生産性向上とは?意味や目的、施策例、取り組み成功事例などを解説

利益を伸ばし将来性を高めるために、企業にとって必須なのが「生産性向上」。費やしたリソースに対する成果量を伸ばすことです。

残念ながら、日本の生産性は主要7か国のうち最下位です。少子化による将来の人口減を考えると、少ない労働力でも大きな成果を出すには現状の改善が不可欠です。

では、どのように対応すればよいのでしょうか。

本記事では生産性向上について、意味や目的、施策例、取り組み成功事例などを解説します。

生産性向上とは?

生産性向上について考える前に、そもそも生産性とは何かを確認しておきましょう。

生産性とは「投入したリソース(インプット)に対して、どのくらいの成果(アウトプット)を生み出せたか」という効率の程度のこと。生産性は下記の式で定義できます。

「生産性=アウトプット÷インプット」

  • 生み出された成果:売上額、利益、生産数量など
  • 投入した資源:社員数、人件費、労働時間など

インプットに対するアウトプットの量を増やす、あるいはアウトプットに対するインプットの量を減らすことができれば、生産性が向上した状態にあるといえます。

生産性向上と業務効率化の違い

生産性向上と業務効率化は混同されがちですが、両者は異なる概念です。

業務効率化とは、業務のプロセスから「ムリ・ムダ・ムラ」を省き、限られた生産資源を効率的に活用することです。例として、マニュアルの整備やITツール導入などがあります。

業務効率化によりムダなコストを削減できれば、インプットが小さくなりアウトプットは大きくなります。よって業務効率化は、生産性向上を目指す一手段といえるのです。

両者の意味や定義を混同してしまうと、手段が目的化したり、実際に行う施策がちぐはぐになってしまったりするので気をつけましょう。

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生産性向上を目指す必要性

生産性向上は、現代の日本企業が抱える課題をクリアする上で非常に重要な鍵になります。具体的なデータとともに、その必要性を詳しく見てみましょう。

日本の生産性は先進国で最下位

公益財団法人日本生産性本部によれば、日本の時間当たりの労働生産性は、主要7か国中の最下位です(*)。この状況が長年続いており、国際競争力向上への足かせとなっています。

長時間のムダな会議や煩雑な業務等が、その原因の最たるもの。企業だけでなく、国を挙げて取り組むべき課題といえます。

*:公益財団法人日本生産性本部/労働生産性の国際比較

将来の人口減に対処しなければならない

少子高齢化により日本の人口は減少に転じていますが、それは労働人口の減少でもあります。

これによる労働力不足はすでに表面化した課題となっており、帝国データバンクの調査によると「正社員が不足している」と回答した企業は全体で49.5%となっています(*)。

少ない労働力で競争を生き抜くには、少ないインプットで多くのアウトプットを生み出すこと、つまり生産性向上が不可欠です。

*:帝国データバンク/人手不足に対する企業の動向調査

生産性向上の施策例

では、具体的にどうやって生産性を向上させればよいのか。以下に施策例を紹介します。

リソース配分を再考する

1つめは、人員や時間といったリソースの配分を再考することです。例えば、

  • 従業員ごとのスキルや資格とマッチした、適材適所への配置を行う
  • 力を入れたい業務へ多くの人員を配置する

これらのためには、今ある業務の現状を詳細に把握しなければなりません。

  • 誰がどんな形で関わっているのか
  • 誰が何時間関わっているのか
  • どこにどれくらい費用がかかっているのか
  • 目標はどのくらい達成できているのか

などの情報を洗い出し、より良い配分を探っていきましょう。

業務を効率化する

2つめは業務効率化。既存の業務に「ムリ・ムダ・ムラ」があれば、それを改善することを指します。

特にムダについては、発見しやすく対処もしやすいでしょう。不必要な作業や会議・書類はどの業務にもありがちです。削った分のリソースを有効活用できるようになるので、ぜひ検討してみてください。

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アウトソーシングを利用する

3つめはアウトソーシング。とりわけ、経理・総務・秘書・IT運用のようなバックオフィス業務で、近年多くの企業が利用しています。採用コストを抑えられる、プロの手により業務品質が向上するといったメリットが期待できます。

