企業向け緊急連絡網の作り方とは?内容やポイント、ツールなども解説

災害やトラブルなどの緊急事態が発生した際に、安全確認や対応指示を迅速に行うには、緊急連絡網を準備しておく必要があります。中には学校で緊急連絡網を利用した経験がある方もいるのではないでしょうか?

企業に緊急連絡網の作成義務はありませんが、災害の多い日本ではBCP対策の一環として企業でも準備しておくべきです。本記事では、企業向け緊急連絡網の内容や作り方、ポイントについて紹介します。

緊急連絡網とは?

緊急連絡網とは、災害やトラブルなど緊急事態が発生した際に利用するものです。従業員へ効率的に連絡するために、あらかじめ従業員の連絡先や連絡する順番、連絡方法などを取りまとめておきます。緊急連絡網を準備しておくことは、BCP(事業継続計画)の強化につながるのです。

緊急連絡の内容として、従業員の安全確認や災害発生時の対応指示などが挙げられます。以前は電話を利用し、連絡を受け取った人が次の人に連絡する方法が主流でした。

しかし、現在はメールやSNSなどさまざまなサービスを活用して、1人が全体へ一斉周知する場合が多いです。

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緊急連絡網を使うタイミング

緊急連絡網を使うタイミングは企業によって多少異なりますが、一般的に以下のシチュエーションが挙げられます。

  • 地震や台風などの自然災害が発生した場合
  • 自社内で事故が発生した場合
  • リコールや個人情報流出などのトラブル

緊急連絡網における主な連絡ツール

次に、緊急連絡網における主な連絡ツールを紹介します。

メール

メールの一斉送信を利用することで、多くの従業員に一斉周知できます。メールは文字数制限がなく長文で情報を伝えられるので、連絡内容を正確に詳しく共有したい場合に有効です。

また、文章なので受信した側は連絡内容を何度も読み返すことができます。しかし、災害発生時はサーバーが混雑するため、メールの送受信の遅れなどが発生することが懸念点です。

さらに、メールはプライベートでも利用するため、メールアドレスの変更や数多くのメルマガに混ざってしまうなど、さまざまな理由でメールを読まれない可能性もあります。加えて、メールには既読機能がないので、受信した側が読んだかどうかを確かめられません。

SMS

SMS(ショートメッセージサービス)は、連絡したい相手の電話番号が分かれば、メッセージを送ることができるサービスです。SMSはメールよりも開封率が高く、電話番号はメールアドレスのように変更される可能性が低いので、より確実に従業員へ連絡内容を伝えられます。

また、SMS配信サービスを利用すればメールと同様に一斉送信が可能です。さらに、SMSは災害時でも比較的連絡がとりやすいので、緊急連絡網の連絡ツールとして有効です。しかし、SMSは文字数制限があり長文が送れないので、内容を簡潔にまとめる必要があります。画像は送れませんが、URLを挿入することは可能です。

このため、詳細な内容を伝えたい場合は、URLのリンク先で画像を添付するなどの工夫が必要になります。

電話

電話は従来の緊急連絡網における主な連絡ツールとして利用されてきました。電話は、連絡に気づいてもらえる可能性が高いことや、連絡内容を口頭で伝えられることが特徴です。

電話に出れば確実に連絡内容を伝えられ、安否確認や連絡内容に関する質問も容易にできます。しかし、自然災害などが発生した際は、被災地への電話の集中などにより通信回線が混雑し、電話が繋がりにくくなる可能性があります。

また、電話は1対1での通話が基本のため一斉送信ができません。一人一人に電話をかける必要があり、手間がかかる上に情報の伝達が遅れてしまうリスクがあります。

SNS

LINEやFacebookなどのSNSは、グループ機能を利用して各部門や各チームでグループを作成しておけば、メッセージを一斉送信できます。LINEは既読表示機能があるため、メッセージを読んだ人数を把握でき、安否確認の手段としても有効です。

しかし、自然災害などが発生した際にサービスの利用者が集中すると、システムが停止する可能性があります。また、SNSは気軽に利用できますが、プライベートと仕事を混同することになるため、運用には工夫が必要でしょう。

専用のシステムやアプリ

専用のシステムやアプリは、緊急事態を想定して作られています。自然災害などの緊急事態でも、スムーズで適切な対応がとりやすいのがメリットです。サービスによって異なりますが、基本的には一斉送信や安否確認機能などが搭載されており、災害状況に応じた指示の内容を細かく設定できます。

しかし、専用のシステムやアプリを導入する際はコストがかかります。また、オンプレミス型で自社に設置している場合など、システムの管理体制によっては、災害時に機器故障やサーバーダウンといったトラブルで利用できなくなる可能性があります。

