年末調整とは?必要性や確定申告との違い、手順、控除などを解説

年末になると耳にする年末調整。新任の経理担当者の中には、何のために何をするか、イマイチ分からない方も多いのではないでしょうか。

場合によっては還付を受け取る従業員もいるため、年末調整は経理担当者以外でも知っておきたい制度です。

本記事では年末調整について、その必要性や確定申告との違い、手順、控除などを解説していきます。

年末調整とは?なぜ必要?

年末調整とは、所得税を精算する制度のこと。

会社員や公務員が受け取る給料からは、事前に税金が差し引かれていますよね。これを源泉徴収といいますが、実はこれ、概算なのです(大抵は多めに徴収されています)。天引きの時点では年間所得が確定していないため、こうするしかありません。

概算のままでは正しい税額は出せないですよね。そこで年末調整を行い、1年の給与額と控除額を再計算し、そこから所得税額を正しく割り出します。余分な源泉徴収があれば還付、不足していたら追加徴収となります。

年末調整は事業主に義務付けられており、一般的には経理か総務、または税理士の仕事。従業員は担当者へ書類を提出すればOKです。

このように、適正な納税のために、年末調整は必要というわけです。

年末調整と確定申告は何が違う?

年末調整と似た制度に確定申告がありますが、何が違うのでしょうか?

年末調整:給与所得にかかる所得税額を算出。基本的には会社が行う
確定申告:10種類の所得すべてにかかる所得税額を算出。個人が行う

それぞれ対象が異なるわけですね。1か所からしか給与所得を受け取っていないのであれば、年末調整だけでOKです。ただし、ふるさと納税の控除や医療控除を確定申告で提出すると還付を受けられることがあります。

年末調整の時期

11月末~12月頭に必要書類を社員に提出させる企業が多いようです。そして、12月末までに担当者が年末調整を行います。期限は1月31日ですが、本来は訂正期間にあたるため、早めに処理しておきましょう。

なお、特定の人に関しては、年の途中で年末調整が行われます。具体的に誰かは、次項にて解説します。

年末調整の対象者

年末調整の対象者は、年末に行う場合と、年の途中で行う場合とで異なります。

年末に行う場合の対象者

1年を通じて勤務した人
年の途中で就職し、年末まで勤務した人

ただし、給与所得が年間2,000万円を超える人については、年末調整は行われず各自で確定申告をしなければなりません。

年の途中で行う場合の対象者

①海外転勤により非居住者になった人
②死亡により退職した人
③心身の障害により退職し、本年中の復職が望めない人
④12月に支給されるべき給与を受け取ってから退職した人
給与総額103万円以下の退職したパート従業員

いずれかに当たる人は、非居住者となった時・退職した時に年末調整を行います。

年の途中で退職したが①~⑤に当てはまらない人は、年末調整の対象外です。そういう人でも、確定申告すれば還付金を受け取れる場合があります。

年末調整の手順と控除

ここからは、年末調整の手順と適用される控除を解説します。

①従業員:申告書類の作成と提出

まずは、年末調整の対象者に申告書類を配布し、必要事項を記入してもらいます。

必ず必要:扶養控除等(異動)申告書

扶養控除等(異動)申告書」は、扶養控除を受け取るために必要です。扶養親族がいない場合でも、その旨の申告をしなければなりません。

該当者のみ:保険料控除申告書

「保険料控除申告書」は、次のうちいずれかを支払った場合に必要です。生命保険、地震保険、社会保険(天引きされているなら不要)、小規模企業共済(iDeCo等)

該当者のみ:基礎控除・配偶者控除・所得金額調整控除申告書

令和2年から、「配偶者控除等申告書」に「基礎控除申告書」と「所得金額控除申告書
」が追加されました。

✓配偶者控除:控除を受ける納税者本人の合計所得が1,000万円以下で、なおかつ生計をともにする配偶者の合計所得が133万円以下の場合に適用。控除額はそれぞれの所得次第(国税庁HP)

✓基礎控除:総所得が2,500万円以下の場合に適用。控除額は所得次第(国税庁HP)。

✓所得金額調整控除:次の2つの要件を満たす人に適用されます。①給与収入850万円以上、②本人・同一生計配偶者・扶養親族が特別障害者または23歳未満の扶養家族を抱える(国税庁HP)

該当者のみ:在宅借入金等特別控除申告書

住宅ローン利用者が一定の要件を満たしたとき、住宅ローン残高に応じた控除を受けられます(国税庁HP)。ただし、年末調整で処理できるのは2年目からで、初年については確定申告をしなければなりません。

該当者のみ:前職での源泉徴収票

転職者は、前職での源泉徴収票を今の会社に提出します。間違えて捨てると再発行の手間がかかるため、年末調整まで大切に保管しておきましょう。

②年末調整担当者:所得税額の計算

従業員から書類を回収したら、一人ひとりの所得税額を計算します。具体的な手順は以下のとおり。

1:1年間に支払った給与等の総額を出す

2:給与所得控除額を1から差し引く(計算式は国税庁HPにて要確認)

3:その他の控除額を差し引く(従業員に提出してもらった書類を元に)

4:在宅借入金等特別控除の適用者については、その分を差し引く

5:残った金額に102.1%をかける(復興特別所得税)

6:算出された金額と源泉徴収票した額を照らし合わせ、精算する

これで年末調整の計算は終了です。

③年末調整担当者:法定調書合計表等の作成と提出

対象者全員の計算が終わったら、まず「法定調書合計表」「支払調書」「源泉徴収票」という書類を作り、税務署へ提出します。あわせて、「給与支払報告書」を作成し、従業員の居住する自治体へ提出。

これらは企業の支払いを関係各所が把握するためのもの。申告漏れや脱税のチェックに使われます。

最後に、源泉徴収税を納付して年末調整は完了です。

年末調整をしないとどうなる?

年末調整は事業主に義務付けられており、違反すると税務署からの指導が入ります。違反内容が悪質な場合、10年以下の懲役または200万円以下の罰金が課せられます。

しかし、事業主が年末調整の必要性を理解しておらず、実施してくれないこともあります。そのときには、以下のいずれかの対処をとりましょう。

①事業主を説得してやってもらう
②自分が業務を引き受ける
③税務署に相談する
④(1月31日を過ぎた場合)各自で確定申告する

面倒ですが、余計な税金を払わなくて済むよう社内に働きかけるのが大切です。

まとめ

今回は年末調整について、必要性や対象者、手順、控除などを解説してきました。

年末調整に関わる法律は毎年のように改正されており、本記事の内容も変更される可能性があります。担当者は仕様を毎年チェックし、制度に沿った形で行いましょう。

もし年末調整にリソースを割けないのであれば、税理士に代行してもらう手があります。関連記事にて解説していますので、ぜひお読みください。

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