アルバイトを雇ったら注意すべき5つのチェックリスト【保存版】

そろそろ人手が足りなくなってきたのでアルバイトを雇いたい…
求人サイトから電話がかかってくるけど、任せても大丈夫なの?
アルバイトを雇う場合、何に気をつければいいの?分からない!

と、お悩みの方へ、アルバイトを雇う際に注意すべきことをまとめました。
後半では、実際にやるべきことを時系列でまとめていますので、参考にしてみてください。

アルバイトを雇ったら注意すべきこと

まず全ての手続きに必要かつ、法律でも提出が求められているのが「マイナンバー」です。

2016年1月1日からマイナンバー制度が導入され、税金や社会保険の手続き・申請にはマイナンバー(個人番号)の提出が義務づけられています。

雇用形態に関わらず、アルバイトを雇用する際にもマイナンバーの提出が必要となります。
アルバイトの方に扶養家族がいる場合は、被扶養者のマイナンバーも必要になりますので、応募の時点から早めに準備しておくよう伝えておきましょう。

また、社会保険の加入対象が2016年10月1日から拡大しました。
未加入が発覚した場合、過去2年までさかのぼって保険料を請求されることもあるため、条件が合致したら必ず加入するようにしましょう。

次項ではアルバイトを雇う際に注意すべき下記ポイントについてそれぞれまとめています。
・税金
・社会保険
・給与
・契約
・助成金

税金

アルバイトを雇う際に発生する税金には、所得税や住民税があります。

納税者自身であるアルバイトが自主的に申告・納付する「申告納税制度」が原則ですが、
企業などの源泉徴収義務者は、本人の代わりに納税する「源泉徴収制度」を採用します。

源泉徴収義務者とは、会社や個人以外にも、給与などの支払をする学校や官公庁、人格のない社団・財団なども含まれます。

ただし、以下の条件に該当する場合は源泉徴収義務者にはなりません。
・常時2人以下の家事使用人だけに給与を支払っている者
・給与や退職金の支払いはなく、弁護士報酬などを支払っている者

源泉徴収義務者に該当するかどうかは下記表でチェックしてみてください。

事業所形態 支払い形態 源泉徴収義務者
法人 該当する
個人事業主 フルタイム、パート、アルバイトなど雇用形態に
関わらず、給与を支払っている
該当する
青色事業専従者へ給与を支払っている 該当する
常時2人以下の家事使用人へ給与を支払っている 該当しない
弁護士報酬を支払っている 該当しない

体的な手続きについては後述していますので参考にしてみてください。

社会保険

従業員の病気やケガ、失業、老後などのリスクに備えるために国が定めている社会保険制度。近年はアルバイトであっても、社会保険についての興味関心は高まっています

社会保険制度に含まれる保険は以下の4つ。

・健康保険/介護保険
・厚生年金保険
・雇用保険
・労災保険

一般的に言われている社会保険とは「健康保険/介護保険・厚生年金保険」を指しますが、
広い意味では「社会保険(健康保険/介護保険・厚生年金保険)」と「労働保険(雇用保険・労災保険)」を合わせて「社会保険」といいます。

なお、介護保険は40歳以上が対象で、健康保険と一緒に保険料が徴収されるため、健康保険の一部と考えています。

社会保険で注意すべきことは2つ。
それぞれ該当するかどうかチェックしてみてください。

① 自社が社会保険制度の適用事業所であるかどうか
社会保険における適用事業所は以下の2つに分類されます
強制適用事業所…法律で加入が義務付けられている事業所
任意適用事業所…上記以外の事業所(ただし従業員の過半数の同意を得ることができれば加入申請できる)

〇:強制適用事業所 ◆:任意適用事業所

事業所形態 健康/介護 厚生年金 労災 雇用
法人 従業員数・業種問わず 〇※1 〇※1
個人事業 従業員5名以上 適用業種
非適用業種※2
従業員5名未満

※1:法人で従業員がいない場合、労災保険、雇用保険は加入対象外
※2:農林・畜産・水産業、飲食店、接客業、理・美容、旅館業等サービス業、映画演劇等の娯楽業、法律・会計事務所等の自由業、神社・寺院・教会、など

② 雇用したアルバイトは社会保険制度の加入対象者かどうか
雇用したアルバイトが加入対象となるかどうかは、労働条件によって個別に決まります。

雇用期間 勤務時間 健康/介護 厚生年金 労災 雇用
2か月以上 週30時間以上
週20~30時間未満 ※1 ※1
週20時間未満 × × ×
1ヶ月以上 週20時間以上 × ×
週20時間未満 × × ×
1ヶ月未満 × × ×

※1:従業員数が500名以下の企業は、健康保険、厚生年金保険は任意加入となり、任意適用を選択している企業は対象となります。

なお、健康保険では、後期高齢者医療制度の適用を受ける方(75歳以上の方など)は被保険者とならず、厚生年金の場合、70歳以上の方は被保険者となりません。

上記で適用事業所に該当する方は、必要書類や手続きについても後述していますので参考にしてみてください。

給与

給与は、その決め方に明確なルールがないため、経営者の方にとって一番悩む点かもしれません。給与を決めるときのチェックポイントは3つあります。

① まずは最低賃金をチェック
「地域別最低賃金」は、都道府県ごとに法律で決められています。
毎年10月に改訂されますので、厚生労働省のホームページでまずは確認しておきましょう。ちなみに、東京都の最低賃金は令和元年10月1日時点で1,013円となっています。

