これからペーパーレス化を進めるにあたって「何をどう始めてたらいいかわからない」と悩む方は多いはず。
ペーパーレス化は単なる紙の削減ではなく、書類の電子化による業務効率アップやセキュリティ強化といった目的のために行うものです。正しい手順で行わなければ、社内にうまく浸透せず効果を得られない可能性があります。
そこで本記事では、ペーパーレス化を実現するための具体的な方法や手順、注意点などを解説します。
ペーパーレス化の方法を考える前に、目的を明確にしよう
何よりも先に「ペーパーレス化の目的=ゴール」を明確にしましょう。目的が曖昧なまま始めてしまうと、続く方法や手順も曖昧なまま進んでいくことになります。これでは十分な成果を出せません。
例えば、旅行に行く際、まず目的地(ゴール)を決めるはずです。これに沿って交通手段や日程といった計画を立てますよね。
ペーパーレス化でも同様に「たどり着きたい場所=ゴールはどこか」の設定が必要なのです。
経費削減や業務効率化など、目的によって行うべき施策も異なります。あらかじめ目的を明確にした上で、業務フロー策定などに取りかかるようにしましょう。
ペーパーレス化の方法~基本の手順~
次に、ペーパーレス化の基本の手順を解説します。
①ペーパーレス化の目的を決める
先に述べたように、まずはペーパーレス化の目的を明確に定めましょう。
例えば、多くの企業が目標とするゴールは以下のようなものです。
・業務効率化
・コスト削減
・テレワーク推進
・オフィススペースの有効活用
・セキュリティ強化
どれに設定するかで施策や選択するシステムが異なります。すべての計画は、目的から逆算して組み立てていくのです。
②ペーパーレス化の対象を決める
すべての業務をいきなりペーパーレス化するのは非現実的です。はじめは対象を絞り、徐々に範囲を広げていきましょう。
対象の絞り方は、目的に応じて異なります。例えば、
・コスト削減→コストのかかる書類から
・業務効率化→手間のかかる書類から
・テレワーク推進→出社の手間がかかる書類から
といった方針を立てられますね。
また、社内調整のしやすさを考慮し、会議用資料や稟議書などペーパーレス化が安易な部分から進めるのがおすすめ。いずれにせよ、小さく始めるのが大切です。
③ツールを選定する
ペーパーレス化を推進するには、目的と対象にあったツールを選ぶことが大切です。
業務効率化を目的としているにもかかわらず、操作性の悪いツールを導入すると結果的に効率が落ちてしまことも。ペーパーレス化で活用するツールは、自社が抱える課題をもっとも効率よく解決できるものを選ぶべきです。
また、すでに導入しているデバイスと互換性のあるツールを選べばコストダウンにつながります。例えば、ほとんどの部署でタブレットを使用しているなら、そのタブレットでも使えるクラウド型などが便利です。
④運用ルールを決める
ペーパーレス化では、本格的な運用の前にルールを決めておくことも大切です。
これまでとは違う方法で業務を進めるので、業務フローや社内運用ルールを策定しなければ、現場の混乱を招きます。最悪、業務効率が落ちペーパーレス化を断念せざるを得えない事態になることも。
例えば、フォルダの構造やファイル名に明確なルールを設けなければ、必要な書類がどこにあるのかわからなくなります。昨今では、テレワーク中のデータの取扱についても決まり事が必要でしょう。
このような改革は会社一丸となって取り組むものですから、明確なルールのもとで社員の意識と足並を揃えておくことが大切です。
⑤従業員に周知し、運用を開始する
現場の従業員には、ペーパーレス化の目的とルールを説明し、理解してもらいましょう。実務を行うのは現場従業員ですから、彼らの意識を高めなければ成功はあり得ません。
とはいえ、日常業務で手一杯な中でいきなり「紙を削減しろ」「ファイルはこの手順で」と強要しても受け入れてもらえないでしょう。
そこで社内セミナーを開催し、電子化のメリットや業務効率アップの期待値などを共有することが重要です。
⑥運用内容の評価と改善を繰り返す
実際にペーパーレス化がスタートしたら、「正しく運用できているか?」「どの効果がどのくらい出ているか?」など運用内容の評価と改善を繰り返し行います。
①で明確にした目的に向かって、改善へのアクションを行い、問題や課題をクリアしながら、精度を高めていくことが大切です。
評価はレポート化すると、改善ポイントを社内で共有しやすくなります。
ペーパーレス化の方法~業務に応じたツール~
