアリングし、自社に最適な設定を行ってくれるので、勤怠管理システムの導入・運用も安心です。
利用料金は月額350円~/人で、導入初期費用が別途かかります。最大60日間の無料体験版が用意されており、オプション機能を含めたすべての機能を利用できるので、実際の操作感などを試してみると良いでしょう。
勤怠管理システムの選び方
多くの勤怠管理システムから自社に適したものを選ぶには、どのような部分に注目すると良いのでしょうか。最後に、勤怠管理システムの選び方として4つのポイントを紹介します。
自社の働き方や勤務ルールに合っているか
自社の働き方や勤務ルールに合っているかどうかは、勤怠管理システムを選定するうえで最も重要なポイントです。企業独自の勤務ルールを設けているケースもあるので、まずは自社の働き方や勤務ルールなどに対応できるかを確認する必要があります。
テレワークや外出先に直行・直帰がある場合は、自社のパソコン以外のデバイスからも打刻できる方法があると便利でしょう。外国人従業員がいる場合は、英語表示や多言語表示の機能があるものを選べば安心です。
夜間労働やフレックス制、時短勤務、アルバイトなどさまざまな勤務形態がある場合は、それぞれの勤務形態に対応しているものを選びましょう。
直感的に操作しやすいか
直感的に操作できるかどうかも、勤怠管理システムを選定するうえでの重要なポイントです。操作が難しい勤怠管理システムを選んでしまうと、かえって業務に支障をきたすおそれがあります。
導入する前に打刻方法や操作性、画面表示の見やすさなど、細部にいたるまで不便なく使えるかどうかを検証しましょう。また、勤務状況の確認や集計が簡単にできるかなども確認する必要があります。
全従業員が使用するため、誰が使用しても問題なく使えるものを選びましょう。
カスタマイズはどこまでできるか
次に、勤怠管理システムのカスタマイズはどこまでできるかを確認する必要があります。カスタマイズできる範囲はシステムごとに異なり、サービス内容もさまざまです。
オンプレミス型の勤怠管理システムは、自社に適した形にカスタマイズしてもらえるため、自社に必要な機能のみを取り入れられます。クラウド型の勤怠管理システムはカスタマイズ対応ができないか、もしくは対応できても有料の場合が少なくありません。
導入後のサポートは充実しているか
導入後のサポートの充実度も重要なポイントです。特に勤怠管理システムを導入したばかりの頃は、操作方法や機能についての問い合わせが必要になることが予想されます。
問い合わせ方法は、メール、問い合わせフォーム、電話、遠隔操作などサービスによって異なります。導入に不安がある場合は不具合が起こったときのことも考慮し、サポートがしっかりしている勤怠管理システムを選ぶと良いでしょう。
まとめ
本記事では勤怠管理システムについて、その概要や導入のメリット、デメリット、そしておすすめの勤怠管理システムなどを解説しました。勤怠管理システムの導入により、煩雑な勤怠管理業務を大幅に効率化できます。
自社にも勤怠管理システムを導入したいとお考えの場合は、今回紹介した選ぶポイントなどを参考に比較検討してみてはいかがでしょうか。初めて勤怠管理システムを導入する場合は、特に導入後のサポートの充実度を事前に確認しておきましょう。