② 人件費率と業界の相場のバランスをチェック
人件費率とは、売上に対する人件費の割合のこと(人件費率=人件費÷売上×100)。
利益を獲得するための人件費率は、売上の25~30%が目安です。

例えば、売上100万円で人件費30万円の場合
30万円÷100万円×100=30%
となり、30万円が人件費ギリギリのラインということが分かります。

加えて、最低賃金を下回らないこと、同業種の賃金とのバランスを見ながら時給を決める必要があります。

③ アルバイトのモチベーションアップをチェック
他店と比べてもどうしても時給を上げられないといった場合、昇給制度で工夫するというのも一つの方法です。

アルバイト全員の時給を一律アップするよりも、意欲や成果に応じた昇給率を決めたり、売上の良かった月に少額でも臨時ボーナスを支給したりするなど、アルバイトのモチベーションアップへつながる環境を整えてあげるのもいいかもしれません。

契約書類

雇用契約に必要な書類としては以下の2つが挙げられます。

書類名 雇用契約書 労働条件通知書
作成義務 なし あり
規定している法律 労働契約法 労働基準法
特徴 双方の捺印・署名が必要 雇用主からの通知のみ

実は、雇用契約書に作成義務はなく、労働条件通知書には作成義務があります。
これは、それぞれ規定している法律が異なるうえ、労働契約法には罰則規定がないからです。

ただし、お互いの署名・捺印のある雇用契約書に全てを明記した方が、トラブルが起きるリスクが少なくなりますので、労働条件通知書を兼ねた雇用契約書を作成することをおすすめします。

注意事項や必要項目など、後半にまとめていますので、これから契約書類を作成する方は参考にしてみてください。

助成金

アルバイトを雇っただけでは助成金は受給できませんが、
雇ったアルバイトが優秀で正社員にしたいといった場合に備え、助成金について知っておくといいかもしれません。

「キャリアアップ助成金の正社員化コース」は、アルバイトなどの非正規雇用を正社員にすることを応援してくれる助成金です。

たとえば6ヶ月以上の有期雇用労働者を正規雇用へ転換した場合、1人あたり72万円
アルバイトを正規雇用労働者へ転換した場合、1人あたり36万円の助成金が支給されます。

平成30年4月より、支給申請上限人数が15人→20人に拡充され、これにより1年間で最大1,440万円まで受給可能となりました。

ただし、
・助成金を支給する目的でもある正社員化+生産性アップを「生産性要件」として数値化する必要がある
・就業規則を作成、あるいは正社員への転換制度を盛り込んだ就業規則に修正する必要がある
・キャリアアップ計画書を作成する
など、ハードルも高いため、社会保険労務士や税理士との連携も視野に入れる必要があります。

アルバイトを雇ったら注意すべき5つのチェックリスト

アルバイトの採用が決まった際にするべきことを時系列でお伝えしていますので、
実際にアルバイトを雇うときの参考にしてみてください。

手順①:契約書の締結

まずは雇用契約書を結びましょう。
雇用契約書には、雇用主とアルバイト、双方の署名と捺印が必要ですので、雇用当日に雇用契約書を提出してもらう場合には、忘れずに印鑑を持参してもらうように伝えておきましょう。

当日に手続きを行うことが難しい場合には、事前に郵送等で署名と捺印をした契約書を提出してもらうことも可能です。

必ず作成しなければならない「労働条件通知書」には次の項目を記載する必要があります。

・契約期間
・就業場所
・業務内容
・始業および終業の時刻
・休憩時間や休日・休暇、交替制勤務制の場合には、就業時転換に関する事項
・所定労働時間を超える労働の有無
・賃金の決定・計算・支払方法・締切・支払日
・解雇の事由を含む退職についての事項
・契約更新の有無とその基準
・賞与の有無
・昇給や退職手当についての事項

また、雇用契約書に労働条件通知書を兼ねる場合、上記に加え、次のような項目を盛り込むといいでしょう。

・ 災害補償及び業務外の傷病扶助
・秘密保持義務
・社会保険等の加入
・福利厚生

雇用契約書は2通作成し、雇用主と従業員の双方で保管しておきます。

手順②:社会保険の手続き

自社が社会保険の適用事業所であり、かつアルバイトが社会保険の加入対象者である場合は、採用後5日以内に手続きをおこなう必要があります。

事業主は期日までに手続きを済ませ、加入対象者が入社初日から加入できるよう準備をしておきましょう。

健康保険・厚生年金保険
必要書類 事業所単位で新規加入する場合
「健康保険・厚生年金保険 新規適用届」加入対象となる従業員ごとに新規加入する場合
「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」従業員などに扶養する配偶者や子供がいる場合
「健康保険被扶養者(異動)届」
手続き場所 年金事務所
提出期限 採用されてから5日以内

