新型コロナ騒動により、テレワークが推奨されて久しいですよね。通勤時間がなくなったり、仕事とプライベートの両立がしやすくなったりというメリットの一方、オフィスに出社しないことで難しさを感じる点も。
経理においては紙書類の処理や管理が特にネックになりやすく、どうしても出社しなければならない日もあります。
では、こういった現状を解消し、出社を減らすにはどうすれば良いのか?本記事では紙以外の課題も交えながら対処法を紹介します。
経理業務のテレワーク┃現状はどうなってる?
出典:内閣府/新型コロナウイルス感染症の影響下における 生活意識・行動の変化に関する調査
内閣府の調査によると、コロナ禍においてテレワークを実施した企業は、全体の34.5%でした。ただ、勤務の50%以上がテレワークという、テレワーク中心の企業となると21.5%に留まります。
大半の企業にとっては、何らかの理由で出勤せざるを得ないのが現状というわけです。また「特に実施していない」と答えた企業が41%もあり、そもそも勤務形態を変えることの難しさも伺えます。
経理業務のテレワークによくある課題
出典:同上
テレワークの導入を阻む要因は何なのか?
上のグラフは部署を問わずの調査ですが、経理に当てはまる点ばかりではないでしょうか。それぞれ詳しく見ていきましょう。
社内での意思決定の仕方
改善が必要なこととして最も多く挙がったのは「社内での意思決定の仕方」でした。従業員同士のコミュニケーションですね。
例えば、領収書について質問があったとしましょう。オフィスであれば口頭ですぐ済みますが、テレワークだとメールやチャットの手間がかかる上、文章だけですべて伝えきらなければなりません。
また、職場で何気なく交わされる雑談は気分転換になり、業務に戻った時の集中力アップにつながります。しかしテレワークでは、雑談の機会がなかなかありません。
コミュニケーションの体制に難があると、迅速な業務処理や意思決定に差し障ります。この点が、テレワーク推進の大きな障壁になっているのです。
ペーパーレス化
改善点の上位かつ経理への影響も大きいのが「ペーパーレス化」です。
経理の現場では、請求書や領収書、経費精算申請書類、保険関連書類など、何かと紙の書類を扱いますよね。紙のままだと、テレワークで処理したり管理したりするのが難しくなります。
したがって、書類をPDFなどのデータに移行する=ペーパーレス化が必要になるのですが、取引先が対応していなかったりするため、思うようにできないのが現状です。
社内システムへのアクセス
社内システムへのアクセスに付きまとうのが、セキュリティリスクです。
オフィス外からシステムを扱うわけですから、外部攻撃からの防御性には最新の注意を払わねばなりません。これはアクセス用システムだけでなく、従業員が扱うメールやファイル等も対象になります。
OSやセキュリティソフトを最新版に保ち、ウイルスやマルウェアに感染した端末を検知して遮断する仕組みを整えるのが重要です。
社外との意思疎通の仕方
社内だけでなく、社外との意思疎通も課題です。
顧客や取引先と直接会うために出勤、オフィスに電話がかかってきて応対できないといったことは、テレワークに頻出です。どうしても相手に合わせる必要があるのはネックといえますね。
社内外の押印文化
契約書や請求書へハンコを押すためだけに、わざわざ出社しなければならない……。
押印文化が残るとテレワークの推進はできません。上司のハンコがなかなかもらえず、書類の承認が送れるのも痛いですね。
ただ、政府が脱ハンコを進めているように、今は国内全体で改革が進んでいます。特にIT業界において活発で、契約書をすべて電子化するなどの動きが多く取り入れられています。
経理業務のテレワーク┃課題を解決する方法
ここからは、上記の課題をいかにして解決するか、その方法を紹介していきます。
コミュニケーション:①チャットツールを導入する
コミュニケーションの問題に対しては、チャットツールを導入するのが有効です。
リアルタイムに連絡を取り合えますし、メールのような堅苦しい前書きは不要で、同時に多人数と会話できます。ファイルの添付や外部サービスとの連携も可能とあって、メールよりもコミュニケーションの効率がアップします。
社内だけでなく、顧客や取引先もチャットツールに招待できると、意思疎通は一層とりやすくなるでしょう。
主なサービスは「Slack」「Chatwork」「Microsoft Teams」など。
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ビジネスチャットツール8種を比較!社内外のコミュニケーションを円滑に進めよう
電話:クラウドBPXを導入する
電話の問題には、クラウドBPXが有効です。
クラウドBPXとは、従来はオフィスに置いていたBPX(電話交換機)をクラウド化し、ネット上でビジネスフォンの機能を使えるようにするサービスのこと。PCやスマホで内線・外線・転送等が利用できるため、テレワークと同時に導入する企業が増えています。
主なサービスは、NTTの「Arcstar Smart PBX」やクラウドテレコムの「モバビジ」など。
ペーパーレス化:会計ツールや請求書発行ツールを導入する
経理のペーパーレス化には、会計ツールや請求書発行ツールが欠かせません。
日々の記帳や書類作成にかかる手間やミスを大幅に減らせますし、作業スピードも段違いです。後から確認する際にも一瞬でデータを検索できます。
これらのツールは、テレワークではクラウド型がおすすめです。PCにインストールする必要がなく、高度なセキュリティ性も有します。
主な会計ツール:freee、マネーフォワード
主な請求書発行ツール:Misoca、Board
*会計ツールで請求書発行もできます
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おすすめの請求書作成ツール7選!無料ツールも紹介
押印の見直し:電子署名や電子印鑑を導入する
電子データへの押印には電子署名や電子印鑑がおすすめ。
印鑑に代わる書類の真実性の証明になり、もちろん法的効力も持ってます。特に、社内文書に対してのハンコに導入しやすいですね。
ただ、取引先によっては従来の押印を求めてくるかもしれません。完全な脱ハンコは難しいと思いますが、ハンコのために出社するのを減らすことはできます。
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セキュリティ対策
テレワーク中の情報流出を防ぐには、以下のような対策が有効です。
・重要なデータやWebページにパスワードを設定する
・Web会議用のURLは公開しない
・データをプライベートなストレージに保存しない
・OSや各種ソフトウェアを最新の状態に保つ
・セキュリティの甘い公共Wi-Fiを使わない
・USBメモリやSDカードの不必要な持ち出しを禁止する
・マルウェアに感染した端末を自動遮断するシステムを整備する
・VPNを利用する
・リモートワークのルール整備と周知を徹底する
100%の安全というのは存在しませんが、リスクを可能な限り低くすることが大切になります。
まとめ
今回は経理のテレワークについて、現状や課題、解決方法などを解説してきました。
環境やルールの整備は大変ですが、適応できればオフィスにいる時と変わらない効率で業務に取り組めます。顧客や取引先の事情によっては完全テレワークとまでいかないかもしれませんが、出社日数を減らすことは確実にできるのです。
ぜひ本記事を参考に、経理のテレワーク化を進めていただければと思います。