安否確認システムを選定する際は、機能だけでなく自然災害などが発生しても安定して稼働するかなど、よく検討した上で利用するシステムを選ぶとよいでしょう。

緊急連絡網の作り方

ここでは、緊急連絡網の作り方を紹介します。

①発動条件を定める

まず、緊急連絡網を使う場合の状況を明確にしておく必要があります。緊急連絡網の発動条件には、主に「内的要因」「外的要因」の2種類が挙げられます。

内的要因

内的要因は、危機管理本部長が緊急事態と判断し指示を出すことで、緊急連絡が行われるケースです。一般的に、危機管理本部長は社長が務めます。

自然災害の場合は迅速に連絡を回す必要があるため、責任者だけでなく補佐を任命し、責任者が不在の際は補佐が判断するように決めておく必要があります。

外的要因

外的要因は、気象庁が発表する震度や警報、特別警報に従って、緊急連絡を発動させるケースです。例えば、大雨・洪水特別警報の発令や震度5以上の観測などが挙げられます。

あらかじめ発動条件について明確なルールを定め、会社全体で共有しておくことで緊急事態でも迷いなく迅速な対応ができます。

②運用責任者や応答の取りまとめ役、最終報告者などを決める

次に、運用責任者や応答の取りまとめ役、最終報告者などを決定します。緊急連絡網の発動後にどのような作業が必要なのか、作業内容を明確化して担当者を決めておくことが重要です。

例えば、緊急連絡の伝達のほかに、従業員の安否確認や出社の可否などの取りまとめなどが挙げられます。

③連絡手段を決める

上述したように、緊急連絡網における連絡ツールはいくつかの種類があります。それぞれのメリット・デメリットを押さえ、自社に適した方法を取り入れるとよいでしょう。

ただし、緊急連絡網における連絡手段を1つに絞っていると、緊急時にトラブルで利用できず、スムーズに連絡できない可能性もあります。緊急連絡網における連絡手段は、複数用意しておくことが重要です。

④連絡先をリスト化する

次に、従業員の連絡先をリスト化することが必要です。停電が起こった場合やオフィス以外の場所で被災した場合、使用できる連絡ツールが限定される可能性があります。

このため、緊急連絡先は1つではなく、電話番号やメールアドレスなど複数の連絡先を登録してもらいましょう。緊急連絡先には個人情報が記載されているため、セキュリティには十分注意しなければなりません。

⑤連絡の順番を決める

緊急連絡網における連絡ツールがメールやSMSの場合は一斉送信が可能ですが、電話の場合は連絡する順番を決める必要があります。一般的に、本部から各部署、各担当者などへ連絡する順番になります。

⑥イレギュラー対応の方法を決める

緊急時の対策を行っていても、想定外の事態が発生する可能性があります。そのため、想定外の事態が発生した場合の対応方法を前もって決めておくことも大切です。

例えば、連絡のつかない人には30分に1回連絡する、連絡がついていないことを安否確認担当者に報告するなどの明確なルールを決めておきましょう。

緊急連絡網作成のポイント・注意点

最後に、緊急連絡網作成のポイント・注意点を紹介します。

事前に従業員の同意を得ること

緊急連絡網には、仕事上の連絡先だけでなくプライベートの連絡先も含めた個人情報を記載しなけれなりません。そのため、導入する前に目的や利用用途を説明し、従業員の同意を得ることが必要です。

トラブルを防ぐためにも、従業員の個人情報の取り扱いに注意しましょう。

情報漏洩対策を講じること

緊急連絡網に記載されている氏名や電話番号、メールアドレスは個人情報保護法上の個人情報に該当します。緊急連絡網が流出・悪用されないように情報漏洩対策を講じることが重要です。

セキュリティソフトの導入や更新、情報の持ち出しについてのルールも作成しておきましょう。

定期的にテスト運用をすること

緊急時に緊急連絡網を有効に機能させるためには、従業員がその使い方に慣れておく必要があります。緊急連絡網を作成したら、定期的にテスト運用を行いましょう。

実際に災害が起きたと想定してテスト運用を行うことで、連絡が行き渡るか、連絡先が最新かを確認できます。テスト運用で一連の流れを通して、運用に問題がないかどうか確認することが大切です。

まとめ

本記事では、企業向け緊急連絡網の内容や作り方、ポイントについて紹介しました。緊急連絡網の作成が義務付けられているわけではありませんが、企業が緊急連絡網を準備しておくことは、自社の従業員の安全を守ることやBCP(事業継続計画)の強化につながります。

緊急連絡網における連絡ツールはさまざまありますが、ツールによって特徴が異なるため、本記事を参考に自社に適した連絡ツールを利用しましょう。