労災保険は従業員が1人でもいる場合、必ず加入しなければなりません。
保険料については、毎年6月1日~7月10日の間に概算で申告・納付をおこない、翌年度の確定申告の際に差額を精算します。

労災保険
必要書類 新規加入する場合
「保険関係成立届」申告・納付する場合
「概算保険料申告書」※概算保険料を支払います。
手続き場所 労働基準監督署
期限 採用決定後、速やかに提出

雇用保険については、下記の要件をいずれも満たす場合、加入義務が発生します。
①31日以上引き続き雇用されることが見込まれる者であること
②1週間の所定労働時間が20時間以上であること

雇用保険
必要書類 事業所単位で新規加入する場合
「雇用保険適用事業所設置届」従業員採用ごとに新規加入する場合
「雇用保険被保険者資格取得届」
手続き場所 ハローワーク
期限 採用月の翌月10日まで

手順③:税務の手続き

契約書を締結し、社会保険の手続きが終わったら、次は税務の手続きをおこないましょう。

初めてアルバイトを雇って源泉徴収義務者になるときは、雇用したときから1ヶ月以内に「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」を所轄税務署に提出しなければなりません。

これにより、アルバイトなどに支払う給与から国税庁の発行している「源泉徴収税額表」に基づき源泉所得税を毎月徴収し、翌月10日までに所轄税務署に納付します。

なお、支給対象となる従業員が他社での給与の支給を受けていない者である場合には、その社員などから「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を、給与の支給を開始する前に提出してもらいます。

また、源泉所得税の支払いを半期ごとに分けて納付することも可能です(その給与の支払い対象となる社員などが10人未満の場合で「源泉所得税の納期の特例に関する承認申請書」を提出した場合)。

所得税(源泉徴収)
必要書類 初めて源泉徴収義務者になる場合
「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」従業員などに扶養する配偶者や子供がいる場合
「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」給与支給人員が常時10人以内で納付を半年に1回にしたい場合
「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申込書」
手続き場所 税務署
提出期限 雇用後1ヶ月以内

住民税については、法律により、所得税の源泉徴収義務がある給与支払者(会社など)は、原則としてすべて特別徴収義務者として、社員の個人住民税を特別徴収することになっています。会社や社員の意思で特別徴収するかどうかを選択することはできません。

新たに必要な書類や手続きはなく、前年中に源泉徴収義務者になった事業所には翌年5月に「特別徴収税額通知書」が送られてきます。

事業所は、その通知をもとに、毎月の給与から天引きし、天引きした住民税を翌月10日までに市町村へ納付します。

住民税(特別徴収)
必要書類 特になし
手続き場所 従業員の市区町村

手順④:労務管理の準備

アルバイトを雇ったら労務管理をきちんとおこないましょう。
労働環境を巡るトラブルを防ぐことはもちろん、労働基準法に違反していないか、労働基準監督署による調査にも注意する必要があります。

労働基準監督署による調査には3つのパターンがあります。
①予告なく事業所にやってくる
②事前に連絡がきて事業所にやってくる
③出頭要求書が届いたら労働基準監督署へ書類を持参する

どのような規模、事業内容の企業にも調査は入りますので、いつ来られても問題のない体制づくりをしておくことが大切です。

下記3つは労働基準法で整備することが決められている「法廷三帳簿」と呼ばれる書類です。

・出勤簿
・賃金台帳
・労働者名簿

アルバイトが退職しても3年間は保管する必要があります。
労働基準監督署から提出を求められた際に適切に整備されていない、虚偽の記載をしているなどはペナルティの対象となりますので注意が必要です。

手順⑤:助成金の手続き

正社員化が視野に入ってきた場合に備えて、助成金の手続きについても把握しておきましょう。

【申請時に必要な条件】
・対象となる労働者が非正規として6カ月以上雇用されている
・非正規雇用者を正規雇用するルールを定めた、就業規則(あるいは労働協約)が6ヶ月以上正しく運用されている

【申請に必要な書類】
・キャリアアップ計画書
・就業規則

【手続きの流れ】
キャリアアップ計画書を提出する

就業規則を労働基準監督署に届け出る

就業規則に基づき実際に労働者を転換させる

申請してから審査結果の連絡があるまで約3~4ヶ月、審査通過後、助成金が入金されるまで、さらに3~4カ月を要します。

自社で申請することも可能ですが、不備があった場合助成金が支給されなくなるリスクもありますので、社会保険労務士の方へ相談するのも一つの方法です。

助成金は返済不要ですが、申請準備から助成金の入金までは約1年かかりますので、きちんと計画することが大切です。

まとめ

ここまでアルバイトを雇う際の注意点についてお伝えしてきましたが、正直面倒…と思った方もいるかもしれません。
雇用主としての責任や義務は発生しますが、事業拡大や人手不足解消など、アルバイトを雇うことで得られるメリットは大きいもの
書類を揃えるのが大変そう…
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