派遣と請負は何が違う?メリット・デメリットや委託・委任・嘱託との違いも解説!!

人材雇用において、派遣と請負どちらを選ぶべきか迷っていませんか?

そもそも、派遣と請負は何が違うのでしょうか。委託・委任・嘱託との違いは?など、それぞれのメリット・デメリットがわからず決めかねている方も多いでしょう。

派遣と請負は似ているようで大きな違いがあります。そこを認識しておかなければ、契約後、「思ったより育成コストがかかる」「業務の質にムラが出る」などの問題が生じることも…。

本記事では、派遣と請負の違い、それぞれのメリットデメリットをわかりやすく解説していきます。どちらを選べばいいのかの基準も説明しますので、悩んでいる方はぜひご一読ください。

派遣と請負は何が違う?

まずは派遣と請負の違いを解説します。

派遣とは

派遣とは、企業(発注側)が派遣会社と労働者派遣契約を結び、派遣会社が企業(発注側)へ人材を派遣する方式です。

派遣社員(労働者)は、派遣会社と雇用契約を結ぶため、雇い主は派遣会社です。賃金支払義務、福利厚生は派遣会社にあります。派遣社員(労働者)と派遣先企業は直接の契約関係を持ちません。

とはいえ、指揮命令権は派遣先である企業(発注側)にあります。そして、派遣社員(労働者)は派遣先企業から労務の提供を受ける上下関係です。

簡単に言えば、雇い主は派遣会社ですが、企業(発注側)が派遣社員(労働者)に直接、業務の指示ができる形式ということです。

【派遣のポイント要約】
・企業は派遣会社と労働者派遣契約を結ぶ
・労働者の雇用主は派遣会社
・指揮命令権は派遣先の企業にある
・派遣社員(労働者)と企業は上下関係にある
・契約期間中、契約書にある指示された業務を行うことに報酬を支払う

請負とは

請負とは、企業(発注側)が請負会社と請負契約を結び、請負会社が完成物の納品をする外部委託契約の一つです。

民法632条にはこのように定義されています。「請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。」

派遣は、契約期間中に指示された業務を行うことが目的ですが、請負は成果物を納品することが目的です。成果物が納品されたことを受け報酬を支払います。

労働者の雇い主は請負業者で、指揮命令権も請負業者にありますので、労働者と企業(発注側)の関係は対等です。

【請負のポイント要約】
・企業は請負会社と請負契約を結ぶ
・労働者は請負業者と雇用契約を結ぶ
・指揮命令権は請負会社にある
・労働者と企業は対等な関係
・契約にある完成物を納品することに報酬を支払う

派遣のメリットとデメリット

派遣にはどのようなメリットデメリットがあるか解説します。

メリット:必要なときに必要な人材を活用できる

派遣を活用する大きなメリットは、自社が求める人材を必要なときに必要な期間だけ雇用できることです。

通常、優秀な人材を正社員で雇う場合、人件費プラス雇用保険や社会保険などの保険関連の負担がかかります。人件費は固定費ですから、売り上げが下がった場合、経営を圧迫する恐れがあるでしょう。

派遣であれば、専門性の高い分野の優秀な人材を必要な期間だけ活用し、人件費のコストを削減しつつ、人材不足を解消できます。

例えば、繁忙期や決算時期などは、社員だけでは手が回らず人手不足になりがちです。無理に回そうとするとミスや残業が増え、コア業務に支障をきたしてしまいます。そこで、期間を指定し、派遣社員に定型業務を任せれば、社員はコア業務に集中することができます。

業務の波に合わせて、自社の人材だけではカバーしきれない業務範囲を補えますので、効率的な経営が可能です。

メリット:派遣の業務を自社が直接指揮できる

派遣のもう一つのメリットは、企業が現場で派遣社員に直接指示できることです。

先述したとおり、派遣の指揮命令権は企業にあります。派遣社員に任せる案件は、経理や営業、小売、介護、SEなど、現場で臨機応変に対応する必要のある職種がほとんどです。

