Googleが使う目標管理手法「OKR」とは?概要やKPI・MBOとの違い、設定方法を簡単に解説

Googleやメルカリなど国内外の著名企業が採用する「OKR」は、新しい目標管理手法として注目されています。

国内でも導入を検討する企業が増えていますが、そもそもOKRの特徴や効果・導入メリットについて、理解できていない方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、OKRの概要からメリット、効果、KPI・MBOとの違いについて解説していきます。OKRが組織の中でどのように機能するか、詳しく見ていきましょう。

OKRとは?

OKRは「Objectives and Key Results」の略で、目的・目標(Objectives)と3〜5個の成果指標(Key Results)でできています。定性的な目標を設定し、数値で表される成果指標を併せ持つ、目標管理手法です。

ここでいう目標(O)とは、「どうしたらワクワクして取り組めるのか」といったモチベーションを高めるような状態や姿を意味します。そしてどのような状態になれば、目標を達成できたのか、定量的な数値で管理する成果指標(KR)が含まれているのが、OKRです。

企業はビジョンやミッションを掲げ、共通の目的を持っています。しかし、それは長期的なもので、達成した状態やどうすれば到達できるのか、個々でイメージしづらいことがネックです。

OKRを採用すれば、「何を目指し、どうなりたいのか」という共通の認識を持ち、働く意欲や生産性を高められます。

もともとはアメリカのIntel社でスタートし、シリコンバレーのさまざまな企業に採用されていることで、世界中から注目されている手法です。

OKRの設定方法~OとKR~

前述のとおり、OKRは「O」と「KR」の2要素に分割されます。それぞれの詳細を見ていきましょう。

O:Objectives

上述したとおり、OKRのO(Objectives)は、定性的な目標を意味します。モチベーションが上がり、60〜70%の達成が予想されるチャレンジ性の高いものを掲げましょう。

ポイントは、数字で示す定量的な指標は入れないことです。また、チームとして実現可能なものを設定し、1〜4ヶ月内の短期間に達成できるものがベストです。

例えば、「過去最高の受注数を獲得する」「日本一の情報メディアに成長させる」「業界シェアNO.1になる」などです。

KR:Key Results

KR(Key Results)は、どのような状態になれば目標(O)を達成できたといえるのかを、定量的に設定します。

目標を決めてそこに向かって取り組んでいても指標がなければ、「どこまでやれば達成になるのだろう」「いつまで続けるつもり?」といった疑問や不満が生じます。

そこで、難しいけれど不可能ではないようなストレッチのかかった数値を設定し、指標としましょう。

例えば、先ほどのOで設定した目標「過去最高の売上を獲得する」のKRは、下記のようなものです。一つのOに対し、3つほどのKRを決めます。

  • 3ヶ月で〇〇万円達成する
  • SNSのフォロワー〇〇人超え
  • 新規商談数100件以上

このように具体的で、追いかけやすい数値を示すことが大切です。

OKRの運用フロー

OKRを会社全体で取り組む場合は、初めに組織全体のOKRを設定し、チーム、個人の順に決定していきます。

下記で運用フローをチェックしてみましょう。

組織全体のOKRを設定する

まずはトップOKRと呼ばれる、組織全体のOKRを設定します。

3〜4ヶ月で会社がどのような姿になっていたいか、O(Objectives)を決めましょう。この際、従業員にも理解しやすく、ワクワクするような言葉を選ぶことが重要です。

定性的な目標を設定できたら、その達成度をはかるための定量目標を3〜5個設定します。

チーム単位のOKRを設定する

続いて、それぞれのチーム単位でOKRを設定します。設定方法は、これまで解説してきた方法と同じです。

チームで達成できそうな目標(O)を設定し、それに付随する定量的な指標(KR)を設定します。部署によっては、KRがトップOKRと同じになることもありますが問題ありません。

《具体例》
トップOKR
目標(O):業界シェアNO.1を目指す
KR:売上を〇〇%アップ

チームOKR
目標(O):過去最高の受注数を獲得する
KR①:売上を〇〇%アップ
KR②:新規アポ数〇〇件獲得
KR③:商談150件

上記のように、トップOKRの目標(O)が、「業界シェアNO.1を目指す」で、定量目標(KR)が「売上を〇〇%アップ」とします。営業部では、このKRをそのまま使用しても構わないということです。

個人単位のOKRを設定する

続いて、個人単位のOKRを設定しましょう。

上司との1on1ミーティングやメンバーと相談しながら、1人あたり2〜4個程度の目標設定をします。この際、上司が頭ごなしに決めることは避け、現場社員の声を吸い上げることも大切です。

