近年、MBO(目標管理制度)を導入している会社が増えており、定期的な目標設定が従業員に求められるようになっています。
人事考課や業績評価に関わるため、具体的な内容で提出したいところ。 しかし、成果を数字で表しにくい事務職の方にとって、これはなかなか難しいのではないでしょうか。
そこで本記事では、事務職の定量・定性的な目標の立て方を解説します。
目標には2種類ある~定量目標と定性目標~
目標には「定量目標」と「定性目標」の2種類があります。それぞれの違いを理解した上で、定量と定性の両方を用いて設定すると、上司から理解してもらいやすくなります。両者の違いは次の通りです。
定量目標とは
定量とは、具体的な数値や数量を使って物事を表現すること。つまり定量目標とは、数値を用いて設定した目標を指します。営業担当の場合「毎日5件、営業に回る」「売上を10%アップする」といった具合ですね。
定量目標は達成度がわかりやすいため、モチベーションの向上につながりやすい点がメリットです。また数値が入っている分、人事考課や業績評価の際に、他人から見ても達成度について認識のズレが生じにくくなります。
達成までのプロセスに関しては、中間目標(KPI)を設定すればより詳細に評価されやすくなります。
定性目標とは
定量とは逆に、数値や数量を用いずに物事を表現することを定性と呼びます。そして定性目標は、数値で表せない目標のことです。
例えば「お客様から信頼されるために丁寧な対応を心がける」「事務処理でミスをなくす」などです。 目標とする姿や状況を表すと考えましょう。
定量目標は客観的な達成度がわかりにくい一方、目的が明らかになって努力の方向性がブレにくくなるというメリットを持ちます。
定量目標と定性目標、どちらを設定すべき?
定量目標と定性目標、どちらを設定すべきか。結論から述べると、両方です。定量目標と定性目標は、それぞれ別物の違うようで、実は密接に関係しているからです。
例えば「丁寧な対応をして、お客様から信頼される」という定性目標を設定するとします。すると次に、お客様から信頼されるとは具体的にどんな状態を指すのか、を考えることになりますよね。信頼の度合いを数値化するのは難しいですが、顧客アンケートを実施して「○○のスコア○点以上」といった方法の例があります。
このように、まず定性目標を立てて努力の目的を明確にし、それから定量目標を立てて具体的なゴールを明らかにしましょう。自分は目的と目標が噛み合った状態で行動でき、第三者からは公平な判断がされやすくなります。
事務職における目標の設定方法
ここからは、事務職における目標の設定方法を説明していきます。
①定性目標の決め方
まずは定性目標の決め方です。
方法1:組織目標における自分の役割を元に
1つめの方法は、組織目標における自分の役割を元にすること。
はじめに会社の方向性や目標を思い出してみましょう。その上で、組織内で自分に求められている役割は何かを考え、それを言語化します。役割がわかりにくかったら、自分のあるべき姿などでもOKです。
もちろん自分本位ではなく、あくまで組織における自分について考えましょう。
方法2:自分の課題を元に
2つめの方法は、自分の課題を元にすることです。
今の自分に足りていないのは、どんなことでしょうか。周囲からアドバイスや注意をされた内容を思い出してみてください。それが課題としてふさわしいのであれば、解決することを目標にするのがよいでしょう。
②定量目標の決め方
次は、定量目標の決め方です。
「何を・いつまでに・どれだけ」の3つを数値化
定量という言葉通り、数値を詳細に盛り込むことが重要です。客観的に見てもわかりやすいように「何を・いつまでに・どれだけ」達成するのか決めましょう。例えば「(何を)データ入力の時間を(いつまでに)半年後までに(どれだけ)30分以内にする」などです。
「SMARTの法則」に照らし合わせよう
定量目標が適切であるかを見定める基準として、SMARTという概念が有用です。
・Specific(具体的であること)
・Measurable(計測可能であること)
・Achievable(達成可能であること)
・Related(関連性があること)
・Time-bound(期限があること)
の頭文字を取ってSMART。それぞれの項目を解説しますね。
【Specific:具体的であること】
繰り返しになりますが、定量目標には具体的な数字を用いましょう。あいまいな目標では達成度を測りづらくなってしまいます。例えば「ミスをなくす」ではなく「ダブルチェック体制を整えて、3か月後までにミスをゼロにする」という具合です。
【Measurable:計測可能であること】
定量目標が重要な理由のひとつに、計測可能だからというのがあります。計測によって達成度が明確になり、KPIも設定すれば達成までのプロセスも可視化できます。「たくさんの案件を処理する」ではなく「一日5件以上の案件を処理する」などの数値を決めるようにしましょう。
【Achievable:達成可能であること】
目標は達成するためのものなので、現実的でない数値は避けるべきです。とはいえ、簡単に達成できる目標も良くありません。努力すれば達成可能、ぐらいの感覚で決めましょう。
【Relevant:関連性があること】
ここでいう関連性とは、事業や業務と関係のある目標にすることを指します。当たり前のように思えますが、仕事が多岐にわたると取り組みの優先順位を付けられなくなり、事業や業務の本質から外れた目標を設定してしまいがちです。ですので「自分が目標を達成できると、組織にどう貢献できるか」を考えるようにしましょう。
【Time-bound:期限があること】
目標達成の期限が定められていないと、取り組みがズルズルと先延ばしになったり、短期間に仕事を詰め込みすぎたりするおそれがあります。期限が半年の場合と3年の場合で、目標達成までのプロセスは大きく変わります。前述のAchievableと同様、早すぎず遅すぎずを心がけましょう。
目標達成の手段も考えよう
目標を定めたら「どうやって達成するか」も明確にしましょう。
これにはノウハウや設備、組織事情、期限といったリソースが関わるため、一概にコレといったものはありません。まずはリソースを整理し、これらに適した方法を導き出すようにしてみてください。
事務職の目標設定の例
事務職の目標にはどのようなものがあるのか、具体例を出していきます。
例1
事務処理の作業効率を上げるために、現在1件につき1時間かかっている書類作成を、1件50分でできるようにする。
例2
自分が不在の時に作業が滞らないよう、半年後までにマニュアルを整備する。
例3
作業ミスを防ぐために、チェックシートを作成しダブルチェックの体制を整え、3か月後までにミスを○%削減する。
例4
英語でのメール対応ができるように、半年後のTOEICで730点を取得する。
まとめ
今回は事務職の目標の立て方を解説しました。
目標設定がしにくいと思われがちな事務職ですが、定性・定量の2つを使えば改善点などが案外見えてくるものです。
また、会社から言われたから目標を立てるのではなく、主体的に向上心を持って目標を立ててみてください。自分から動いた方が将来の仕事の幅も広がるはずです。