このような案件は、突発的な課題や問題が繰り返し起きますが、その都度人材派遣会社を通していては、業務効率が悪くなり、品質にムラや生じるでしょう。

しかし派遣なら、派遣社員と企業は上下関係にあるため、社内業務を把握している社員が指示することで、業務を円滑に進めることが可能です。

デメリット:派遣の管理や教育にコストがかかる

派遣を雇うデメリットは、派遣社員が業務に慣れるまで管理や指導、教育に育成コストがかかることです。

本来、派遣社員の教育は、雇用主である派遣会社が行うものです。しかし、派遣先企業によって業務内容は異なるため、結局は企業側が指示・命令をしながら、派遣社員が自社業務に慣れるよう教育します。

業務だけではなく、服務上の規律や始業終業・休憩の管理も必要です。

数年かけて育成しても、契約期間が終了すれば契約を更新する派遣社員ばかりではありません。新たな派遣社員が入るたびに教育が必要になるため、手間とコストがかかります。

自社で面接して人材を雇用するわけではありませんので、派遣社員の質によっては社員の業務に支障をきたす恐れがあるでしょう。

とはいえ、最近では正社員の平均勤続年数が3年〜5年と言われることも多くなりました。ですから、派遣社員にかける教育コストをデメリットと捉えない経営者も増えています。

デメリット:派遣期間に制限がある

派遣は基本的に有期契約のため、勝手に契約を打ち切ることはもちろん、継続することもできません。

もし「現場の雰囲気に合わないから別の人と入れ替えたい」と思っても、派遣社員に就業の意思があれば、契約を打ち切ることができないのです。また、優秀な契約社員に「このまま働いて欲しい」と思っても、派遣社員に就業の意思がなければ、契約を更新することもできません。

となれば、事前に派遣社員を面接して「自社にマッチした人材を選びたい」と思うかもしれませんが、労働者派遣法により事前面接は禁止されています。ただし、人材派遣会社にスキルや人柄の希望を出すことは可能です。

どんなにコストをかけて教育した人材でも、派遣期間には制限があり企業側の希望だけで契約更新できないのは大きなデメリットと言えるでしょう。

請負のメリットとデメリット

次に、請負のメリットデメリットを確認してみましょう。

メリット:成果に対して費用が発生する

請負は、派遣のように時給制ではないため、人件費のコスト削減を狙いやすいメリットがあります。費用は、請負が納品する成果物ごとに発生しますので、必要なとき、必要な分だけ発注できます。

しかし、求める成果によってはコストが高くなるケースがあり注意が必要です。

例えば、自社でWEBデザイナーを雇用すれば、社員がどれだけWEBサイトを作成しても固定費は同じです。これが請負になると、成果物ごとに費用がかかりますので社員を雇うよりもコストが高くなる可能性があるのです。

人件費削減を目的で請負契約を結ぶ場合、本当にコストダウンになる得るのか…この辺りを
視野に入れ検討する必要があります。

メリット:教育や管理のコストを削減できる

請負は派遣と違い、指揮命令権は請負会社にあります。業務に関して労働者を指示、管理する必要がなく育成コストもかかりません。

専門性の高い分野の業務を丸投げできますので、優秀な人材を教育や管理に手間取ることなく活用できます。社員は、教育への負担が減りコア業務に集中できるため、業務効率もアップするでしょう。

指揮管理する人材がいない、社員が時間を割けないなどの企業には大きなメリットになります。

デメリット:自社で業務を直接指揮できない

請負は、企業(発注側)の指揮命令で業務させることができません。請負の指揮命令は請負会社にあるため、請負労働者に直接指揮できないのです。

自社の業務を依頼しているにも関わらず業務遂行に関する指示ができず、成果物が上がるまで請負業者に任せることになります。もちろん、進捗報告などはあれどどのような業務をしているのか、業務途中の管理ができません。

請負会社のスキルや質によっては、成果物の品質にムラが出てしまいます。

直接指導したいことがあっても、違反すると偽装請負という禁止行為になります。最悪、行政指導や改善命令が下り指導を受けることになりますので注意しましょう。

デメリット:ノウハウを社内に蓄積しにくい

請負は、業務を外部に委託することです。そのため、業務に関する経験やノウハウが蓄積しにくいデメリットがあります。

内製化していれば自社のノウハウになるものでも、請負の場合は全て請負会社に蓄積されます。その代わり、自社ではできない業務を、請負会社が持つスキルを使って遂行できますので、メリットも大きいです。

派遣と委託~委託・委任・嘱託との違いは?~

派遣と並び、似たような言葉で委託・委任・嘱託がありますが、違いが明確にわからない方も多いでしょう。これらについても解説していきます。

委託とは?