OKRは目標を可視化し、モチベーションアップの目的があります。
社員が目標を達成するために、ワクワクして主体的に動けるようなものを設定しましょう。

週1~月1程度で中間レビューを行う

OKRを設定したら、設定したOKRの進捗を管理するため、週1〜月1単位で中間レビューを行いましょう。OKRの進捗情報を共有し、達成見込みを確認します。

ただ進捗を管理するだけでは、目標達成や成長は見込めません。社員を巻き込むように1on1ミーティングやチームミーティングを行い、しっかり振り返りをすることが大切です。

トップOKRから個人OKRまでを可視化し、フィードバックや立て直しを行いましょう。

四半期~半年を目処に最終レビューを行う

OKRは短期間の目標を管理するものなので、四半期〜半年を目処に最終レビューを行います。

OKRの目的は、具体的な数字が決まっているKPIやMBOと違い、「ワクワクを組織全体で追いかけられること」です。最終レビューは個人の責任追及ではなく、チームや組織の問題解決の場と考えましょう。

多くのメンバーが意見を出し合い協力し、同じ方向を向くことで組織は強くなっていきます。四半期の最終レビューを参考に、ブラッシュアップを重ねて自社のOKRを磨き上げましょう。

OKR導入の効果・メリット

OKRを導入するとどのような効果やメリットを得られるのでしょうか。
下記で解説します。

組織全体の方向性を統一できる

OKR最大のメリットは、組織全体の方向性を統一できることです。会社と個人の向いている方向性、すなわちベクトルを揃えることは強い組織づくりに欠かせません。

しかし、会社は規模が大きくなるほど方向性やビジョンの共有が難しくなり、意志にばらつきが生まれます。
そこで目標と成果指標の2つの要素からなるOKRを導入すれば、会社・チーム・個人の方向性を設計段階から一致させられます。

取り組みの優先順位づけがしやすくなる

OKRを導入すると目標・目的が明確になるため、今自分が何をすべきか取り組みの優先順位がつけやすくなることもメリットです。

日々の業務の中で、目標を達成するための動きを意識し、優先順位を整理して仕事に取り組むと、業務効率や生産性の向上が見込めます。

無駄な残業が減れば自分や家族との時間が増え、仕事のモチベーション低下を防ぐことに繋がるでしょう。

こまめなレビューにより、軌道修正が容易になる

OKRでは週1〜月1回、上司との1on1ミーティングやチームミーティングを行います。こまめにレビューを行うことで、定期的な分析を行うことが可能になり、軌道修正や立て直しも容易です。

立て直しで作られる次の行動が次の指標となるため、タスクが常に最新の状態にアップデートされ、効率的に業務を改善できます。

失敗するOKRの特徴

OKRを導入したものの、うまくいかない…と悩む企業は少なくありません。

ここから失敗するOKRの特徴を解説しますので、当てはまるものがないかチェックしておきましょう。

目標が簡単すぎるor難しすぎる

設定する目標がすぐに達成できるものは、モチベーションアップに繋がりません。逆に、達成難易度が高すぎるものも、やる気を削いでしまうでしょう。

OKRでは、挑戦的で魅力的なストレッチの効いた目標を設定することが求められます。目標は、自信度が5割ほどで70%の達成度が見込めるものがベストです。

そもそも目標が現実にそぐわない

目標が現実にそぐわず、壮大すぎると共感を得られません。
「どうせまた未達成で終わる」「夢物語ばかり語っている」など、組織全体が諦めムードになってしまいます。

特に苦境に立たされている企業の場合、社員が高い目標を設定するまでの心理状態ではありません。まずは現実的に達成できるようなスモールゴールを掲げ、成功体験を重ねることで自信と勢いをつけましょう。

目標の共有ができていない

OKRを設定したものの「忙しさでレビューの場が少ない」「1on1はあるけどチームミーティングがない」という状況は、目標の共有がうまくいきません。組織内で何が起こっているのかわからない状況は、不信感が芽生える原因になります。

このようなケースでは、OKRの「同じ方向性を向いて取り組む」というメリットを得られないでしょう。

一方で、目標や考え方が可視化できている状態は、不信や不満が生じにくく不安が解消されます。OKRを設定したら、コミュニケーションの場を定期的に設け、情報共有を徹底しましょう。

