ペーパーレス化とは?必要性やメリット・デメリット、問題点などを解説

「働き方改革」の一環として政府が提唱したペーパーレス化。紙の使用を減らすことで、業務効率改善やコスト削減、環境保護などさまざまなメリットを得られます。また、テレワークの普及によりペーパーレス化の必要性が高まる中、導入する企業も増えてきました。

とはいえ、紙からデータへの移行で起こるデメリットや問題点が気になり、なかなか踏み出せない方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事ではペーパーレス化の概要と必要性、メリット・デメリット、問題点のほか、具体事例などを詳しく解説していきます。

ペーパーレス化とは?~会社に求められる背景~

ペーパーレス化とは、ビジネスにおけるあらゆる文書を電子化する取り組みを意味します。

紙をなくすこと自体は手段であり、目的ではありません。ペーパーレス化の目的は、業務効率の向上、コスト削減、環境保護、そして多様な働き方の実現などです。

冒頭でもお話しした通り、働き方改革の一環として国もペーパーレス化を推進しています。「e-文書法」や「電子帳簿保存法」により、これまで紙での保存が義務付けられていた書類の電子保存が認められるようになりました。紙で保管するスペースも手間も費用も必要なくなったのです。

また、ペーパーレス化を推進することで、積極的に環境保全へ取り組んでいるとアピールにでき、企業価値向上にもつながります。

ペーパーレス化のメリット

次に、ペーパーレス化で得られる業務上のメリットを解説します。

文書の管理や検索が容易になる

1つめのメリットは、文書の管理や検索が容易になること。

紙文書だと破れたり劣化したりするため、長期の管理が難しい場合があります。また、閲覧の際には保管場所へ向かい、膨大なファイルの中から人の手を使って探さなければなりません。きちんと整理できていればまだ良いですが、そうでないと「あの書類が見当たらない」といった問題が生じます。

「この書類の場所は〇〇さんじゃないとわからない」と属人化されている状態もしばしば見られ、これにより業務効率が落ちてしまうケースも。

一方、電子データならこのような問題は起きません。データの破損はそう簡単には起きませんし、必要なデータを検索機能ですぐに見つけ出せます。

保管スペースが必要なくなる

2つめのメリットは、書類の保管スペースが不要になること。

請求書や領収書、契約書などは、法令により7年間の保管が義務付けられています。これを紙で行うと、けっこうな大きさの保管場所がいるでしょう。

筆者が以前取引していた会社では、一部屋がダンボールで埋まっていました。てっきり中身は商品だと思っていましたが、後で聞くとなんと7年分の帳簿書類。「これがなければ部屋をもっと有効活用できるのに……」と話していたのが印象に残っています。

その点、ペーパーレスなら解決できますね。文書をHDDやクラウドへまとめて保存すれば、保管スペースはPC1台分で済みます。

紙代や印刷代を削減できる

紙代や印刷代の削減も、ペーパーレス化の大きなメリットです。

紙の書類には意外にも多くの経費がかかります。紙やインクの費用はもちろん、印刷機器のリース料やメンテナンス料、保管のためのファイル代やキャビネット代、これらのファイリングやコピーに携わる人件費などです。

ペーパーレスだと上記の費用の大半がかかりません。たしかに初期費用は必要ですが、トータルのランニングコストを大幅に減らせるのです。

情報共有がしやすくなる

電子化された文書だと、情報共有しやすくなるのも利点です。

紙の場合は、直接会って渡すか郵送するかしなければなりません。複数人と共有する場合はコピーの手間もかかりますよね。

一方、電子データならクラウドで共有したりメールに添付したりして、労力をかけることなくやりとりが可能です。複数人への配布も一瞬で完了しますし、テレワークにも最適です。

また最近は、顧客へのカタログ送付も電子ファイルで行う企業が増加し、営業効率も上がっているといいます。

このように、ペーパーレス化は社内外問わず情報共有に適しているのです。

紛失や劣化のリスクを減らせる

ペーパーレス化は、重要資料の紛失や劣化によるリスクを減らし、災害や火災・テロなどからデータを守るBCP(事業継続計画)対策にも有効です。

紙文書での保管は、紛失や火災・水害のリスクが大きく、経年劣化で読めなくなることも少なくありません。重要資料を喪失すれば、事業資産の損害につながります。特に中小企業は経営基盤が脆弱なため、顧客リストや契約書といった重要書類の紛失が決定的なダメージになることも。

ペーパーレス化にはその心配がありません。バックアップを取っておけば、万が一パソコンが故障したとしても重要書類を保護できます。

ペーパーレス化のデメリット・問題点

ペーパーレス化には多くのメリットがありますが、当然デメリットも理解しておかなければなりません。導入に向けて、どのような問題点があるかチェックしておきましょう。

投資や導入にコストがかかる

ペーパーレス化のデメリットのひとつは、導入にコストがかかることです。

導入初期には、ペーパーレス化のためのツールや電子資料を読むための端末、データを保管するストレージといったものの費用を要します。さらに、端末の使い方やデータの運用・保管方法を社員に教育するコストも必要です。

もちろん長期的に見ればランニングコストを抑えられるメリットの方が大きいものの、初期費用がかかるのは念頭に置いておきましょう。

ペーパーレス化に対応していない取引先もある

紙ベースでの契約を希望する取引先は、まだまだ多いのが現状です。「請求書や契約書は紙書類でお願いします」「ペーパーレスには対応していません」このように言われることも多々あるでしょう。