ここでは、業務に応じたペーパーレス化ツールをいくつか紹介します。
スキャナー
スキャナーとは、書類や写真データを読み込んでデジタルデータへ変換する機器です。コンパクトなハンディスキャナーから、プリンターに搭載されている複合タイプなどさまざまな種類があります。
今まで紙で扱っていた図面や契約書、マニュアル、名刺などをデータ化すれば、社内での管理や共有がしやすくなります。
近年ではスマホやタブレットでもスキャン可能になりました。枚数が多い場合はスキャン代行を利用するのもひとつの手です。
ORC
ORCとは”Optical Character Recognition/Reader”の略で、画像内の印刷文字や手書き文字を文字コードとしてデータに変換する技術のことです。
画像から文字だけを取り出したい場合に重宝します。変換したデータは、WordやExcel、PDFなどファイルとして保存可能。
最近ではスマホやタブレット向けのORCアプリもリリースされています(「Evernote」など)。
クラウドストレージ
クラウドストレージとは、ネット上にあるデータ保存用のストレージのこと。社内PCのデータ容量や故障などを気にせず使えますし、自宅や外出先からでもアクセスできるためテレワークにも最適です。
代表的なサービスは「Google Drive」「One Drive」「Dropbox」など。どれも無料プランがあるので使い勝手を試してみましょう。
Officeソフト
「Microsoft Office」やGoogleのOfficeソフト群などもペーパーレス化に役立ちます。
これまで紙に印刷していたものを、PDFエクスポートに切り替えてみましょう。アドオンで印影や署名の追加もでき、社内決裁を効率よく進められます。
Officeソフトはすでに導入している企業も多いはずですから、ペーパーレスに移行しやすいのもポイントです。
チャットツール
チャットツールは、日々の業務連絡や顧客管理・進捗状況をチーム内で共有できる便利なツールです。
紙資料やメールとは違い定型句が必要なく、リアルタイム性が高いため、社内外でのコミュニケーション効率がアップします。テレワークなど新しい働き方と相性が良いですよ。
代表的なサービスには「Microsoft Teams」「Slack」「Chatwork」などがあります。
Web会議ツール
Web会議ツールは、離れた相手とビデオや音声で通話するのに使われます。
資料を画面共有できるため、紙を参加者全員に配るといった手間を省けるのがメリット。取引先との打ち合わせや採用面接などで、多くの企業が導入しています。
タブレットやスマホで利用できるサービスも充実しており、無料から有料まで種類も豊富です。主なサービスは「Zoom」「Google meets」「Microsoft Teams」「Cisco Webex Meetings」など。
バックオフィス業務の効率化ツール
事務を中心としたバックオフィス業務では、紙の使用量が多くなりがちです。これらにもツールを導入し、ペーパーレス化を促進していきましょう。
以下に、おすすめのバックオフィス効率化ツールを紹介します。
会計
会計ソフトは、入力した経費を自動で仕訳したり、領収書のスキャンデータを読み込んだり、口座を同期し自動的に帳簿に反映したりと、効率的な帳簿作成が可能になるツールです。
伝票や領収書などに紙が多い経理は、ペーパーレス化の恩恵を受けやすいといえます。会計ソフトを使えば、ミスや業務負担の軽減につながります。また、クラウド型ならテレワーク中でも経理業務が可能です。
主なクラウド会計ソフトは「会計freee」「弥生会計オンライン」「マネーフォワードクラウド会計」など。
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経費精算
経費精算ソフトは、その名のとおり経費精算をサポートするシステムのこと。駅名を入れるだけで交通費が反映されたり、クレジットカードと連携できたりと、出張費の事前申請ができたりと、煩雑な業務を効率化できます。
おすすめサービスは「SmartGo Staple」「TeamSpirit 経費精算」「楽楽精算」など。どれもクラウド上で使え、ペーパーレス化やテレワークを促進できるソフトです。
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勤怠管理
勤怠管理ソフトは、出退勤時間や勤務状況を記録できるツールです。