目標の数が多すぎて混乱する

達成する目標が多すぎると、何を優先していいのかわからなくなり現場に混乱が生じます。

上述したようにOKRで設定する定量的な指標(KR)は、3〜5個が理想的です。社員に過度な負担がかからないよう、目標の数には注意しましょう。

目標達成度を人事評価の基準に用いてしまう

OKRを人事評価に用いる場合、目標達成度を個々の報酬に反映させることにしてしまうと本来の目的とはずれが生じます。

OKRの目的は、目標の可視化、共有、モチベーションアップを図り、業績を伸ばすことです。もし目標達成度を人事評価の基準にすれば、管理職や社員が目標を低く設定する可能性も出てくるでしょう。これでは本末転倒です。

人事評価にOKRを取り入れる場合は、目標の実現にどれほど貢献したかという部分を評価基準としましょう。

OKRとKPI・MBOの違い

「OKRもKPIも指標を決めるのは一緒では?」「目標管理ならMBOも同じでは?」など、OKRとKPI・MBOの違いに混乱する方もいるでしょう。

どれも意味が似通ってしまうため、どう差別化していいのかわかりません。本項ではそれぞれの違いを解説していきます。

OKRとKPIの違い

OKRとKPIが決定的に違うのは、目標の達成率です。OKRの達成率が60〜70%に対し、KPIは100%を目指します。

《OKRとKPIの違い》

OKR KPI
目的 目標を可視化、共有、モチベーションアップ 最終目標を達成するための指標
達成度 60~70% 100%
取り組み範囲 会社全体 チーム内
期間 1〜3ヶ月 プロジェクトごと

OKRの目的は、野心的な目標を会社全体で共有し、同じ方向性を向いて達成を目指すことです。

一方、KPIはプロジェクトごとに設定され、目標に対する達成度をはかる指標を意味します。例えば、「1ヶ月で100本のアポを取る」のようなものです。

OKRの目的が「業界シェアNO.1を目指す」だとしたら、「1ヶ月で100本のアポを取る」というKPIは、OKRの一部となります。

OKRとMBOの違い

MBOは「Management By Objectives」の略で、MBO評価とも呼ばれています。

企業が掲げる目標を達成すべく、社員それぞれが目標を設定し、進捗を管理しながら生産性を高める方法です。MBOは長期的な視点で目標を管理し、従業員の評価に利用されます。

一方でOKRは、短期的な目標を社内全体で共有し、軌道修正を繰り返しながら運営し、個々の報酬に影響がありません(一部評価に組み込まれることもあり)。

《OKRとMBOの違い》

OKR KPI
目的 目標を可視化、共有、モチベーションアップ 生産性の向上や業績アップ、人事評価の利用
達成度 60~70% 100%
個人目標を共有する範囲 会社全体 限られた社員
期間 1〜3ヶ月 半年~1年に1回程度

【関連記事】
MBO(目標管理制度)とは?意味や導入手順、運用のコツなどをわかりやすく解説

効果的なOKR運用にはツール導入もおすすめ

最近はリモートワークを導入する企業も増え、OKRを設定してもコミュニケーション不足の影響から「OKRをうまく運用できない」「モチベーションの維持が難しい」との声も多くなりました。

そもそもOKRは目標管理や情報共有などの運用工数が多く、担当者の負担が大きくなる点がデメリットです。管理が煩雑になると、いい効果を得られません。

そこで活用したいのが、OKRツールです。

OKRツールを活用すれば、OKRの導入がスムーズになったり社員同士のコミュニケーションが活性化したり、運用が円滑になります。

おすすめのOKRツールは下記のようなものです。

ツール名 特徴 料金
HRBrain 人材データ活用・タレントマネジメントまで、人事業務の効率化や組織づくりをサポート。専任サポートを無料で利用できるので初めての目標管理システム導入におすすめ。 参考価格69,800円〜
Resily 透明性の高い目標設定を実現でき、進捗管理の効率性が高い。カード・ツリー形式で見える化できる。 要問い合わせ
WAKUAS 1on1を中軸とし、目標およびその進捗状況を共有可能。社員の投稿にコメントしたりいいねしたりとSNSのような使い方ができる。コミュニケーションが増える。 月額50,000円〜

まとめ

OKRはグローバル社会において、これからますます注目される目標管理手法です。

高い目標に会社全体でチャレンジしていくことで、組織力の強化や生産性の向上が期待できます。しかし、人事評価に導入するには、デメリットもあるためOKRのツールの活用を検討する必要があります。

OKRツールを導入すれば、社員間のコミュニケーションが増えたり効率的な情報共有が見込めます。また、人事評価についてのサポートも受けられるため便利です。

本記事を参考に、ぜひ自社に適したOKRツールを選んでみてください。