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ITツールを導入する

4つめはITツールの導入です。

グループウェア・会計システム・労務管理システム・MAなど、種類は実にさまざまであり、会社によって導入すべきものは異なります。まずは前述のように、今ある業務の情報を整理した上で、効率化やコスト削減につながるものはないか検討しましょう。

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従業員のワークライフバランスを改善する

昨今の働き方改革にも見られるように、ワークライフバランスの見直しも生産性向上に重要です。

厚生労働省は企業の売上高について、ワークライフバランスに関する表彰・認定経験の有無で比較を行いました。その結果、表彰・認定経験のある企業のうち「売上高が増加」した企業は52.6%で、表彰等のない企業の49.3%よりも上回っていたのです。

離職率も同様に比較すると、表彰等のある企業のほうが、全体的に低い数値となりました。

以上から、ワークライフバランスへの取り組みを推進し、労働時間を短くするほうが労働生産性が高まると、同省は結論付けています。

*:厚生労働省/平成29年版 労働経済の分析 -イノベーションの促進とワーク・ライフ・バランスの実現に向けた課題- 第II部 第2章 第2節

自治体の補助金を有効活用しよう

IT導入や子育て環境の整備といった目的に応じて、企業の生産性向上をサポートする多様な補助金制度を、各自治体や厚生労働省が創設しています。これもぜひ活用したいところ。

なお、受給するには一定の要件や計画書の提出等が求められます。詳細は各自治体等の担当部局の情報をご確認ください。

各都道府県の中小企業担当課はこちら→中小企業庁 都道府県中小企業担当課
独立行政法人 中小企業基盤整備機構(中小機構)の情報はこちら→中小企業生産性革命推進事業

生産性向上を成功させるポイント

生産性向上を成功させるポイントは、

  • 生産性向上の目的を明確にする
  • 目的達成のために改善すべき課題を整理する
  • 課題解決につながる施策を見極める
  • 施策の結果を数値で評価する

の4つです。これらを押さえることが、生産性向上の可否につながります。

生産性向上の目的を明確にする

まずは、生産性向上の目的を明確にしましょう。何のためにするのかがハッキリしていないと、何をどうやるか判断しようがないからです。

例えば、新規顧客獲得とリピーター獲得、それぞれ異なる目的ですから打つべき施策も変わってきますよね。

また、進む方向が分からない中では、従業員同士の連携がとれません。結果、段取りが悪い取り組みになって失敗に終わるのはよくあること。

最終的な着地点である目的は最重要ポイントですので、生産性向上を目指すなら真っ先に設定し、社内で共有してください。

目的達成のために改善すべき課題を整理する

次は、目的達成のための課題整理です。これにより「誰が」「何を」すべきかがハッキリします。

その課題が個人の業務管理や個々のスキルによるものなのか、組織内の業務プロセスや設備・人材配置によるものなのか、確認することが肝要です。

課題解決につながる施策を見極める

次に、整理した課題の解決につながる施策を見極めましょう。例えば、組織の業務プロセスの課題であるならば、業務プロセスに直接アプローチする施策を打つ必要があります。

施策の結果を数値で評価する

施策の結果は数値で評価し、パフォーマンスを客観的に振り返りましょう。感覚による主観的かつ定性的な評価だと、次回以降の取り組みも感覚的なものになってしまいますし、周りの同意も得られません。

また、数値管理はゴールだけでなく、ゴールまでの過程においても用いましょう。いわゆるKPI(重要業績評価指標)という概念です。これにより、状況確認と改善を要所要所で細かく進めていけるようになります。

まとめ

今回は生産性向上について、その概要や成功ポイント、具体的な施策などを紹介しました。

生産性向上へのアプローチは、今回ご紹介した企業全体で取り組むものはもちろん、個人レベルで実施可能なものまで、大小存在します。どのような施策にしても、本記事で述べた4つの成功ポイントを押さえられるかが重要です。

まずは目的の明確化からスタートし、手軽に導入できる施策を試してみてください。