人件費とは?どんな種類がある?人件費率の出し方と業界平均値もご紹介

人件費」と言うと、最初に思い浮かぶのは月給時給ですよね。大きな要素であることは間違いありませんが、実はほかにもさまざまな種類があります。それらをすべて合わせると、人件費は給料の1.5〜2倍になるとも。

これは相当な費用ですから、健全な経営状態の維持には、適切な人件費の設定が必要不可欠といえます。
では、人件費にはどんな種類があるのか?支出における人件費の割合はどう算出するのか?その割合の業界平均はどのくらいか?

本記事では、上記のギモンについて分かりやすく解説していきます。「経理や会計って難しそうでちょっと…」と言う方も、ぜひ最後までお読みください。

人件費とは?定義は何?

人件費とは、企業が計上する経費のうち、従業員にかかる費用すべてのことを指します
人件費は給与の1.5倍から2倍かかると言われており、経営者の頭を悩ませる原因の一つです。

給与だけじゃない!人件費の種類・仕訳内容

繰り返しになりますが、人件費は給与だけではありません。本章では、人件費の種類・仕訳内容を解説していきます。

給与手当

給与手当は、代表的な人件費ですね。労働への対価になります。基本給はもちろんのこと、歩合給、賞与、残業手当、扶養家族手当、通勤手当などの諸手当も給与手当に含まれます

また、パートやアルバイトの人たち発生する時給は、基本的には給与手当です。
こうした給与は「損金(経費)」扱いになります。損金とは、経費の種類の一つで、収益から差し引くことができるもののことをいいます。

法人税には「会計上では費用だが、税法上では損金ではない」という「損金不算入」の考えがあります。したがって、給与手当については支払う法人税が変わってきます。

法定福利費

法定福利費とは、福利厚生に関する保険料のことで、企業は法律で支払いを義務付けられています。「販売費及び一般管理費」として、損益計算書に計上してください。
法定福利費は、従業員の社会保険料における会社負担分をいいます。社会保険料の種類は、下記一覧をご覧ください。

健康保険料 従業員やその家族の傷病や死亡、出産などのための医療費を国や自治体が一部負担してくれる保険制度。
厚生年金保険 会社員が加入する保険で、老後の生活や死亡に備えるためのもの。
企業は従業員がいる場合に加入が義務付けられる。
介護保険 老化によって介護サービスが必要となった際に、その費用の一部が支払われるもの。
40歳になると強制加入になる
労災保険(労働保険) 通勤を含む業務上での事故や災害により傷病・死亡が発生した場合に従業員に支払われるもの。
企業は強制加入で、保険料は全額企業負担。
雇用保険 失業した時、一定期間一定額の給付金を受け取ることができる、いわゆる失業保険のこと。

福利厚生費

福利厚生費とは、従業員への慰安や、冠婚葬祭などの福利厚生を目的とする任意の費用のことを言います。具体的には、慶事・弔辞の際の見舞金、社員旅行費、健康診断費用、忘年会・新年会費用などです。
ただし、福利厚生費として計上するには条件があります

  • 役員、一般社員に関わらず全従業員を対象としていること
  • 常識的に考えて妥当な金額であること
  • 現物支給ではないこと

以上すべてを満たしていなければ、福利厚生費として計上はできませんので注意しましょう。

退職金

従業員が退職する際に、「過去の労働に対する慰労金や対価」として支払われる退職金もまた、大きな人件費です。

退職金には、退職時に一括で支払われる「退職一時金」と、年金方式の「退職年金」があります。

どちらの支払い方法にせよ、企業にとっては一定条件を満たした従業員が退職するたびにかかるコストです。ここでいう「一定条件」とは、企業が定める退職金の既定のことです。企業によりますが、「入社後〇年以上」「自己都合の場合は減額」などを定めている場合が多いでしょう。

役員報酬・役員賞与

役員に支払われる役員報酬や役員賞与も、人件費に入ります。これらは、一般の従業員の報酬や賞与とは別のものです。

役員への「報酬」は明らかに高すぎる場合を除いて損金として扱えますが、「賞与」だと損金扱いはできません。所得税、住民税に加えて法人税がかかることになります。

また、役員報酬は経営者が勝手に決めることはできません。株主総会(合同会社の場合は社員総会)を開き、相談のうえで承認が必要になります。

自社の人件費は適正?人件費率や労働分配率の出し方・求め方

次に、今現在の人件費が適切かどうか判断するための指標として重要な、「人件費率」や「労働分配率」の出し方・求め方を解説します。ぜひご一読ください。

人件費率の計算方法と適正値の目安

人件費率とは、売上に対する人件費の構成比率のことを指します
計算式は以下の通りです。

人件費率(%)=人件費÷売上×100

たとえば、売上が200万円で人件費が50万円だった場合、人件費率は25%となります。この数字が大きいほど人件費の比重が高いという意味です。比重が高ければ経営を圧迫します。