委託とは企業(依頼主)が外部の企業や個人に業務を任せる契約です。よく使われる言葉で「業務委託」が有名ですが、民法上業務委託契約という名称はありません。

民法で規定されているのは「請負」「委任(準委任)」「雇用」の3つです。委託は、「請負」と「委任(準委任)」の総称で使われます。

自社で対応できない業務を外部に任せることで、コア業務に専念できるメリットがあります。また、優秀な人材のスキルを自社で育成することなく、必要なときだけ活用できることも魅力です。

一方で、ノウハウが自社に蓄積しない、指揮命令権がないなどのデメリットがあります。

委任とは?

委任とは、法律行為を委託すること。

請負の場合、成果物を完成させるのが目的ですが、委任は業務を遂行するのが目的です。成果物の質や完成度に関して責任を持つ必要がないのです。

わかりやすい職業として、弁護士があります。弁護士との契約は委任契約ですから、裁判で負けても費用は発生します。

専門性の高い業務を依頼できることがメリットですが、成果に関わらず支払いが必要なことがデメリットです。

嘱託とは?

嘱託とは、正社員として雇用しない状態で業務を依頼することです。依頼された人を「嘱託職員」とよびます。

有期契約の非正規雇用になりますので、端的に言えば契約社員と同じです。一度退職した人を再雇用する際、正社員と区別するため嘱託職員という呼び名が使われ、主にシニア世代を指すことが多いです。

ちなみに、医者や弁護士など専門性の高い分野の人に仕事を依頼する場合も嘱託職員とよぶことがあります。ただし、この医者や弁護士との契約は請負契約となるため、労働基準法は適用されません。

企業に貴重な経験やスキルを持った社員を再雇用しやすいというメリットがある一方で、有期労働契約というデメリットがあります。契約が終了するたびに再契約となり、事務処理の手間や労働条件の交渉に労力がかかります。

結局どれを選べば良い?

ここまで派遣と請負についての違いを解説してきました。一体どちらを選べばいいのかの基準は、以下の3つです。

・指揮命令権が必要な案件か?
・人件費を長期的に確保できるか?
・他者のスキルやノウハウが必要か?

それぞれ簡単に解説していきます。

指揮命令権が必要な案件か?

依頼する案件が、建築やテレアポ、経理や小売などの場合、突発的な問題が発生し、その場で解決しなければならないことがあります。

派遣なら現場の社員が指示・命令できますので、すぐに対応し解決できるでしょう。

これが請負なら、企業側に指揮命令権がありませんので、労働者にその場で指示することができません。

人件費を長期的に確保できるか?

派遣会社と契約を結ぶと、契約期間中は支払いが発生します。もし数年にわたる長期契約の場合、会社の状況によっては負担になることも考えられます。

一方の請負なら成果物に対して費用が発生するため、ムダがありません。自社がどのくらい予算を確保できるかに応じて、派遣か請負かを検討してみましょう。

他者のスキルやノウハウが必要か?

派遣の場合は、自社のスキルやノウハウを活用して派遣社員を教育します。企業と派遣社員は上下関係があるため、派遣社員が自ら動くことはほとんどないでしょう。

請負は請負会社のノウハウやスキルを使って成果物を上げます。企業とは対等な関係ですから、意見やアドバイスを得ることでイノベーションにつながることがあります。

まとめ

本記事では、今さら聞けない派遣と請負の違いを解説しました。派遣と請負が似ているようで大きく異なることがおわかりいただけたかと思います。

決定的な違いは、指揮命令権がどこにあるか?です。派遣は企業(依頼主)に指揮命令権があり、請負は請負会社に所在します。

指揮命令権が必要な案件なら派遣を選ぶといいでしょう。どちらもメリット・デメリットがありますので、この記事を参考に自社にマッチした雇用方法を選択してみてください