政府が推進しているとはいえ、まだまだ多くの企業で足並みが揃っていません。これがペーパーレス化が普及しない大きな理由にもなっています。

法律でペーパーレス化が認められない書類がある

法改正により、現在はほとんどの書類の電子化が認められています。しかし、ごく一部の書類はペーパーレス化が認められていません。

代表的な書類は下記のようなものです。

・不動産取引における媒介契約書、重要事項説明書
・定期宅建賃貸借契約書
・任意後見契約書

ただし、これらについても政府が法改正を検討中です。そう遠くないうちに電子データでのやりとりが可能になるとみられます。

ペーパーレス化の事例

ここからは、ペーパーレス化に成功した事例を紹介します。

青森県弘前市役所

青森県弘前市役所では、以前から紙の使用量の削減が課題でした。特に、多くの紙が使用される幹部会議では、資料作りに毎回3時間かかり事務局職員へ大きな負担がかかっていたのです。

そこで課題解決のため、まずは幹部会議をペーパーレス化することに。平成27年度にペーパーレス会議システムを検討し、翌度にはタブレット端末で使えるグループコミュニケーションアプリ「MetaMoJi Share for Business」を導入しました。

このサービスを採用した理由は、職員が普段からタブレットに絵やメモをかける「MetaMoJi Note」を使っており、これに会議機能と資料共有機能が付加されたMetaMoJi Shareなら導入しやすかったからです。

MetaMoJi Shareを使うようになってから、月に2回の幹部会議はペーパーレスで行われています。翌年には会議資料の紙約14,000枚、紙代やトナー代約142,000円の削減に成功。資料準備に伴う工数の減少により人的負担も軽減されています。

弘前市役所では今後、Wi-Fiと有線LANが混在する庁舎内全体でWi-Fiを整備し、どこにいてもMetaMoJi Shareを活用した会議ができるよう計画していきたいとのこと。

社内向け会議はペーパーレス化しやすい分野です。ぜひ参考にしてみてください。

参照:MetaMoJi Share/導入事例 青森県弘前市役所

株式会社良品計画

無印良品でおなじみの株式会社良品計画では、社員の残業が当たり前で、1日のほとんどを社内で過ごすという状態でした。家族との時間や製品作りのための見聞を広げる時間も取れず、余裕のない日々。

この課題を解決すべく実施したのが、業務のマニュアル化と残業削減への取り組みです。以前はマニュアルがなく、全て社員の経験やスキルに頼っていたため、異動や退職で社員がいなくなるたびに業務の再構築が必要でした。

そこで本部業務のマニュアルと店舗の販売マニュアル2種を紙で作成。現行のマニュアルより良いアイデアや逆に問題があれば、本部にパソコンを通じて提案できるようになっています。この本部とのやりとりがほとんどペーパーレスです。本部から現場への指示、現場社員から本部への連絡へもメールを使っています。

この結果、社員の残業時間削減に成功。業務効率化とワークライフバランス推進の効果が得られ課題解決に至っています。

紙と電子データを併用した事例です。業務のすべてをペーパーレス化する必要はなく、部分的な導入でも効果は出るのです。

参照:総務省/業務のマニュアル化・ノー残業に関する取組事例(株式会社良品計画) 

ペーパーレス化を進めるポイント

次に、ペーパーレス化を進めるためのポイントを解説します。

少しずつ導入していく

社内のすべての紙資料を急にペーパーレス化するのは、費用面や教育面を考慮すると難しいですよね。

したがって、一気に電子化を進めるのではなく、ペーパーレス化のハードルが低いものに対象を絞り、段階的に導入していくことをおすすめします。例えば、会議資料や社内文書などから進めると良いでしょう。

【手順の例】
1.ペーパーレス化の目的を明確にする(業務効率化やコスト削減など)
2.対象を決める(進めやすい部分から手をつける)
3.業務フロー策定(既存の業務フローを導入したシステムにうまく整合させる)
4.実行(部分的にペーパーレス化を実行する)
5.評価と改善(実践で見えた課題・問題点を整理し改善)

これらを繰り返し、徐々に範囲を広げ改革していきましょう。

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経営陣や管理職が積極的に取り入れる

ペーパーレス化のような改革は、経営陣主導で導入していくことが大切です。決定権を持つ立場の人間がやらなければ、社内へ浸透しないからです。

今までのやり方から新しいものへ変えることに戸惑い、難色を示す社員もいるでしょう。しかし、経営陣が推進していることなら意識も変わるはず。

まずは、ペーパーレス化でどのようなメリットが得られるかを役員会議などで体感してみてください。

クラウドサービスを活用する

クラウドサービスの活用も検討してみてください。

クラウドサービスは社内のパソコンではなく、インターネット上で利用する情報管理サービスです。パソコンが故障してもクラウド上にあるファイルには何ら影響はありませんし、半永久的に保存可能。自社でサーバーを用意する必要がなく、電子化した情報を置く場所として最適です。

また、ネット環境さえあれば資料の共有・閲覧・編集が場所を問わずでき、テレワークにも対応可能です。

まとめ

本記事ではペーパーレス化について、必要性とメリット・デメリット、成功事例、導入にあたってのポイントなどを解説しました。

紙の使用量を減らすと、業務効率向上・コスト削減・環境保護など、さまざまなメリットが得られます。予期せぬ災害や火事に見舞われても、資産となるデータは安全です。

テレワークの普及により必要性が増しているペーパーレス化。導入初期には多少のコストがかかりますが、業務の一部から徐々に進めることで大きなリスクにはならないはずです。まずは電子化のハードルが低い書類から検討してみてはいかがでしょうか。