ただし、だからと言って単純に比重を低くするために人件費を削ろうとすると、従業員のモチベーションが下がったり、辞職されたりして結局経営はうまくいきません。適正な数値を保つことが重要です。
いくつかの業種の平均値は下図のようになっています。

小売業 10%~30%
ホテル業 30%前後
サービス業 40%~60%
飲食業 30%~40%
卸売業 5%~20%

参照:TKC(https://www.tkc.jp/tkcnf/bast/sample/
この平均値を目安にして、自社の数値を求めていきましょう。

労働分配率の計算方法と適正値の目安

労働分配率とは、「付加価値額」に占める「人件費」の割合です。

ここでいう付加価値とは、企業が商品に生み出した価値のことをいいます。たとえば500円で仕入れた商品を800円で売る場合、差額の300円が付加価値になります。
そして、労働分配率の計算式は以下の通りです。

労働分配率(%)=(人件費÷付加価値額)×100

この割合が高すぎると人件費にそれだけ費用を回していることになり、経営が圧迫されます。かといって割合が低すぎると従業員に還元していないということになり、従業員満足度が下がっていくでしょう。

労働分配率の適正値は、業種によって異なります。自社が所属する業種の平均値を知って、比較してみるといいでしょう。いくつかの業種の平均値は下図のようになっています。

建設業 45~65%
卸売業 45~55%
小売業 35~65%
サービス業 55~67%
飲食業 40~60%

参照:TKC(https://www.tkc.jp/

人件費は売上原価?販管費?考え方を解説


人件費とは、売上原価でしょうか。それとも販管費(販売費及び一般管理費)でしょうか。
結論から言うと、これは両方になり得ます。本章では、その考え方を解説していきます。

売上原価とは

商品を売り上げるために直接かかった費用のことを、売上原価と言います。商品が売れた時、仕入れや製造にかかった費用として計上されるものです。

また、建設業、小売業、サービス業など業種によって原価の範囲は変わります。たとえば小売業の場合はその商品を仕入れるための費用を指しますが、サービス業の場合は主に外注費が売上原価に入ります。

販管費とは

一方、売上をあげるために間接的にかかった費用を、「販売費及び一般管理費」、略して販管費と呼びます。

商品を売るための広告宣伝費や商品を届けるための運送費、それらの手続きをした事務員への給与などがこれにあたります。

人件費は売上原価にも販管費にもなり得る

たとえば製造業だと、その商品を製造するための人員に対する給料は売上原価に入り、総務や人事、経理などに従事する人員への給料は販管費に入ります。したがって、人件費は業種によって売上原価にも販管費にもなるのです。

人件費の決め方は?業界別平均比率をご紹介

人件費は、どのように決めていけばいいのでしょうか。各都道府県の最低賃金を割らないのは最低ラインとして、そこからどのように決めていけばいいのか、頭を悩ませるところですよね。

業界別平均比率

業界別平均比率を下図にご紹介します。自社の人件費を決める参考にしてください。

参考元:中小企業庁/2019年度版中小企業白書/付属統計資料15表

人件費は高すぎても低すぎてもいけない!

人件費は、高すぎても低すぎてもよくありません。高すぎると言わずもがな、企業の経営を圧迫します。かといって人件費を削ろうと従業員を減らせば、残った従業員一人一人にのしかかる業務が大きくなり、モチベーションの低下や辞職に繋がるでしょう。
従業員に辞職されると業務が滞り、また残っている従業員の負担が大きくなり…と悪循環に陥ってしまいます。

人件費率と労働分配率をしっかり計算し、労働に見合った人件費を算出することが大切です

まとめ

ここまで、人件費について解説してきました。人件費と言うと給料だけと思っていた方もいるのではないでしょうか。実は、その内容はさまざまだと言うことがお分かりいただけたはずです。

企業を経営していくうえで、絶対に避けて通れない人件費。高すぎても低すぎても経営はうまく回りません。
ご紹介した人件費率と労働分配率の業界平均値を参考にしながら、自社の経営状況を見極め、最適な人件費を算出していきましょう。