社員の勤怠管理をタイムカードで行う会社は多いと思いますが、毎月手作業で確認、集計するのは大きな負担ですよね。そんな課題も勤怠管理ソフトを使えば解決。面倒な残業時間の集計も自動ででき、手間がかかりません。
主なサービスは「マネーフォワードクラウド勤怠」「ジョブカン勤怠管理」「キングオブタイム」など。
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電子契約
電子契約とは、電子データを用いて契約すること。紙の契約書と同じ法的効力を持ち、契約書は電子文書としてクラウドストレージ等へ保管可能です。
主なサービスには「クラウドサイン」「NINJA SIGN」「BtoBプラットフォーム契約書」などがあります。
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労務管理
労働時間の管理、社会保険や福利厚生の加入管理、給与管理など、業務内容が幅広く紙ベースの作業が多いため、労務もペーパーレス化の恩恵を受けやすい分野です。
労務管理システムを使えば、書類作成の手間を減らせますし、役所や年金事務所へ出向く必要もありません。
おすすめサービスは「楽楽労務」「人事労務freee」「ジョブカン労務管理」など。
備品管理
備品に貼り付けられたバーコードやQRコードを読み取り、そこから貸出状況や在庫量、メンテナンス情報などを一元管理できるのが備品管理システムです。
・備品の紛失が多い
・棚卸しに丸一日かかる
・貸出状況がわからない
・在庫表と数が合わず資産管理が難しい
多くの企業が抱えるこうした悩みを解決できます。
おすすめサービスは「Convi.base」「Assetment Neo」「タグ衛門」など。
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電子署名
電子署名とは、データ化された文書に付与される署名のことです。
認証局という第三者機関を通じて発行される「電子証明書」が付与されたものであれば、署名の本人性を担保でき、高い法的効力を発揮させられます。
おすすめの電子署名サービスには「クラウドサイン」「NINJA SIGN」などがあります。
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ペーパーレス化の方法~注意点~
最後に、ペーパーレス化の導入で注意しておきたいことを解説します。
ファイル名・フォルダ名は統一する
電子化するファイル名やフォルダ名は、わかりやすいように統一することが重要です。
統一しない場合、どこに何の書類が入っているのかわからず探す手間がかかります。また、作成した本人もどこに保存したか忘れてしまうと、再度作り直すことになり非効率です。
ペーパーレス化の目的のひとつは業務効率化ですから、必要なデータをいかにスピーディーに探し出せるかが大切ですよね。
ファイル名やフォルダ名は統一ルールを定め従業員へ周知しておきましょう。
電子帳簿保存法に気をつける
電子帳簿保存法は、国税関係の帳簿や書類を電子データとして保存できると定めた法律です。
保存には「真実性と可視性の確保」という要件が定められており、満たしていないと紙を破棄できないため注意が必要です。さらに、要件を満たしていてもすぐには紙を破棄できず、認められるのは第三者による定期検査実施後となります。
自社の体制は要件を満たしているか、国税庁のHPで事前に確認しておきましょう。
経営陣や管理職が積極的に取り組む
ペーパーレス化は会社にとって大きな変革ですから、経営者や管理職が率先して動くことが大切です。
決定権を持つ人がやらなければ、現場だけがいくらペーパーレス化しても意味がありません。また、上の人が取り組むことで、社内全体の機運を高めることもできます。
取引先によってはペーパーレス化に対応してくれないことも
自社がペーパーレス化に取り組んでも、取引先によっては「紙で対応してほしい」と言われることが多々あるでしょう。
このような場合には、印刷して郵送せざるを得ません。または、説得して電子化してもらうか。
ペーパーレス化する前に案内文を先方へ送り協力を依頼しつつ、紙でも対応できるようにするなど臨機応変に進めていきましょう。
まとめ
本記事ではペーパーレス化の方法について、手順やツール、注意点などを解説しました。
ペーパーレス化の目的を明確にしたら、上の立場の人間が率先して取り組み社内に浸透させていくのが効果的です。初期費用はかかりますが、各種ツールも活用し、業務全体を効率化させていきましょう。